あの店に彼がいるそうです

片桐瑠衣

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超絶マッハでヤバい状況です

超絶マッハでヤバい状況です21

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 インテイスから離れたバー。
 吟が経営するそこは、ホストが占めていた。
「ったく。連絡が急すぎんだよ類沢さんよー」
「悪かった」
 一番奥のテーブル席に、あの八人が座っている。
 俺はそばの小さな丸テーブルから会話を聞いていた。
 羽生三兄弟と一緒に。
「雅氏は手はずを整えていらっしゃった。責める理由などないはずではありませんか、空牙?」
「我円の兄さんに言われたら反論出来ねーよ」
 そんな父を伴は誇らしげに見つめている。
「しかし、篠田さんの剣幕は流石でしたね……」
 紫苑の言葉に軽く首を振る。
「現役に比べたら全然だろう。雅に今は主導権は譲ったしな」
「篠田。そう言う割には嘘を吐いていたよね?」
 全員が身を乗り出す。
 雛谷だけは、グラスを傾けた。
 沈んだ瞳で。
「秋倉の件か? まぁ……背後にあいつがいる確証はなかった。無為にお前を動揺させたくなかったしな。事前に知ったところで同じだったんじゃないか」
「そうかなぁ」
 今度は雛谷に視線が注がれる。
 本人はワインを見つめて、うっすらと笑った。
「類沢さんなら、秋倉おじさんを再起不能にしてくれたと思うけどー?」
「おやおやおや。雛谷氏も秋倉に恨みでもあるのですか」
 類沢は静かに雛谷と目を合わせた。
 俺の知らない、何かが交わされた。
 それからすぐに二人とも視線を逸らす。
 まるで、何かの儀式。
 一瞬の儀式。
「別にー」
「何もないよ」
「それでいいんだ、若いの」
 吟がカッカッカと笑い、蔵から追加の瓶を運んで来た。
 なんだろう。
 彼らを取り巻く空気は。
 踏み込みはせず。
 隔絶もせず。

 絶妙な関係。

「みぃずき、飲んでる?」
「アカ!」
 包帯を巻いたアカが平気そうに席に腰掛ける。
「大丈夫なのか」
 千夏の問いに曖昧に頷く。
「あんな軽い一撃、ヌルすぎて」
 一夜と三嗣は居づらそうだ。
 あくまでアカはNO.2。
 そう気軽く話せない。
 これだ。
 俺ははっとした。
 後ろを確認する。
 あの八人にはこれがない。
 面倒な上下関係などない。
 多分、あるとすれば篠田の位置。
 それから吟への尊敬。
 そのくらいだ。
「格好いい……」
「誰が?」
 一夜が首を傾げる。
「ん。みんなかな」
 今夜、俺はまた違う一面を知った。
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