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晴らされた執念
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「警察に……行きましょうよ」
「母さんっ」
「哲! これは、しなきゃいけないことでしょ」
アカが拳を握る。
頭が混乱しているようだ。
「襟梛、お前は」
「最後まで一緒に行くわ。そしたら完全に縁を切りましょう」
キッパリ言い放った襟梛に、父が少し笑う。
「くく……お前は結婚当時から変わんないな」
鼻を啜る。
今にもまた涙が流れそうだ。
「あなたが変わりすぎたの」
「お前の車でか?」
「そうよ。早く立って」
二人が立ち上がり、アカに向き合った。
「哲」
襟梛が息を吸う。
「お願いだから、助けが欲しい時は云ってちょうだい」
「母さん」
アカが俺達を指差す。
「大丈夫……だから」
「あとで、今の家に呼ぶから」
金原がフッと息を漏らす。
襟梛が云いたかったこと。
それが、これだから。
「哲」
父が目を合わせる。
アカは涙でぐしゃぐしゃの顔を無造作に拭いた。
暫く沈黙が流れる。
支柱を失い傾いたベッド。
無くなったドア。
捨てられた制服。
割れた窓。
壁に刺さった包丁。
部屋には惨状が広がる。
二日間の跡が。
感情の痕跡が。
家族がぶつかった証が。
それを見回してから、こう言った。
「愛している」
アカは俯かずに答えた。
「知ってる」
「母さんっ」
「哲! これは、しなきゃいけないことでしょ」
アカが拳を握る。
頭が混乱しているようだ。
「襟梛、お前は」
「最後まで一緒に行くわ。そしたら完全に縁を切りましょう」
キッパリ言い放った襟梛に、父が少し笑う。
「くく……お前は結婚当時から変わんないな」
鼻を啜る。
今にもまた涙が流れそうだ。
「あなたが変わりすぎたの」
「お前の車でか?」
「そうよ。早く立って」
二人が立ち上がり、アカに向き合った。
「哲」
襟梛が息を吸う。
「お願いだから、助けが欲しい時は云ってちょうだい」
「母さん」
アカが俺達を指差す。
「大丈夫……だから」
「あとで、今の家に呼ぶから」
金原がフッと息を漏らす。
襟梛が云いたかったこと。
それが、これだから。
「哲」
父が目を合わせる。
アカは涙でぐしゃぐしゃの顔を無造作に拭いた。
暫く沈黙が流れる。
支柱を失い傾いたベッド。
無くなったドア。
捨てられた制服。
割れた窓。
壁に刺さった包丁。
部屋には惨状が広がる。
二日間の跡が。
感情の痕跡が。
家族がぶつかった証が。
それを見回してから、こう言った。
「愛している」
アカは俯かずに答えた。
「知ってる」
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