どこまでも玩具

片桐瑠衣

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立たされた境地

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 カラン。
 手から携帯が床に落ちた。
 拾いたいけど、ダメだ。
「瑞希?」
 類沢の声にも応えられない。
 寝てしまおう。
 多分、夢でしか逢えない河南が急かしているんだ。
 きっと。


 真っ白な床にうつ伏せに寝ている。
 大理石かな。
 類沢の風呂の残像かもしれない。
 立ち上がって、ただ歩く。
 霞んでいた周りに次々物が現れてくる。
 机にベッド。
 あぁ、わかった。
 ここは類沢の寝室だ。
 そのうち一つだけ、小さなタンスが光り輝いている。
 惹かれるように近づく。
「決まったの? 瑞希ちゃん」
 聞き慣れた声。
「河南」
 そこには白いワンピースを着た河南が座っていた。
 ベッドに。
 浅く腰掛けるようにして。
 目を合わせると微笑んで、少しだけ首を傾けた。
「決まったの?」
 また確かめる。
「……まだ、かな」
「早く決めなくちゃ」
 河南は髪をクルクルといじる。
「そうだな。早く、決めなきゃ」
 じーっと俺を見つめてから、あのタンスを指差した。
「決めるヒントが入ってるよ」
 指先を追って手をかける。
 滑らかな木。
「開けて……いいのかな」
 振り返ると河南はいなかった。
 ただ、布団に残った跡が「瑞希ちゃんが決めることだよ」と言っているようだった。
 一番上の引出を開く。
 光に目を細める。
 シバシバする。
 それでも手を伸ばし、あるものに触れた。
 写真?
 三歩下がり、光が引いたところでそれに目を落とす。
 息が止まった。
 まさか。
 急いで引出に両手をかける。
 中を漁ると、硬いものに触れた。
 写真の残像が消えない。
 拳銃だ。
「マジかよ…」
 決める時が来てる。
 その通りだ。
 この裁判が終わったら、二度と類沢に会えなくなるかもしれない。
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