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殺す勇気もないくせに
殺す勇気もないくせに05
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寒い。
上着を取り返したかったけど、多分イヤホンもマイクも壊れたかもな。
冷たい床に膝をついて項垂れる。
「よし、こんなもんか」
そばでカチャカチャとなにか作業をしていた玲がやってくる。
見えないけど。
「強めで良いって聞いたからな。いつもの二倍濃度だけど……死なないだろ」
「は?」
縛られた腕を持ち上げられ、鋭い痛みが走った。
針?
細い針が勢いよく抜かれる。
ジクジクと残痛が蠢く。
「あっ……ぐ」
耐えきれずに倒れる。
「痛いのは初めだけだ」
玲が道具を仕舞いながら言う。
「セックスと同じだろ?」
「……ぅああッッ、は」
「痛そうだな」
愉快げに呟き、俺をマットに運ぶ。
地面がどこかもわからない。
心臓が叫んで、呼応するように息も荒くなる。
「半裸でもがいて、卑猥すぎだろ」
誰のせいだよ。
声がどこからしたのかもわからない。
「は……ぁくッッ」
カチッ。
ライターの音の後に煙の臭いがする。
煙草か。
息が苦しい中では微かな煙にすら咳き込んでしまう。
「ゲホッ、はッッゴホ」
「あ。煙い? ごめんな」
辞める気配もない軽い口調。
初めて知った。
煙草にも種類があるんだ。
類沢さんのとなんて違う。
吸うほど頭痛が増す。
わざとなんだろう。
打たれた場所が麻痺してきた。
なんだ。
なんの薬だ。
思い出したように恐怖がざわざわと足先からかけ上がってくる。
「シエラっていうと歌舞伎町No.1って肩書きもあって重く聞こえるけどよ、こうやって一人だけ引っ張って来たらなんてことないんだよな」
玲の言葉が何重にも重なって聞こえる。
「あの類沢さんだって注射一本で壊れちゃうんじゃねーかな。もうすぐ見られるけど」
くくく、と笑い声が反響する。
勝手に首が震える。
見えない視界がゆらゆらと。
あれ……俺、死ぬ?
手に爪を立てても感覚がない。
嘘だろ。
「話聞いてるか?」
意識が遠退く。
ヤバい。
あんなに寒かったのに、熱くなってきた。
「好みじゃないからさ、あとは他の奴等に引き渡すが、死ぬなよ?」
ガタン。
「玲」
「今呼ぼうと思ってたんだが」
「予想より早く類沢が来たみたいだ」
「あ?」
類沢、さんが?
「正確には……類沢達が」
まさか。
みんなが。
上着を取り返したかったけど、多分イヤホンもマイクも壊れたかもな。
冷たい床に膝をついて項垂れる。
「よし、こんなもんか」
そばでカチャカチャとなにか作業をしていた玲がやってくる。
見えないけど。
「強めで良いって聞いたからな。いつもの二倍濃度だけど……死なないだろ」
「は?」
縛られた腕を持ち上げられ、鋭い痛みが走った。
針?
細い針が勢いよく抜かれる。
ジクジクと残痛が蠢く。
「あっ……ぐ」
耐えきれずに倒れる。
「痛いのは初めだけだ」
玲が道具を仕舞いながら言う。
「セックスと同じだろ?」
「……ぅああッッ、は」
「痛そうだな」
愉快げに呟き、俺をマットに運ぶ。
地面がどこかもわからない。
心臓が叫んで、呼応するように息も荒くなる。
「半裸でもがいて、卑猥すぎだろ」
誰のせいだよ。
声がどこからしたのかもわからない。
「は……ぁくッッ」
カチッ。
ライターの音の後に煙の臭いがする。
煙草か。
息が苦しい中では微かな煙にすら咳き込んでしまう。
「ゲホッ、はッッゴホ」
「あ。煙い? ごめんな」
辞める気配もない軽い口調。
初めて知った。
煙草にも種類があるんだ。
類沢さんのとなんて違う。
吸うほど頭痛が増す。
わざとなんだろう。
打たれた場所が麻痺してきた。
なんだ。
なんの薬だ。
思い出したように恐怖がざわざわと足先からかけ上がってくる。
「シエラっていうと歌舞伎町No.1って肩書きもあって重く聞こえるけどよ、こうやって一人だけ引っ張って来たらなんてことないんだよな」
玲の言葉が何重にも重なって聞こえる。
「あの類沢さんだって注射一本で壊れちゃうんじゃねーかな。もうすぐ見られるけど」
くくく、と笑い声が反響する。
勝手に首が震える。
見えない視界がゆらゆらと。
あれ……俺、死ぬ?
手に爪を立てても感覚がない。
嘘だろ。
「話聞いてるか?」
意識が遠退く。
ヤバい。
あんなに寒かったのに、熱くなってきた。
「好みじゃないからさ、あとは他の奴等に引き渡すが、死ぬなよ?」
ガタン。
「玲」
「今呼ぼうと思ってたんだが」
「予想より早く類沢が来たみたいだ」
「あ?」
類沢、さんが?
「正確には……類沢達が」
まさか。
みんなが。
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