22 / 137
郷に入ればホストに従え
郷に入ればホストに従え14
しおりを挟む
痛い。
そんな言葉じゃ足りない。
なんとか顔を守るが、相手に容赦なんてない。
殴り返すことも出来ず、動けなくなるまでなすがままになっていた。
「……あ……ぐ」
「はぁ、殴るのも楽じゃねぇな」
男は煙草を取り出すと、一息吸った。
「お前さ、なんでシエラに入ってきたんだよ」
しゃがんで俺の顔に煙草を近づける。
熱気が目を焼き、瞬きをする。
「ルイ割ったのお前だよな」
寒気が駆け回った。
これだ。
昨日聞いた会話だ。
―お前のミスで恥かかされたじゃねえか! 昨日は太客だったんだぞ―
―……で、でも晃さん。昨日は客の方からぶつかって来て―
―言い訳はいらねぇんだよ……順位落ちたら追放するからな―
―そんなっ―
あの男だ。
「申し訳……ありません」
「そりゃそうだ。弁償たって出来ないもんな」
ぐしゃぐしゃになった髪を掴まれる。
顔を上げられ、煙草を鎖骨に押しつけられた。
「ぁがっ……」
熱くて眩暈がする。
肉が焦げる臭いが漂う。
身を引きたいが、捕まれてるから出来ない。
熱い。
痛い。
男はニィッと笑って煙草を外した。
その場に倒れ込む。
麻痺したように胸全体が痺れる。
触れると焼けただれた肌が劇痛を訴えてきた。
「ハァ……ッッ……ぐ」
「いいか? お前の売り上げで百万寄越せ。そしたら許してやるよ。何ヶ月かかっても返せよ。じゃなきゃ…」
また頭を持ち上げられる。
「もう一度今のをお見舞いしてやるよ」
ガタン。
男が去った後も、しばらくうずくまっていた。
息すら苦しい。
痛い。
悔しい。
いや、怖い。
確か、あの男はNO.5の瀬々晃だ。
恐ろしい奴を敵に回してしまった。
「くそ……」
なんとかスーツを整え、髪も直す。
こんなことで諦めてられない。
だが、あいつに云われた言葉が気になる。
―お前の売り上げで百万寄越せ―
冗談じゃない。
一刻も早くホストなんてやめたいのに、類沢に支払う百万と瀬々になんて払ってられるか。
あれ。
確か、類沢が責任者みたいな話をしていたよな。
じゃあ、瀬々は不当に百万手に入れようとしているのか。
わからない。
とにかく、これから奴には警戒しないと。
ぐらり。
よろつく。
でも戻らなきゃ。
火傷を押さえて、店への扉を開けた。
そんな言葉じゃ足りない。
なんとか顔を守るが、相手に容赦なんてない。
殴り返すことも出来ず、動けなくなるまでなすがままになっていた。
「……あ……ぐ」
「はぁ、殴るのも楽じゃねぇな」
男は煙草を取り出すと、一息吸った。
「お前さ、なんでシエラに入ってきたんだよ」
しゃがんで俺の顔に煙草を近づける。
熱気が目を焼き、瞬きをする。
「ルイ割ったのお前だよな」
寒気が駆け回った。
これだ。
昨日聞いた会話だ。
―お前のミスで恥かかされたじゃねえか! 昨日は太客だったんだぞ―
―……で、でも晃さん。昨日は客の方からぶつかって来て―
―言い訳はいらねぇんだよ……順位落ちたら追放するからな―
―そんなっ―
あの男だ。
「申し訳……ありません」
「そりゃそうだ。弁償たって出来ないもんな」
ぐしゃぐしゃになった髪を掴まれる。
顔を上げられ、煙草を鎖骨に押しつけられた。
「ぁがっ……」
熱くて眩暈がする。
肉が焦げる臭いが漂う。
身を引きたいが、捕まれてるから出来ない。
熱い。
痛い。
男はニィッと笑って煙草を外した。
その場に倒れ込む。
麻痺したように胸全体が痺れる。
触れると焼けただれた肌が劇痛を訴えてきた。
「ハァ……ッッ……ぐ」
「いいか? お前の売り上げで百万寄越せ。そしたら許してやるよ。何ヶ月かかっても返せよ。じゃなきゃ…」
また頭を持ち上げられる。
「もう一度今のをお見舞いしてやるよ」
ガタン。
男が去った後も、しばらくうずくまっていた。
息すら苦しい。
痛い。
悔しい。
いや、怖い。
確か、あの男はNO.5の瀬々晃だ。
恐ろしい奴を敵に回してしまった。
「くそ……」
なんとかスーツを整え、髪も直す。
こんなことで諦めてられない。
だが、あいつに云われた言葉が気になる。
―お前の売り上げで百万寄越せ―
冗談じゃない。
一刻も早くホストなんてやめたいのに、類沢に支払う百万と瀬々になんて払ってられるか。
あれ。
確か、類沢が責任者みたいな話をしていたよな。
じゃあ、瀬々は不当に百万手に入れようとしているのか。
わからない。
とにかく、これから奴には警戒しないと。
ぐらり。
よろつく。
でも戻らなきゃ。
火傷を押さえて、店への扉を開けた。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説


お客様と商品
あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる