あの店に彼がいるそうです

片桐瑠衣

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殺す勇気もないくせに

殺す勇気もないくせに07

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 すぐにシエラのメンバーが倉庫を囲む。
 中に入るのは二人。
 六人は表に待機。
 合図で参入する予定だ。
「刺激はするな。出てきた奴等は全部締め上げろ。交渉は中で済ませる」
「りょーかい」
 雛谷以外は無言で頷いた。

 ギギ、と嫌な音を立てて扉を開く。
 中は薄暗い。
 割れた窓から日が差す程度。
 広い倉庫の真ん中に、二人男が立っていた。
 あと九人は扉を塞ぐ。
 それを一瞥して、類沢と篠田は進んだ。
「何年ぶりだ?」
 篠田が影に尋ねる。
 青年は低く笑った。
「さあね」
「二年だよ」
 類沢が鋭く加えた。
「聖」
 反応があった。
「僕は前の名前の方が似合ってると思うけどね」
「そうですか」
 カツン。
 カツン。
 鉄の床が鳴る。
 篠田と歩調は同じだった。
 一つの足音のように。
 響く。
 自然と二メートル手前で止まった。
「瑞希は?」
 聖が首を傾げる。
 隣の男も同じ素振りだ。
「ああ……こちらは玲です」
 玲と呼ばれた男はだるそうに頭を下げた。
 さっきから目障りなのは彼が持つガラスケース。
 注射器が入っている。
 何に使うのか考えるのも吐き気がする。
「表に八人集揃ってるらしいですね。新入り一人に大人げなく本気じゃないですか雅さん」
 聖が爽やかに言う。
 どす黒い目をして。
「大事な仲間だからね」
「仲間、ねえ」
 篠田がピクリと動いた。
 手で大丈夫と示す。
「返してくれないかな」
「玲、連れてきて」
 聖が呟くと、男は背後の扉を乱暴に開け、重たい荷物を引きずるように出てきた。
 瑞希。
 目隠しをされ、シャツと下着だけの姿。
 それ以上に目につくのが、呼吸困難に近い過呼吸。
 手足は震え、頭を絶えず振って。
「がッッ……く、うぅ……ふッ」
 篠田が拳を握る。
「そんな怖い顔しないでくださいよ」
 瑞希のそばに行った聖が、玲の注射器を手に取り構える。
「これ、二回打つと拒否反応を起こして昏睡しちゃうらしいです。そうだな……下半身不随つきとか」
「ナニが望み?」
 吐き捨てるような質問に聖が止まる。
 髪を掻き上げながら目を細めた。
「代わりになってくださいよ」
 篠田が息を呑む。
「雅さん?」
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