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晒された命
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指先から紙片が落ちる。
口元が笑い、無様に歪む。
「ふ……くく。こっちのセリフだ」
ああ。
消えた。
何かが消えた、感触がした。
ガンッ。
椅子が壁にぶつかり、一瞬後に落下した。
宙に浮いた足が、そっと地に着く。
痛みは無い。
ソファに手を掛け、一気に背から床に叩きつける。
連続して支柱の木が折れる。
「はは……あはははっ」
弾けた綿が散らばる。
いっそ、視界を白く埋めてしまえばいいのに。
ガタン。
棚が倒れる。
本が舞う。
ガラスが割れる。
ワインが流れ、手が赤く濡れる。
息を吐いて、部屋を見渡すと、原型を留めているものなどなかった。
白い壁にもたれ、煙草をくわえる。
火を点け、ライターを投げる。
空中で熱だけ残して火が消える。
「あーあ……」
荒れた部屋を眺める。
「こんなんじゃ、瑞希呼んで麻那さんと食事出来ないね」
煙を吸い、煙を吐く。
味はしない。
ただ、肺を汚すだけ。
破片が刺さったんだろうか。
血が垂れる腕を見下ろす。
釘の刺さった瑞希の腕が重なる。
西雅樹を、助けて。
あんな状況で、よく自分を傷つけた人間を心配できるね。
馬鹿な瑞希。
「馬鹿はどっちだろうね」
朝日が無遠慮に、カーテンを貫き照らし出す。
チャイムが鳴る。
二時間ほど寝ていたみたいだ。
乱れた服と、壊れた部屋をそのままに立ち上がった。
「はい?」
眩しい朝日の中に、彼のシルエットが浮かび上がる。
シャツの裾を握り締め、どうしたらいいかわからない顔をして。
癖の残る髪は、帰っていない証拠。
「お……おはようございます」
段々小さくなる声に頬が緩む。
「入ったら? 足の踏み場もないと思うけど」
顔を上げて、少しだけ微笑んだ雅樹はぐらりと傾いた。
抱き留めた手から力が抜け、二人で玄関に倒れる。
靴箱に肩でもたれ、両腕の中に雅樹を包む。
「寝不足だね」
「先生こそ」
見下ろしたうなじには沢山の引っ掻き傷が残っている。
それを撫でると、雅樹が身を起こした。
「……怒ってないんですか」
「右を見たらわかるよ」
恐る恐る右に向けた目を見開く。
「怒ってるじゃないですか」
口元が笑い、無様に歪む。
「ふ……くく。こっちのセリフだ」
ああ。
消えた。
何かが消えた、感触がした。
ガンッ。
椅子が壁にぶつかり、一瞬後に落下した。
宙に浮いた足が、そっと地に着く。
痛みは無い。
ソファに手を掛け、一気に背から床に叩きつける。
連続して支柱の木が折れる。
「はは……あはははっ」
弾けた綿が散らばる。
いっそ、視界を白く埋めてしまえばいいのに。
ガタン。
棚が倒れる。
本が舞う。
ガラスが割れる。
ワインが流れ、手が赤く濡れる。
息を吐いて、部屋を見渡すと、原型を留めているものなどなかった。
白い壁にもたれ、煙草をくわえる。
火を点け、ライターを投げる。
空中で熱だけ残して火が消える。
「あーあ……」
荒れた部屋を眺める。
「こんなんじゃ、瑞希呼んで麻那さんと食事出来ないね」
煙を吸い、煙を吐く。
味はしない。
ただ、肺を汚すだけ。
破片が刺さったんだろうか。
血が垂れる腕を見下ろす。
釘の刺さった瑞希の腕が重なる。
西雅樹を、助けて。
あんな状況で、よく自分を傷つけた人間を心配できるね。
馬鹿な瑞希。
「馬鹿はどっちだろうね」
朝日が無遠慮に、カーテンを貫き照らし出す。
チャイムが鳴る。
二時間ほど寝ていたみたいだ。
乱れた服と、壊れた部屋をそのままに立ち上がった。
「はい?」
眩しい朝日の中に、彼のシルエットが浮かび上がる。
シャツの裾を握り締め、どうしたらいいかわからない顔をして。
癖の残る髪は、帰っていない証拠。
「お……おはようございます」
段々小さくなる声に頬が緩む。
「入ったら? 足の踏み場もないと思うけど」
顔を上げて、少しだけ微笑んだ雅樹はぐらりと傾いた。
抱き留めた手から力が抜け、二人で玄関に倒れる。
靴箱に肩でもたれ、両腕の中に雅樹を包む。
「寝不足だね」
「先生こそ」
見下ろしたうなじには沢山の引っ掻き傷が残っている。
それを撫でると、雅樹が身を起こした。
「……怒ってないんですか」
「右を見たらわかるよ」
恐る恐る右に向けた目を見開く。
「怒ってるじゃないですか」
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