あの店に彼がいるそうです

片桐瑠衣

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随分未熟だったみたい

随分未熟だったみたい03

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 家の扉を肩で押し開き、瑞希を抱えたままベッドに倒れる。
 酷い脱力感だ。
 リビングさえ長く感じた。
 しばらくシーツに身を委ね、熱から逃げるように深呼吸を繰り返す。
 痛みは大分引いた。
 次に来たのがこの熱だ。
 体の中心から沸き上がる終わりのない高熱が思考すら溶かす。
 このまま眠れるだろうか。
 類沢は仰向けになった。
 その胸に細い手がすがる。
「瑞希?」
 意識が戻ったようだ。
 顔を赤らめ、瑞希は類沢にしがみつく。
「類、沢さん……」
 艶のある声。
 蕩けた眼。
 はだけた服。
 胸元の手は段々首に絡む。
 密着した体から互いの熱が伝わる。
「俺……さっきから変で……」
「深呼吸して、背中擦るから」
 だが、類沢も気づいていた。
 向かい合った二人の目線が重なる。
 背中に伸ばした手で、瑞希を強く抱き締めた。
「……悪趣味な薬だよね」
 制御出来ない昂り。
 瑞希の息が当たるだけで脳が痺れる。
 何も纏っていない脚がすりよる。
 その感覚に神経が集中する。
 足の指が誘うようになぞり、腰を妖しく揺らす。
 口を開こうとした瞬間、顔を上げた瑞希と唇が重なった。
 何かが堰を切ったように、二人は舌を突きだして絡ませた。
 クチュ。
 水音が鼓膜を揺らし、益々熱くなる。
 相手の唾液を吸い上げ、唇を食む。
 意識の外で、指がシャツのボタンを外していく。
 チュク。
「はッッんん……あ、ん」
 瑞希が誘い、類沢が上になる。
「ひあッ」
 突起を摘ままれた瑞希が高く叫ぶ。
 自分の声に驚き、唇を噛み締めた。
 その仕草を見てまたキスをする。
「んん……っ、んむ」
 髪をほどかれ、黒髪がシーツに流れる。
 首筋に吸い付くと、瑞希は類沢に抱きついて快感に溺れた。
「あぁん、ふッッああ」
 赤い痕が刻まれていく。
 舐めあげるとベッドが軋むほど仰け反った。
 グチュ。
「やッッあん」
「濡れすぎじゃない、瑞希」
 下着越しに握る手が滑る。
 太ももにまで液が伝っていた。
「もっと……触っ、て?」
 類沢は額に手を当てて、口の端を持ち上げた。
「止まんないかも……」
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