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殺す勇気もないくせに
殺す勇気もないくせに01
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冷たい床に投げられる。
少し水溜まりに脚が浸かった。
急いで引き寄せる。
目隠しをされているのでわからないが、多分廃倉庫だろう。
コンクリートに機械の臭い。
トタン屋根が風に揺れる音。
縛られた手首に血が通わず、そろそろ感覚が消えつつある。
「連れてきたか」
秋倉の声じゃない。
ここに来るまで、ずっと黒幕を想像していた。
類沢に恨みを持つホスト。
秋倉の連携組織。
もしくはただの誘拐犯。
いや、それはないか。
若い新入りか、と尋ねてきたのだから。
バックに類沢がいるのを知っていての犯行だ。
犯行。
まだ確定はしないけど。
ガシッと髪を掴まれ、顔を持ち上げられた。
顎を高く上げて、首がひきつる。
そんなことはお構いなしに、手の主はグイグイ引く。
「胸に傷痕……喧嘩慣れはしてないな」
肩を揉むように強く絞られる。
「筋肉もない。容姿だけで入ったBクラスか。雅さんもなんでこんな奴を入れたんだろ」
低く澄んだ声。
若い。
ひょっとしたら同い年かもな。
アカを思い出す。
ホストは年齢なんて関係ない。
「名前は?」
俺は一瞬躊躇った。
しかし、横から腹を蹴られ衝撃に抵抗を忘れた。
髪は掴まれたままなので、頭皮が千切れるような痛みが貫く。
ズキズキと長く残る。
「……瑞希」
「シエラは何年目だ」
「二週間?」
ガン。
手を離されたせいで、床に頭を強打した。
もう少し人間扱い出来ないのか。
世界が反転している。
気を失いそうだ。
「信じらんねーな」
他の男達はどこに行ったのだろう。
気配はこの男しかない。
二人だけ?
一体目的はなんだ。
「なんで雅さんに拾われた?」
「……借金返さなきゃ、で」
「借金?」
あれ。
なんだろう。
どこかで聞いた気がする。
「いくらだ」
「か……んけい、ないだろ」
沈黙が降りる。
怖いくらい寒気がする。
「あー。関係ないかもな。だって俺もうシエラのホストじゃないし」
俯いたまま、眉にシワを寄せる。
てことは、前は……
「雅さんて弱点ないだろ? 俺がいた時からずっとそうだった。なのに最近若い新入りにうつつ抜かしてるって言うらしいじゃん」
「だったら……なに?」
男がクスっと笑う。
「お前、自分が雅さんの弱点だって自覚してる?」
少し水溜まりに脚が浸かった。
急いで引き寄せる。
目隠しをされているのでわからないが、多分廃倉庫だろう。
コンクリートに機械の臭い。
トタン屋根が風に揺れる音。
縛られた手首に血が通わず、そろそろ感覚が消えつつある。
「連れてきたか」
秋倉の声じゃない。
ここに来るまで、ずっと黒幕を想像していた。
類沢に恨みを持つホスト。
秋倉の連携組織。
もしくはただの誘拐犯。
いや、それはないか。
若い新入りか、と尋ねてきたのだから。
バックに類沢がいるのを知っていての犯行だ。
犯行。
まだ確定はしないけど。
ガシッと髪を掴まれ、顔を持ち上げられた。
顎を高く上げて、首がひきつる。
そんなことはお構いなしに、手の主はグイグイ引く。
「胸に傷痕……喧嘩慣れはしてないな」
肩を揉むように強く絞られる。
「筋肉もない。容姿だけで入ったBクラスか。雅さんもなんでこんな奴を入れたんだろ」
低く澄んだ声。
若い。
ひょっとしたら同い年かもな。
アカを思い出す。
ホストは年齢なんて関係ない。
「名前は?」
俺は一瞬躊躇った。
しかし、横から腹を蹴られ衝撃に抵抗を忘れた。
髪は掴まれたままなので、頭皮が千切れるような痛みが貫く。
ズキズキと長く残る。
「……瑞希」
「シエラは何年目だ」
「二週間?」
ガン。
手を離されたせいで、床に頭を強打した。
もう少し人間扱い出来ないのか。
世界が反転している。
気を失いそうだ。
「信じらんねーな」
他の男達はどこに行ったのだろう。
気配はこの男しかない。
二人だけ?
一体目的はなんだ。
「なんで雅さんに拾われた?」
「……借金返さなきゃ、で」
「借金?」
あれ。
なんだろう。
どこかで聞いた気がする。
「いくらだ」
「か……んけい、ないだろ」
沈黙が降りる。
怖いくらい寒気がする。
「あー。関係ないかもな。だって俺もうシエラのホストじゃないし」
俯いたまま、眉にシワを寄せる。
てことは、前は……
「雅さんて弱点ないだろ? 俺がいた時からずっとそうだった。なのに最近若い新入りにうつつ抜かしてるって言うらしいじゃん」
「だったら……なに?」
男がクスっと笑う。
「お前、自分が雅さんの弱点だって自覚してる?」
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