57 / 137
超絶マッハでヤバい状況です
超絶マッハでヤバい状況です18
しおりを挟む
ガラン。
木材が落ちる。
時間はない。
「捕らえろ」
小声でマイクに伝えた瞬間、全員が動いた。
男たちから女性を引き離し、外に連れ出す。
他の者は秋倉を始め、全員を縛り上げていく。
銃も至近距離で、この焦燥感の中では役に立たない。
千夏の元には一夜と三嗣が駆けつけて、紅乃木と紫織を運んだ。
すぐに栗鷹夫妻が手当てを始める。
この二人も呼んでおいたのだ。
柱が倒れる。
忙しない裏口から青年が顔を出す。
「類沢さん」
「瑞希も出てて」
「怪我しないでください」
「大丈夫だから」
既に壁は黒く染まっていた。
類沢は素早く個室を見回り、最後に出た。
入り口が火の中に沈む。
裏口も。
外に出ると、消防車の音が響いた。
五分もしないうちに来るだろう。
野次馬も集まりつつある。
類沢は頬についた煤を拭った。
「さて、秋倉さん。話の続きをしましょうか」
腕を縛られ、壁に押さえつけられた秋倉が睨みつける。
巨体とはいえ、四人がかりには適わないようだ。
「いっておくがな、この店を一つ潰した程度で終わりと思うな。まだまだ支所が」
「支所とは、この三店舗のことですか」
類沢がチラシを三枚取り出し、彼の足元に投げ捨てる。
コンクリートに鮮やかな紙面が映えた。
秋倉が目を見張る。
「残念ながら、電話も通じなくなっていることでしょう。種明かしをしますとね、うちだけじゃないんですよ。貴方に恨みを持っていたのは」
「……どういう意味だ」
類沢がそばの路地を顎で示す。
暗がりから六人の男が現れた。
「おやおやおや……無様な男がいますことですね。私、スフィンクスのオーナーの松園我円(がえん)と申します」
オールバックの白髪に銀のスーツ。
歌舞伎町NO.2の店と謂われるスフィンクス。
「同じく、松園伴(ばん)です。可愛い客を十七人傷つけた身の程知らずはそこの豚ですかね?」
父と同じく白髪の青年。
二十歳にしてトップ。
小柄ながらも、彫りの深い顔立ちと臙脂のスーツが存在感を放つ。
「シャドウズの空牙(くうが)だ、秋倉のおっさん?」
パイプを片手に笑うラフな格好の三十歳。
「口を慎め、空牙。同じくチーフの吟(ぎん)という」
歌舞伎町一の長寿。
長と呼ばれる万年黒背広の老紳士。
最後の二人が進み出る。
木材が落ちる。
時間はない。
「捕らえろ」
小声でマイクに伝えた瞬間、全員が動いた。
男たちから女性を引き離し、外に連れ出す。
他の者は秋倉を始め、全員を縛り上げていく。
銃も至近距離で、この焦燥感の中では役に立たない。
千夏の元には一夜と三嗣が駆けつけて、紅乃木と紫織を運んだ。
すぐに栗鷹夫妻が手当てを始める。
この二人も呼んでおいたのだ。
柱が倒れる。
忙しない裏口から青年が顔を出す。
「類沢さん」
「瑞希も出てて」
「怪我しないでください」
「大丈夫だから」
既に壁は黒く染まっていた。
類沢は素早く個室を見回り、最後に出た。
入り口が火の中に沈む。
裏口も。
外に出ると、消防車の音が響いた。
五分もしないうちに来るだろう。
野次馬も集まりつつある。
類沢は頬についた煤を拭った。
「さて、秋倉さん。話の続きをしましょうか」
腕を縛られ、壁に押さえつけられた秋倉が睨みつける。
巨体とはいえ、四人がかりには適わないようだ。
「いっておくがな、この店を一つ潰した程度で終わりと思うな。まだまだ支所が」
「支所とは、この三店舗のことですか」
類沢がチラシを三枚取り出し、彼の足元に投げ捨てる。
コンクリートに鮮やかな紙面が映えた。
秋倉が目を見張る。
「残念ながら、電話も通じなくなっていることでしょう。種明かしをしますとね、うちだけじゃないんですよ。貴方に恨みを持っていたのは」
「……どういう意味だ」
類沢がそばの路地を顎で示す。
暗がりから六人の男が現れた。
「おやおやおや……無様な男がいますことですね。私、スフィンクスのオーナーの松園我円(がえん)と申します」
オールバックの白髪に銀のスーツ。
歌舞伎町NO.2の店と謂われるスフィンクス。
「同じく、松園伴(ばん)です。可愛い客を十七人傷つけた身の程知らずはそこの豚ですかね?」
父と同じく白髪の青年。
二十歳にしてトップ。
小柄ながらも、彫りの深い顔立ちと臙脂のスーツが存在感を放つ。
「シャドウズの空牙(くうが)だ、秋倉のおっさん?」
パイプを片手に笑うラフな格好の三十歳。
「口を慎め、空牙。同じくチーフの吟(ぎん)という」
歌舞伎町一の長寿。
長と呼ばれる万年黒背広の老紳士。
最後の二人が進み出る。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説


お客様と商品
あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる