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晴らされた執念
3
しおりを挟む「あのさ」
シートベルトに掴まる俺をミラー越しに類沢が見る。
金原も何かと顔を上げた。
既に高速に入り、半時間が経過していた。
「後ろの車に見覚えある?」
「へ?」
金原と同時に振り返る。
黒の軽自動車。
所謂国産車って奴で、毎日見かけるようなありふれた車。
「あれがどうかしました?」
類沢はサングラスを掛けながら呟いた。
「高速入る前からずっとついて来てるんだよね」
目の前に太陽が現れる。
俺は目を細めて、後ろを向いた。
光に照らされる黒い車体。
不穏な気配。
運転席に座る人物は反射して見えない。
「尾行されてるってこと?」
金原の声に余裕が混じる。
こんな経験ないからだ。
すぐには信じられない。
類沢はスピードを上げ、車線を変えた。
後ろの車もすぐに追いかける。
ぞくりとした。
それから一台抜き元の車線に戻る。
黒い車は見えない。
安心した瞬間、バックミラーにそれが映った。
同じように車を抜かして、今度は隣の車線で後ろについた。
「なんだあれ……」
金原の言葉は全員が感じていた。
「心覚えがある人?」
俺も金原も首を振る。
ギシ。
ハンドルが鳴る。
類沢の肩に力が入っている。
またスピードを上げ、車を抜かす。
そのまま出口に向かった。
「ここで一緒に降りたら確実だね」
緊張して後ろを見守る。
ゲートをくぐり抜けた時、一台の車が追ってきた。
「マジ?」
「類沢先生……実は闇の組織に追われてたり」
「しないよ」
「ですよね」
街中に入ると、黒い車とも距離が空いた。
目的の家を見つけ、その白すぎる壁に威圧されながらも車を降りる。
体が凝っている。
遠出は久しぶりだし、いらぬ緊張もあったからだ。
伸びをする。
金原もストレッチをしていた。
類沢だけが、真剣な目でただ家を睨んでいる。
それから、車に戻り、何かを取り出した。
「行く前に確認しておこうか」
ボキと指の関節を鳴らしながら類沢が言う。
「……なにを?」
静かな住宅街にエンジン音が轟き、止まった。
ガチャ。
ゆっくり振り返る。
後ろにいたあの車。
そこから出てきたのは、どこにでもいる主婦に見えた。
「やはりね」
「ウソだろ」
二人の反応に俺も気づいた。
「……紅乃木さん」
アカの母。
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