どこまでも玩具

片桐瑠衣

文字の大きさ
上 下
161 / 206
立たされた境地

10

しおりを挟む

 ガタン。
「コーヒーで良かった?」
「はぁ、どうも」
 自販機から缶を取り、渡される。
 学校近くの公園。
 そこで西雅樹と缶コーヒーを飲んで座っている。
 この状況はなんなんだ。
 類沢に用があるんだろ。
 なぜ俺の所に来るんだ。
 わからない。
 無糖を飲み干し、投げた缶がゴミ箱に吸い込まれる。
「っしゃ!」
 ガッツポーズを取る雅樹に、ただ唖然とするしかない。
 それともなにか。
 拍手したほうが良かったか。
 俺はヤケになりながらコーヒーを飲み干した。
 缶は横に置く。
「悪いね、急に」
「いや、別に」
「昨日見たとき、あの学園の制服着てたからさ。つい、待ち伏せ」
 コメントに困る。
 俺は曖昧に答えながら脳をフル回転させた。
 コイツの目的はなんだ。
 俺に用があるらしい。
 わざわざ学園まで来て。
 夕日が影を飴細工みたいに伸ばしてゆく。
 冷たい風が吹く。
「俺は西雅樹。隣街の高校の三年だ。ま、昨日雅先生に聞いたよな……そっちは?」
「宮内瑞希……三年」
「タメだったんだ」
 ええ。
 俺も意外だよ。
 雅樹を観察する。
 高校三年?
 高校生? 
 嘘だろ。
 そう言いたくなる。
 ベンチの背にもたれる。
 俺は向かいの木に。
 なんとなく、並びたくなかった。
「宮内って呼んでいいか」
「別に。じゃあ、西でいい?」
「あぁ」
 西は少しガードを解いた笑みを浮かべた。
 それから真顔になる。
「真面目に答えて欲しいんだけど」
 早口で言われ、つい頷く。
「雅先生に脅されてる?」
 オドサレテル?
 久しぶりの感覚だ。
 相手が何を意味しているかわからない。
「家に行かされてるのか?」
 なるほど。
 西は俺が類沢と家に来たのが引っかかっていたのか。
 なんで?
 なんで第三者が気にする。
 あんたは類沢のなんなんだ。
「ムリヤリだったら言ってくれ。俺がなんとかするからっ!」
 言葉を失う。
 なんつった。
 この男。
「……なんとか、する?」
「ああ」
 西。
 いきなり現れた男。
 だけど、わかる。
 コイツは俺より類沢を知っている。
「俺、十月まで雅先生の生徒だったんだよ」
「え」
 類沢が来たのは、十一月。
 養護教諭の産後休暇の代わりに。
 え?
 なら、そのまえは……
 そのまえは、西の学校にいた?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

男子寮のベットの軋む音

なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。 そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。 ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。 女子禁制の禁断の場所。

天国地獄闇鍋番外編集

田原摩耶
BL
自創作BL小説『天国か地獄』の番外編短編集になります。 ネタバレ、if、地雷、ジャンルごちゃ混ぜになってるので本編読んだ方向けです。 本編よりも平和でわちゃわちゃしてちゃんとラブしてたりしてなかったりします。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

処理中です...