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晒された命
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しおりを挟む彼女は寂しく口の端を持ち上げ、俺の額に手を当てた。
冷たい手が、気持ちいい。
だが、彼女はすぐに手を離した。
そして、口元を覆い泣き出した。
静かに。
「えっ。どうしたの」
痛みが消え、身を起こす。
「ふ……ふふ。やっと瑞希ちゃんに触れたのにね。触りたくなかったなんて、わがままだよね」
「なに、言って」
涙に濡れた眼は、酷く美しかった。
やっぱり、俺は知っている。
なのに、名前が出てこない。
呼びたいのに。
出てこない。
「ごめんね、瑞希ちゃん」
彼女は謝って、それから俺を抱き締めた。
優しく。
そっと。
でも、離れぬように。
俺も手を背中に回す。
「ごめんねぇっ」
泣き続ける彼女の声に、俺も涙が流れる。
「なんで、謝るんだよ」
―瑞希ちゃん、大好き―
ザクッ。
「がぁああッッ……あ、く」
彼女の体が弾かれたように後ろに下がる。
また痛みが蘇った。
心臓を取り出したいくらい、胸が痛む。
「瑞希ちゃん」
「大丈夫だ……河南」
彼女が目を見開き、それからわぁっと声を上げて泣く。
そう。
思い出した。
ずっと支えてくれた少女。
河南。
そして、これも。
西河南。
会ったことのない、双子の兄がいる。
俺の大切な幼なじみ。
「瑞希ちゃん……右を見て」
息も絶え絶えに、顔を起こす。
右には白い道が続いていた。
砂場から伸びる、一本道。
「向こうに行けば、いいんだよ」
「河南……」
「お兄ちゃんが、ごめんね」
「いいんだよ……あッッ……ぐ……河南も……一緒に」
痛みが強くなる。
手を伸ばしても、河南に届かない。
砂が舞う。
「ごめんね」
「河南っ!」
彼女の制服は、隣町の学校のもの。
学年ごとに異なるバッヂの色は、一年生を示していた。
幼なじみ。
三年生のはずなのに。
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