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郷に入ればホストに従え
郷に入ればホストに従え15
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「どうした?」
扉のすぐそばに篠田が立っていた。
予想外の人物に怯む。
「いえ……ただ一服してただけで」
「そんなにボロボロになって?」
俺は焦って襟元を寄せる。
見られたか。
篠田は息を吐いて、腕組みをした。
「誰にやられたかは聞かない。仕返しもするなとは言わない。だが、相手が非道に走っても……」
頭をそっと上げられる。
「お前はホストとして戦え」
カラコンの入った翠の目。
篠田はその目を辛そうに歪めていた。
心配してるのか。
ただ人が欠けて困るからか。
まだ、その真意は掴めない。
「酒は飲めそうか?」
「……一応」
「歩けるか?」
「大丈夫です」
「顔洗って整えて来い」
「はい」
トイレの鏡で傷口を確認する。
唇の端。
米噛み。
痛い。
体は……
「…っ…」
肋骨。
折れてないよな。
それから鎖骨の火傷。
意外に目立たない。
黒くなってはいるけど。
水で軽く冷やすが、激痛にそれ以上出来なくなった。
絆創膏が欲しい。
服が擦れるだけで痛いからだ。
医務室なんてないしな。
事務室に行って篠田に頼むかな。
ガチャ。
しまった。
急いで傷口を隠す。
「瑞希」
「……類沢、さん」
彼は下から上まで眺めて、頭を手で押さえた。
「何があったの?」
「何も」
「いなくなってから探してたんだよね」
心配かけたんだよ、お前。
そんな口調。
優しいのか厳しいのか。
この人もわからない。
瀬々のような一面だってありうる。
そうだろう。
「怪我、隠せてない。そのまま客の前に出たら迷惑かける」
「…」
「ほら」
類沢はポケットから大きめの絆創膏を取り出した。
「後で病院行くよ」
「そこまでは」
「膿んだらどうする」
鋭く言ったから、頷くしかなかった。
「今晩は無茶するな」
「……はい」
類沢は俺の顔をじっと見て、切ない表情を浮かべた。
「化粧、落ちたね」
仕方がない。
でも悔しい。
今朝の時間がもう懐かしい。
「髪もです」
「それさ、後ろだけ下ろして…」
鏡を見ながら彼が直す。
「これなら良いよ」
鏡越しに目が合う。
なんだ。
気恥ずかしい。
ふっと笑って、類沢は去って行った。
礼をしてから鏡を見返す。
悪くない。
扉のすぐそばに篠田が立っていた。
予想外の人物に怯む。
「いえ……ただ一服してただけで」
「そんなにボロボロになって?」
俺は焦って襟元を寄せる。
見られたか。
篠田は息を吐いて、腕組みをした。
「誰にやられたかは聞かない。仕返しもするなとは言わない。だが、相手が非道に走っても……」
頭をそっと上げられる。
「お前はホストとして戦え」
カラコンの入った翠の目。
篠田はその目を辛そうに歪めていた。
心配してるのか。
ただ人が欠けて困るからか。
まだ、その真意は掴めない。
「酒は飲めそうか?」
「……一応」
「歩けるか?」
「大丈夫です」
「顔洗って整えて来い」
「はい」
トイレの鏡で傷口を確認する。
唇の端。
米噛み。
痛い。
体は……
「…っ…」
肋骨。
折れてないよな。
それから鎖骨の火傷。
意外に目立たない。
黒くなってはいるけど。
水で軽く冷やすが、激痛にそれ以上出来なくなった。
絆創膏が欲しい。
服が擦れるだけで痛いからだ。
医務室なんてないしな。
事務室に行って篠田に頼むかな。
ガチャ。
しまった。
急いで傷口を隠す。
「瑞希」
「……類沢、さん」
彼は下から上まで眺めて、頭を手で押さえた。
「何があったの?」
「何も」
「いなくなってから探してたんだよね」
心配かけたんだよ、お前。
そんな口調。
優しいのか厳しいのか。
この人もわからない。
瀬々のような一面だってありうる。
そうだろう。
「怪我、隠せてない。そのまま客の前に出たら迷惑かける」
「…」
「ほら」
類沢はポケットから大きめの絆創膏を取り出した。
「後で病院行くよ」
「そこまでは」
「膿んだらどうする」
鋭く言ったから、頷くしかなかった。
「今晩は無茶するな」
「……はい」
類沢は俺の顔をじっと見て、切ない表情を浮かべた。
「化粧、落ちたね」
仕方がない。
でも悔しい。
今朝の時間がもう懐かしい。
「髪もです」
「それさ、後ろだけ下ろして…」
鏡を見ながら彼が直す。
「これなら良いよ」
鏡越しに目が合う。
なんだ。
気恥ずかしい。
ふっと笑って、類沢は去って行った。
礼をしてから鏡を見返す。
悪くない。
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