どこまでも玩具

片桐瑠衣

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立たされた境地

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 金原の声にキョトンとする。
「なんで?」
「瑞希の気持ちを考えろよ」
 アカが立ち上がる。
「圭吾こそっ。どうしちゃったワケ? ここでみぃずき何て言った? おれは覚えてるよ、止めたいって。やっと止められるんじゃん。類沢から解放され」
「そういう問題じゃないんだよ!」
「どういう問題だよ!」
 金原とアカが怒鳴り合う。
 俺のせいだ。
「何が問題なの? アイツはみぃずきを傷つけて、圭吾まで襲った最低野郎だってわかってるんだろ」
「お前もナイフ持ち込みと父親の一件の時に助けて貰っただろ」
「お前もってなに? 意味がわかんないんだけど。大体あれもみぃずきを利用するための演技だろ」
「違うって言ってるんだよ!」
「何が? さっきから圭吾が何言ってんのかわかんない。なんで類沢庇ってんの? たった一、二回優しくすりゃ過去が許されるワケ?」
 パキン。
 心で音がした。
 アカを見つめる。
 たった一、二回……
「おれは父さんを刺した罪は一生消えないってわかってる。父さんだってそうだ。今は幸せに見えるかも知んないけど、櫻に会う度胸が痛いよ。兄が、義兄が犯罪者なんてねっ! 一生だよ。一生罪って消えないモンなの」
「お前の場合とは……」
 金原が言いかけて止まった。
 空気が凍りつく。
 越えてはならない一線。
 それを踏んでしまった。
「へぇー。圭吾、やっぱりそう思ってたんだ。おれは犯罪者で類沢センセは違う? なんで? ねぇ、教えてよ。納得出来なかったら……圭吾の前から消えたげる。おれ、犯罪者だもんね」
「そういう意味で言ったんじゃ…」
「じゃあ、なに? なんなワケ?」
 アカの感情の高ぶりに圭吾が圧される。
 二人の目には抑えきれない涙が浮かんでいた。
 戻れない。
 取り返しのつかないことをお互いに言ってしまった。
「やめろよ、二人共」
 俺が直さなきゃ。
「俺と類沢先生の問題だし」
 アカが駆け寄る。
 俺の襟を掴んで、言葉を探してる。
「……みぃずきっ」
「アカは親友だよ。金原も」
「どうしたの? 類沢に脅されてんの?」
 同じセリフを聞いた。
「脅されてはいないよ」
「じゃ、なんで」
 なんで?
 なんでだ。
 俺の優柔不断に決断が迫られる。
 アカが詰め寄る。
「みぃずき、まさか…」
 金原が止めにかかるが、間に合わない。

「センセが好きなの?」
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