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殺す勇気もないくせに
殺す勇気もないくせに11
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「ふ……なんか、ホッとしたっつーか。馬鹿ですね、俺」
「再起不能にしたかった?」
「ええ」
「僕を潰したかった?」
「はい」
クスリと笑い飛ばす。
「殺す勇気もない癖に」
聖は声が出なくなった。
瑞希の腰に腕を回し、バランスをとって立たせる。
まだ意識は戻らない、か。
「それが、大事ですか……命より」
「聖も昔は、前の名前の時はそうだったよ」
「やめてくださいよ」
振り払うように目を閉じる。
「昔なんて思い出したくもない」
羽生三兄弟が聖を囲む。
手を伸ばそうとした千夏が寸でのところで伏せた。
間隙おかずに頭上を凶器が舞った。
「俺に触んな」
類沢の前では見せた弱さが消える。
彼も地位ではシエラのホストに劣らないのだ。
両手に構えた釘。
「聖の相手は気をつけなよ」
類沢の忠告にみな道を開ける。
記憶が蘇った連中もいたのだろう。
聖を見て、後ろめたそうに下がる者もいた。
類沢は彼らと、一人で出ていく聖を眺めた。
かつての仲間を。
「いいんですか」
我円がそばに来る。
「まあね」
「雅氏らしくないですね」
「仲間には弱くてね。全く嫌になる」
片眉を上げた我円を置いて、出口に足を引き摺る。
何人も駆け寄って来たが、類沢は手を借りなかった。
瑞希を抱えたまま。
「ああ……頭が痛むね」
その何気ない一言にどれほどの思いが混ざりあっているのか、知るものは多分もういない。
篠田さえも。
「帰って休もうか……瑞希」
「再起不能にしたかった?」
「ええ」
「僕を潰したかった?」
「はい」
クスリと笑い飛ばす。
「殺す勇気もない癖に」
聖は声が出なくなった。
瑞希の腰に腕を回し、バランスをとって立たせる。
まだ意識は戻らない、か。
「それが、大事ですか……命より」
「聖も昔は、前の名前の時はそうだったよ」
「やめてくださいよ」
振り払うように目を閉じる。
「昔なんて思い出したくもない」
羽生三兄弟が聖を囲む。
手を伸ばそうとした千夏が寸でのところで伏せた。
間隙おかずに頭上を凶器が舞った。
「俺に触んな」
類沢の前では見せた弱さが消える。
彼も地位ではシエラのホストに劣らないのだ。
両手に構えた釘。
「聖の相手は気をつけなよ」
類沢の忠告にみな道を開ける。
記憶が蘇った連中もいたのだろう。
聖を見て、後ろめたそうに下がる者もいた。
類沢は彼らと、一人で出ていく聖を眺めた。
かつての仲間を。
「いいんですか」
我円がそばに来る。
「まあね」
「雅氏らしくないですね」
「仲間には弱くてね。全く嫌になる」
片眉を上げた我円を置いて、出口に足を引き摺る。
何人も駆け寄って来たが、類沢は手を借りなかった。
瑞希を抱えたまま。
「ああ……頭が痛むね」
その何気ない一言にどれほどの思いが混ざりあっているのか、知るものは多分もういない。
篠田さえも。
「帰って休もうか……瑞希」
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