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郷に入ればホストに従え
郷に入ればホストに従え13
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「スポンジとかじゃないんですか」
河南がしていたのを思い返す。
類沢はムラを無くすように俺の頬を撫でた。
「どんな高性能の道具も人間の手には適わないんだよ」
そうなのか。
それから類沢は少し赤みがかったチークを施す。
少し紅潮した、健康味のある表情の自分がそこにいる。
「うわぁ……」
「変わるもんだね」
「わ……え?」
「あぁ、あんまり触んないの」
俺は手を下ろした。
すごいな。
顔って変わるんだ。
ワックスを借りて髪もセットした。
大分昨晩の自分と印象が違う。
終わると、類沢も化粧を始めた。
その手際よさを見つめてしまう。
「あんまり見つめられるとドキドキしちゃうんだけど」
「うわっごめんなさい!」
あまりに類沢らしからぬ言葉とその声の柔らかさが逆に怖かった。
飛び上がって走り去る俺の背中に、彼の温かい視線を感じた。
もう歌舞伎町が動き出す時間だ。
通りは明るく輝き、人で溢れる。
類沢の家は、その真ん中に立っているみたいだ。
窓から外を眺めて息を吐く。
つい一週間前までは足も踏み入れたことなかったのにな。
不思議だ。
「行くよ」
いつの間にか背後にいた類沢に呼び掛けられる。
また声を上げてしまった。
「あのさ……いつまでビクビクしてるつもり?」
「ご、ごめんなさい」
「可愛くていいんだけどね」
「はい?」
「だから、行くよって」
「ようこそ、シエラへ」
朗々とした声が響く。
開店と同時に類沢、紅乃木、千夏の三人は指名を受けた。
それから一夜と三嗣を探す。
二人は出迎えに出ていた。
心細くなる。
だが、自分も指名を取らねばと張り切って挨拶に向かった。
「おい、新入り」
振り返ると、見たことない男が睨みつけていた。
「お前だよな?」
「え?」
店の裏に連れて行かれると、同時に腹を殴られた。
壁に激突し、咳き込む。
だが、相手は躊躇なく蹴り上げる。
「…がっ…は」
「探してたんだよねー、宮内くん?」
また蹴られる。
吐き気を堪えて転がった。
なんとか立ち上がって、男と向き合う。
「恨みでも……あるんですか」
口の端から血が零れる。
スーツにも血がついている。
あーあ、高いのに。
「忘れてんじゃねえっての」
思い切り頬を殴られる。
河南がしていたのを思い返す。
類沢はムラを無くすように俺の頬を撫でた。
「どんな高性能の道具も人間の手には適わないんだよ」
そうなのか。
それから類沢は少し赤みがかったチークを施す。
少し紅潮した、健康味のある表情の自分がそこにいる。
「うわぁ……」
「変わるもんだね」
「わ……え?」
「あぁ、あんまり触んないの」
俺は手を下ろした。
すごいな。
顔って変わるんだ。
ワックスを借りて髪もセットした。
大分昨晩の自分と印象が違う。
終わると、類沢も化粧を始めた。
その手際よさを見つめてしまう。
「あんまり見つめられるとドキドキしちゃうんだけど」
「うわっごめんなさい!」
あまりに類沢らしからぬ言葉とその声の柔らかさが逆に怖かった。
飛び上がって走り去る俺の背中に、彼の温かい視線を感じた。
もう歌舞伎町が動き出す時間だ。
通りは明るく輝き、人で溢れる。
類沢の家は、その真ん中に立っているみたいだ。
窓から外を眺めて息を吐く。
つい一週間前までは足も踏み入れたことなかったのにな。
不思議だ。
「行くよ」
いつの間にか背後にいた類沢に呼び掛けられる。
また声を上げてしまった。
「あのさ……いつまでビクビクしてるつもり?」
「ご、ごめんなさい」
「可愛くていいんだけどね」
「はい?」
「だから、行くよって」
「ようこそ、シエラへ」
朗々とした声が響く。
開店と同時に類沢、紅乃木、千夏の三人は指名を受けた。
それから一夜と三嗣を探す。
二人は出迎えに出ていた。
心細くなる。
だが、自分も指名を取らねばと張り切って挨拶に向かった。
「おい、新入り」
振り返ると、見たことない男が睨みつけていた。
「お前だよな?」
「え?」
店の裏に連れて行かれると、同時に腹を殴られた。
壁に激突し、咳き込む。
だが、相手は躊躇なく蹴り上げる。
「…がっ…は」
「探してたんだよねー、宮内くん?」
また蹴られる。
吐き気を堪えて転がった。
なんとか立ち上がって、男と向き合う。
「恨みでも……あるんですか」
口の端から血が零れる。
スーツにも血がついている。
あーあ、高いのに。
「忘れてんじゃねえっての」
思い切り頬を殴られる。
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