73 / 137
殺す勇気もないくせに
殺す勇気もないくせに10
しおりを挟む
余りに無防備な笑みに全員が眼を疑ってしまう。
類沢は慎重に立ち上がった。
胸を張って、自信げに。
「なん……で」
玲が呆然と呟いた。
薬を用意した彼だからこそ、その効果の程は思い知っているから。
立てるはずがないから。
類沢は腕で汗を拭った。
「間に合ったよ。春哉」
我円が手を上げる。
「合図ですよ、皆さん」
それを聞いたホスト達が指を鳴らす。
「行くぞ、吟じい」
「腕が鳴るのう」
「それ死語だぜ」
ガアンっという衝撃と共に倉庫の扉が三つ共に外れた。
蹴りあげた足を身に引き付ける如月。
「さっすが紫苑~。カッコいい」
「黙って片付けるぞ、空斗」
沢山の足音が響く。
「みぃずき拐った悪人はどいつ?」
ナイフを舐めた紅乃木に男達が青ざめる。
「なんだ、屑ばっかじゃん」
「紅乃木さんに続けっ」
聖は辺りを見渡してよろめいた。
「くく……ははははっ」
「雅……さん?」
篠田が近づき、瑞希を担ぐ。
「おっ、おい」
声を上げた玲に刺すような回し蹴りが飛んだ。
風を切った踵が今度は玲の背中に勢いよく振り下ろされる。
「がっは」
革靴が地面に着く。
「これは申し訳ありません。気絶させて差し上げますつもりでしたのに」
「ややこしぃんだよ、伴……親父に似てきやがって」
同期の二人が向かい合う。
その傍らで、聖は類沢の前に立ち尽くしていた。
「なんで、平気なんですか……玲は容赦なかったはず」
「量も濃度も関係ない。これはね」
そう言って銀紙を見せる。
「抗体?」
「ズルしてごめんね」
そうはにかんだ類沢の頭を篠田が叩く。
「ヒヤヒヤさせんな」
「大丈夫って言ったでしょ。まあこれ即効性が弱いんだよ。キツかったのは本当」
叩いた手でくしゃくしゃに頭を撫でる。
「お前は凄いよ」
篠田はホスト達の指揮に行った。
去り際に瑞希を託して。
「聖」
最早一人になった青年。
「惜しかったね」
「あ、ああ」
ワックスで形どられた髪を乱す。
掻き毟って。
類沢は慎重に立ち上がった。
胸を張って、自信げに。
「なん……で」
玲が呆然と呟いた。
薬を用意した彼だからこそ、その効果の程は思い知っているから。
立てるはずがないから。
類沢は腕で汗を拭った。
「間に合ったよ。春哉」
我円が手を上げる。
「合図ですよ、皆さん」
それを聞いたホスト達が指を鳴らす。
「行くぞ、吟じい」
「腕が鳴るのう」
「それ死語だぜ」
ガアンっという衝撃と共に倉庫の扉が三つ共に外れた。
蹴りあげた足を身に引き付ける如月。
「さっすが紫苑~。カッコいい」
「黙って片付けるぞ、空斗」
沢山の足音が響く。
「みぃずき拐った悪人はどいつ?」
ナイフを舐めた紅乃木に男達が青ざめる。
「なんだ、屑ばっかじゃん」
「紅乃木さんに続けっ」
聖は辺りを見渡してよろめいた。
「くく……ははははっ」
「雅……さん?」
篠田が近づき、瑞希を担ぐ。
「おっ、おい」
声を上げた玲に刺すような回し蹴りが飛んだ。
風を切った踵が今度は玲の背中に勢いよく振り下ろされる。
「がっは」
革靴が地面に着く。
「これは申し訳ありません。気絶させて差し上げますつもりでしたのに」
「ややこしぃんだよ、伴……親父に似てきやがって」
同期の二人が向かい合う。
その傍らで、聖は類沢の前に立ち尽くしていた。
「なんで、平気なんですか……玲は容赦なかったはず」
「量も濃度も関係ない。これはね」
そう言って銀紙を見せる。
「抗体?」
「ズルしてごめんね」
そうはにかんだ類沢の頭を篠田が叩く。
「ヒヤヒヤさせんな」
「大丈夫って言ったでしょ。まあこれ即効性が弱いんだよ。キツかったのは本当」
叩いた手でくしゃくしゃに頭を撫でる。
「お前は凄いよ」
篠田はホスト達の指揮に行った。
去り際に瑞希を託して。
「聖」
最早一人になった青年。
「惜しかったね」
「あ、ああ」
ワックスで形どられた髪を乱す。
掻き毟って。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説


お客様と商品
あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる