54 / 137
超絶マッハでヤバい状況です
超絶マッハでヤバい状況です15
しおりを挟む
男達に囲まれる前に背後を塞ぐ。
相手も速い。
しかし、出口は背中。
それほど不利ではない。
「話し合いに来たのですが」
「一応聞こう」
秋倉は真ん中の椅子に座った。
短い脚を組んで。
「シエラの客を返してもらいたい」
「返してもらえるとでも」
「それと」
相手の言葉を断ち切る。
「二度とシエラに手を出さないで、二度とその醜い顔を見せないでもらいたい。吐き気がします」
秋倉はカラカラと笑った。
「そんな怖い顔をするな」
立ち上がり、近づく。
蹴り飛ばそうとしたが、彼は胸元から銃を取り出し類沢の左胸に当てた。
俊敏な動きだった。
体からは想像できないほど。
秋倉の顔が迫る。
「睨まれるとそそられる……」
鳥肌が立つ。
類沢は目を逸らした。
拳銃がゆっくりと下がる。
「さっきの条件呑んでやってもいいが、こちらにも条件を出させて貰う」
「……なんです?」
千夏が臨戦態勢なのを横目に問う。
「類沢、お前は残れ」
言うとは思った。
まさか本当に言うとは思っていなかった。
「くく……頷くとでも?」
「ああ。頷くさ」
類沢から表情が消える。
「あとな。シエラの客だったか。もう戻らないと思うぞ」
パチンと指を鳴らした後に、甘い香りが漂ってくる。
「吸うな」
三人とも口に手を当てる。
一番奥の扉が開き、女性がよろよろと出て来た。
「紫織さん?」
千夏がはっと呟く。
確か、紅乃木の太客。
いつもはアップにまとめた髪が乱れ、空気を掻くように手を振り回しながら地面に倒れた。
異常。
一目でわかる。
駆け寄ろうとした千夏をとどめ、秋倉を睨みつけた。
「そういう仕組みですか」
「お前ならわかるだろう」
昔、味わった香り。
今は胸焼けしか覚えない。
「他人の客を薬漬けにして奪うなんて、卑怯極まりないですね」
「だが確実だ」
二十余りの個室に寒気がする。
ここで何人の女が狂わされたんだ。
秋倉は巨体を揺らしながら紫織に近寄ると、細い肩を踏みつけた。
「やめろっ」
千夏が叫ぶ。
だが、紫織は人形のようにケラケラ笑うだけ。
グラスを傾け微笑む女性はそこにはいなかった。
「……くそ」
「な? こんな客帰ってくるわけないだろう?」
「死ねよ、屑」
秋倉の首にナイフが当てられた。
相手も速い。
しかし、出口は背中。
それほど不利ではない。
「話し合いに来たのですが」
「一応聞こう」
秋倉は真ん中の椅子に座った。
短い脚を組んで。
「シエラの客を返してもらいたい」
「返してもらえるとでも」
「それと」
相手の言葉を断ち切る。
「二度とシエラに手を出さないで、二度とその醜い顔を見せないでもらいたい。吐き気がします」
秋倉はカラカラと笑った。
「そんな怖い顔をするな」
立ち上がり、近づく。
蹴り飛ばそうとしたが、彼は胸元から銃を取り出し類沢の左胸に当てた。
俊敏な動きだった。
体からは想像できないほど。
秋倉の顔が迫る。
「睨まれるとそそられる……」
鳥肌が立つ。
類沢は目を逸らした。
拳銃がゆっくりと下がる。
「さっきの条件呑んでやってもいいが、こちらにも条件を出させて貰う」
「……なんです?」
千夏が臨戦態勢なのを横目に問う。
「類沢、お前は残れ」
言うとは思った。
まさか本当に言うとは思っていなかった。
「くく……頷くとでも?」
「ああ。頷くさ」
類沢から表情が消える。
「あとな。シエラの客だったか。もう戻らないと思うぞ」
パチンと指を鳴らした後に、甘い香りが漂ってくる。
「吸うな」
三人とも口に手を当てる。
一番奥の扉が開き、女性がよろよろと出て来た。
「紫織さん?」
千夏がはっと呟く。
確か、紅乃木の太客。
いつもはアップにまとめた髪が乱れ、空気を掻くように手を振り回しながら地面に倒れた。
異常。
一目でわかる。
駆け寄ろうとした千夏をとどめ、秋倉を睨みつけた。
「そういう仕組みですか」
「お前ならわかるだろう」
昔、味わった香り。
今は胸焼けしか覚えない。
「他人の客を薬漬けにして奪うなんて、卑怯極まりないですね」
「だが確実だ」
二十余りの個室に寒気がする。
ここで何人の女が狂わされたんだ。
秋倉は巨体を揺らしながら紫織に近寄ると、細い肩を踏みつけた。
「やめろっ」
千夏が叫ぶ。
だが、紫織は人形のようにケラケラ笑うだけ。
グラスを傾け微笑む女性はそこにはいなかった。
「……くそ」
「な? こんな客帰ってくるわけないだろう?」
「死ねよ、屑」
秋倉の首にナイフが当てられた。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説


お客様と商品
あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる