あの店に彼がいるそうです

片桐瑠衣

文字の大きさ
上 下
19 / 137
郷に入ればホストに従え

郷に入ればホストに従え11

しおりを挟む
「だからソファーで良いって言ってるじゃないですか!」
「そんなとこで寝て風邪引かれる方が迷惑なんだけど」
 帰宅後、早速恐れていた事態がやってきた。
 人は疲れたら寝る。
 それは避けられない。
 それでも俺は、この男と同じベッドで眠ることだけは避けたい。
 ラフなシャツとパンツに着替えた類沢は、某洋服メーカーのモデルのようだ。
 下ろした髪がむかつく。
「大体なんでダブルベッドなんですか? 独り身でしょう!」
 類沢はニヤリと口角を持ち上げた。
「僕が一人で寝ることは滅多にないよ」
 この色男めが。
 俺はソファーの後ろに隠れるように距離をとる。
 もう風呂と酒という関門を突破したのだから、休ませて欲しい。
 一緒に寝たりしたら、なにされるかわかったもんじゃない。
 キスされたのは忘れてない。
 口……移しも。
「くく……そんなに警戒しないでよ」
 口元に手を当てて笑う。
「何を怖がってるの?」
 飄々と言う。
 俺は呆れてしまった。
 これが、余裕か。
 俺一人バクバクして。
「とにかく、今日はここで寝させて頂きますから!」
「はいはい」
 リビングからベッドルームは吹き抜けで繋がっている。
 つまり、ベッドから起きて歩いてリビングを横切るとそのまま玄関に一直線という訳だ。
 言い方を変えると、玄関に入るとまず寝室が見える。
 イい配置だよ。
「じゃ、十時には起きなよ」
 時計を見ると四時。
 飲みすぎた。
 俺は一刻も早く眠りたくて、適当に頷くと類沢の背中を見送った。
 それからソファーに倒れ込む。
 程良く柔らかい。
 寝心地は十分良い。
 ひょっとしたら類沢もここで眠ることがあるかもしれない。
「……」
(なに考えてるんだ、俺……)
 思考を停止させると、すぐに夢に潜り込んだ。

 夢はよく覚えていない。
 だから見ているのかもわからない。
 夢の話を嬉々として話す河南が羨ましいくらいだ。
 目覚めて、俺はぼーっとそんなことを考えていた。
 入ってくる朝日の角度からして、まだ八時前後だろう。
 白い天井を見上げて考えに更ける。
 カチカチとどこからか時計の音が聞こえる。
 リビングじゃない。
 寝室の方からか。
「早いね」
 突然目の前に類沢の顔が現れて飛び起きた。
 飛び起きたから、思い切り額をぶつけてしまった。

 類沢の額に。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

大学生はバックヤードで

リリーブルー
BL
大学生がクラブのバックヤードにつれこまれ初体験にあえぐ。

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

お客様と商品

あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)

執着攻めと平凡受けの短編集

松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。 疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。 基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

学園の天使は今日も嘘を吐く

まっちゃ
BL
「僕って何で生きてるんだろ、、、?」 家族に幼い頃からずっと暴言を言われ続け自己肯定感が低くなってしまい、生きる希望も持たなくなってしまった水無瀬瑠依(みなせるい)。高校生になり、全寮制の学園に入ると生徒会の会計になったが家族に暴言を言われたのがトラウマになっており素の自分を出すのが怖くなってしまい、嘘を吐くようになる ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿です。文がおかしいところが多々あると思いますが温かい目で見てくれると嬉しいです。

組長と俺の話

性癖詰め込みおばけ
BL
その名の通り、組長と主人公の話 え、主人公のキャラ変が激しい?誤字がある? ( ᵒ̴̶̷᷄꒳ᵒ̴̶̷᷅ )それはホントにごめんなさい 1日1話かけたらいいな〜(他人事) 面白かったら、是非コメントをお願いします!

処理中です...