どこまでも玩具

片桐瑠衣

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晴らされた執念

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「あのさ」
 シートベルトに掴まる俺をミラー越しに類沢が見る。
 金原も何かと顔を上げた。
 既に高速に入り、半時間が経過していた。
「後ろの車に見覚えある?」
「へ?」
 金原と同時に振り返る。
 黒の軽自動車。
 所謂国産車って奴で、毎日見かけるようなありふれた車。
「あれがどうかしました?」
 類沢はサングラスを掛けながら呟いた。
「高速入る前からずっとついて来てるんだよね」
 目の前に太陽が現れる。
 俺は目を細めて、後ろを向いた。
 光に照らされる黒い車体。
 不穏な気配。
 運転席に座る人物は反射して見えない。
「尾行されてるってこと?」
 金原の声に余裕が混じる。
 こんな経験ないからだ。
 すぐには信じられない。
 類沢はスピードを上げ、車線を変えた。
 後ろの車もすぐに追いかける。
 ぞくりとした。
 それから一台抜き元の車線に戻る。
 黒い車は見えない。
 安心した瞬間、バックミラーにそれが映った。
 同じように車を抜かして、今度は隣の車線で後ろについた。
「なんだあれ……」
 金原の言葉は全員が感じていた。
 「心覚えがある人?」
 俺も金原も首を振る。
 ギシ。
 ハンドルが鳴る。
 類沢の肩に力が入っている。
 またスピードを上げ、車を抜かす。
 そのまま出口に向かった。
「ここで一緒に降りたら確実だね」
 緊張して後ろを見守る。
 ゲートをくぐり抜けた時、一台の車が追ってきた。
「マジ?」
「類沢先生……実は闇の組織に追われてたり」
「しないよ」
「ですよね」
 街中に入ると、黒い車とも距離が空いた。
 目的の家を見つけ、その白すぎる壁に威圧されながらも車を降りる。
 体が凝っている。
 遠出は久しぶりだし、いらぬ緊張もあったからだ。
 伸びをする。
 金原もストレッチをしていた。
 類沢だけが、真剣な目でただ家を睨んでいる。
 それから、車に戻り、何かを取り出した。
「行く前に確認しておこうか」
 ボキと指の関節を鳴らしながら類沢が言う。
「……なにを?」
 静かな住宅街にエンジン音が轟き、止まった。
 ガチャ。
 ゆっくり振り返る。
 後ろにいたあの車。
 そこから出てきたのは、どこにでもいる主婦に見えた。
「やはりね」
「ウソだろ」
 二人の反応に俺も気づいた。
「……紅乃木さん」
 アカの母。
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