どこまでも玩具

片桐瑠衣

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晒された命

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 朝食を食べ終え、着替えしか持ってこなかったことを思い出す。
 本当に受験生か俺は。
 やることがない。
 その時、寝室の机の上にデジカメを見つけた。
 フラッシュバックのように映像が蘇る。
―大胆な一枚撮れたよ―
―これ引き伸ばして保健室に貼ろうか?―
 心臓が早鐘を打つ。
 震える手でカメラを手に取る。
 バッテリーが無ければいいな。
 点かなければいいな。
 そんなことを願いながら、電源を押した。
 画面に床が映る。
 点いてしまった。
 急いでそれを元の位置に戻そうとする。
 けど指が離れない。
 また両手に包む。
 再生に切り替える。
 ドキドキしすぎて眩暈がする。
 俺はなにをしているんだろう。
 最新の写真に目が止まった。
 それは、昨夜のだった。
 俺の後ろ姿。
 着替えを取りに行くと言って、出て行ったときのだ。
 闇の中、街灯に照らされた背中。
 口を押さえてしまう。
 なんて……嬉しそうに走ってるんだ、俺。
 恥ずかしくなるほど。
 類沢は、なにを思ってレンズ越しに俺を見ていたんだろう。
 一つ前に送る。
 どこだろう。
 夕日が写っている。
 ハッとした。
 屋上だ。
 学園の。
 もしかしたら……
 縁起でもない考えが湧く。
 彼がここに上がることは二度とないかもしれない。
 二度と。
 写真を切り替える。
「えっ?」
 見たことある家。
 白い家。
 アカの父の家だ。
 なんで、それが写っているんだ。
 金原と帰る時は撮っていなかった。
 一人で戻ったんだろうか。
 あの後に?
 アカの父はいないはずだ。
 カメラから目を離す。
 見ない方がいいかもしれない。
 ここには、類沢しか知ってはいけないことがあるのかもしれない。
 今の写真だってそうだ。
 でも、未練がある。
 玄関を振り返る。
 帰ってはこないけど、悪いことしている気がしてならない。
 実際悪いことだが。
 言い訳を探しながら、フォルダ画面に移る。
 出来たら消してしまいたい過去が沢山ある。
 あの夜。
 知らない男に体を売った夜も。
 泣きながら逝く俺も。
 怖いくらい生々しくて、でも瞬きすら出来ないほど惹き付けられて。
 息が荒くなる。
 手が震える。
 俺の知らない俺がいる。
 類沢は……とっくに気づいていたんじゃないだろうか。
 こんな俺を見て。
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