あの店に彼がいるそうです

片桐瑠衣

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超絶マッハでヤバい状況です

超絶マッハでヤバい状況です23

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 最初異変に気づいたのは、類沢ではなく紅乃木だった。
「最近の銃は重みが違うのう」
「口径もな。爺さんにゃ扱いきれねーんじゃねえの?」
「遊びで向けるのよしてくれません?」
 吟や空牙たちが奪った銃を眺めるのを横目に、瑞希の不在を不審がる。
「みぃずき、遅くない?」
「え? あぁ、確かに」
 千夏も玄関に目を遣る。
 それを見咎めた類沢が席を立った。
「瑞希はどうしたの」
「大分前に酔いを醒ますって外に出たんですけど……」
 騒ぎを感じ取った雛谷達も集まる。
 すぐに全員が状況を理解した。
「類沢さんっ、もしかしたら……あれ瑞希さんの声だったかも」
 そんな中でイヤホンを握り締めた三嗣が手を上げた。
 この人数での発言は初だった。
 NO.に入った者しか許されないが、今は店じゃない。
 勇気を振り絞って、三嗣は自分が聞いた言葉を復唱した。

 バタバタ。
 小さな扉からスーツの男が次から次へと飛び出して来る様は、端から見たら異常だろう。
 だが、構う者はいなかった。
 シエラのホスト。
 スフィンクスのオーナーと息子。
 シャドウの二人。
 雛谷と如月も。
 全員が路上に出て周囲を探した。
「類沢さん!」
 一夜が叫ぶ。
 その手には、全員に配られたあのイヤホンがあった。
「攫われたってことか」
 最後に店から出てきた篠田が冷たい声で言い放つ。
「……秋倉?」
「いや、類沢。今回呼び出して応答がなかったのはどこだ」
 張り詰めた口調に空気も重くなる。
 類沢はイヤホンを一瞥して記憶を探った。
「来るはずだったのは……ガーデンの連中だ」
「ガーデン? なんであんな奴等」
「よせ、空牙」
「あんな奴等?」
 類沢が空牙に迫る。
 その背後で篠田が溜め息を吐いた。
「噂は本当だったな」
「ナニ?」
「ガーデンは最近、ガヴィアと組み始めたって噂だ」
 それが何を意味する。
 類沢は口を開く前に思いだった。
「名義屋が出入りしていた……あのガヴィアと?」
「そういう訳だ。今回秋倉に口を割らせる時間が無かったが、秋倉自身は名義屋じゃない。裏幕はそっちだってことだ」
 しかし疑問だらけだ。
「なんで、みぃずきを?」
 包帯を押さえながら紅乃木が困惑した声で言う。
「おやおやおや……あんなに派手に噂が流れているではありませんか?」
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