どこまでも玩具

片桐瑠衣

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立たされた境地

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 ガタン。
「コーヒーで良かった?」
「はぁ、どうも」
 自販機から缶を取り、渡される。
 学校近くの公園。
 そこで西雅樹と缶コーヒーを飲んで座っている。
 この状況はなんなんだ。
 類沢に用があるんだろ。
 なぜ俺の所に来るんだ。
 わからない。
 無糖を飲み干し、投げた缶がゴミ箱に吸い込まれる。
「っしゃ!」
 ガッツポーズを取る雅樹に、ただ唖然とするしかない。
 それともなにか。
 拍手したほうが良かったか。
 俺はヤケになりながらコーヒーを飲み干した。
 缶は横に置く。
「悪いね、急に」
「いや、別に」
「昨日見たとき、あの学園の制服着てたからさ。つい、待ち伏せ」
 コメントに困る。
 俺は曖昧に答えながら脳をフル回転させた。
 コイツの目的はなんだ。
 俺に用があるらしい。
 わざわざ学園まで来て。
 夕日が影を飴細工みたいに伸ばしてゆく。
 冷たい風が吹く。
「俺は西雅樹。隣街の高校の三年だ。ま、昨日雅先生に聞いたよな……そっちは?」
「宮内瑞希……三年」
「タメだったんだ」
 ええ。
 俺も意外だよ。
 雅樹を観察する。
 高校三年?
 高校生? 
 嘘だろ。
 そう言いたくなる。
 ベンチの背にもたれる。
 俺は向かいの木に。
 なんとなく、並びたくなかった。
「宮内って呼んでいいか」
「別に。じゃあ、西でいい?」
「あぁ」
 西は少しガードを解いた笑みを浮かべた。
 それから真顔になる。
「真面目に答えて欲しいんだけど」
 早口で言われ、つい頷く。
「雅先生に脅されてる?」
 オドサレテル?
 久しぶりの感覚だ。
 相手が何を意味しているかわからない。
「家に行かされてるのか?」
 なるほど。
 西は俺が類沢と家に来たのが引っかかっていたのか。
 なんで?
 なんで第三者が気にする。
 あんたは類沢のなんなんだ。
「ムリヤリだったら言ってくれ。俺がなんとかするからっ!」
 言葉を失う。
 なんつった。
 この男。
「……なんとか、する?」
「ああ」
 西。
 いきなり現れた男。
 だけど、わかる。
 コイツは俺より類沢を知っている。
「俺、十月まで雅先生の生徒だったんだよ」
「え」
 類沢が来たのは、十一月。
 養護教諭の産後休暇の代わりに。
 え?
 なら、そのまえは……
 そのまえは、西の学校にいた?
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