あの店に彼がいるそうです

片桐瑠衣

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超絶マッハでヤバい状況です

超絶マッハでヤバい状況です20

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 胸元から権利書を取り出す。
 今燃えている店と、支部のもの。
 秋倉も気づいて、首を前に突き出した。
 なぜ、それがある。
 そう問うように。
 類沢は無造作に指をかける。
 わかりやすく秋倉が焦った。
「秋倉さん、これが貴方の全てです。破り捨てることは簡単。ただね、僕は貴方を潰しに来たんじゃない。交渉に来たんです」
「交渉…」
「さっきの条件覚えてます?」
 秋倉が顎を引く。
「でも状況が変わった。貴方はうちの大事な仲間を傷つけた。シエラの客は返して貰いましたし……貴方には歌舞伎町から出て行って頂きましょうか」
 にこりと笑った類沢に、秋倉は初めて寒気を感じた。
 知り尽くしたと思い込んでいた息子に突然殴られたようなショックが駆け巡る。
 こいつは、誰だ。
 そう思ってしまうほど。
「戻ってこようとか居残ろうなど無駄なお話ですことですよ。スフィンクスは最大規模の通信網を誇りとしていますので、無様な貴公の行動は全て把握しておりますから」
 我円が淡々と告げる。
「言っとくが、シャドウのメンバーは血の気が荒ぇぞ。そのまま歩いてみろ。病院に住ませてやるよ、おっさん」
「空牙の言うとおりじゃな。この道四十九年の人脈で、この街で息を吸うことすら許さんようにしてやろう」
 吟は死神代行の如く背広を正して微笑んだ。
「無理だよねぇ、この八人敵に回して歌舞伎町で生きるなんてさー。いくら秋倉おじさんが金持ちでも意味ないし。ついでに記憶を消して欲しいんだけど。名前を覚えられてるのも屈辱」
 雛谷が一瞬類沢を見たが、彼は答えなかった。
「さあ、どうします?」
 秋倉の前に総勢五十人が立ちはだかる。
 彼の部下達はなすすべもなく、壁にもたれていた。
「く……っ、ホスト如きが」
「それはホスト如きに勝ってから言って頂きたい」
 伴が腕を組んで言った。
 八人の中でも最年少の彼の言葉にはインパクトが加わる。
 サイレンが近づく。
 時間がない。
 秋倉は俯いた。
「……仕方ない」
「はっ。仕方ないだ?」
 空牙が迫るのを吟が引き戻す。
「それでいい」
 篠田が囁いた。

 秋倉達を解き、去る支度をする。
「忘れないでください?」
 類沢が振り向いた。
「借り、ですよ」
 もうすぐ警察がくる。
 店の実態も調べられる。
 返事を待たずに類沢は歩き出した。
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