どこまでも玩具

片桐瑠衣

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立たされた境地

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 好き?

 好きってなんだ。

 俺が類沢を?

 憎んでいたヤツを好きになったりなんてするのか。

 どこからが好きだ。

 好きってなんだ。

「……嘘だろ」
 アカが手を離す。
 俺は何も言っていないのに。
 フラリと体をおこして。
「圭吾」
 乾いた声で続ける。
「いつからだ」
「……あ?」
「いつからこうなった」
「なにがだよ」
 金原が頭を掻く。
 その音がやけに響く。
「状況」
 片言のように言った。
「圭吾は知ってた素振りじゃない? みぃずきの変化にさ」
 金原が黙る。
 え?
 端から見てもそうなのか。
 俺、変だった?
 二人の間に板挟み。
「止めなかったワケ……?」
「オレがどうこう言う問題じゃねぇし」
 信じらんない。
 アカは小さく呟いた。
「狂ってる……二人とも狂ってるよ絶対。おれは父さんにヤられた時、死にたい位世界が嫌になった。どうやったらそんな相手を好きになんか」
「こっから先は!」
 圭吾が怒鳴る。
 シンと静まり返った部室。
「……瑞希の問題だろ」
 俺は息を吸うしか出来なかった。

 俺の問題。

 裁判も。
 西雅樹も。
 類沢先生も。
 頭が痛い。
「……勝手にしなよ」
 アカが乱暴に扉を開けて出て行く。
 その後ろ姿には、虚しさが混じっていた。
 裏切られたような。
 ここで、アカに助けを求めた。
 たった一カ月前に。
 ここで、類沢が好きだという有紗の告白を聞いた。
 ふざけんなって思った。
 一カ月。
 そんなに長いか。
「瑞希……」
「金原、俺おかしいのかな」
 こんなの聞いても仕方ないのに。
「おかしいよ」
「え」
「少なくとも、オレには理解できねー。アイツは今でも近づくだけでゾッとするからな……でも、まぁ」
 金原はアカが出て行った扉を眺める。
「瑞希のことを真剣に考えてくれているから、いいんじゃねぇの」
 瞬きをする。
 金原はカッと赤くなって、ブンブン手を振った。
「ちがうっ、今のナシ。ナシだ! ただ、あれなんだ。あの日……オレが瑞希の家に泊まった日、ちゃんと約束通り手を出さなかったことを少し感心してるっつーか」
「ありがと。金原」
「礼言われる筋合いねーし」
 しばらくの沈黙。
「相談にはいつでも乗るからな」
「うん」
「アカもな」
「わかってる」
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