どこまでも玩具

片桐瑠衣

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晴らされた執念

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「事実しか言ってねーよ」
 類沢の低い声にも怯まない。
 なんだ。
 この二人に何があったんだ。
 俺はただ首を捻った。
 車はまず最短距離の一件目に向かった。
 余りに近くて、何度も確認する。
「標識は紅乃木だよな」
「早く降りれば?」
 類沢は家に横付けし、スタスタ行ってしまう。
 急いで追いかけると、もうチャイムを鳴らしていた。
「はい?」
 小さな女の子が出て来る。
 ツインテールに赤いワンピース。
 類沢とアイコンタクトする。
 違う。
 この家ではない。
「ママー! お客さんだよ!」
「あらあら……どなた? 宅配便かしら」
 後ろから若い女性が現れる。
 俺達を見て、軽く会釈をし、なにしにきたかと問いかける目をした。
「どうも。突然申し訳ありません。家を探しているのですが、こちらに紅乃木哲君はいらっしゃいますか?」
 教師ボイスは万能だ。
 金原はポカンと礼儀正しい類沢を眺めた。
「哲……? 聞いたことないですね。スミマセンが、多分どなたかと間違えてますよ。意外にこの名字多いので」
「そうですか。ありがとうございます。御迷惑おかけしました。失礼致します」
 扉が閉まるまで、類沢はその姿勢を崩さなかった。
「次行こうか」
「……先生」
「ナニ?」
「どうしてここまでしてくれるんですか?」
 類沢は車の鍵を開け、クスリと笑った。
「人に頭下げるのは慣れてるよ。それに、約束を破る気はサラサラないから」
 目を見開いてしまう。
 会ったことがない。
 いや、今までも特殊すぎたけど。
 こんな先生会ったことがない。
 金原は溜め息混じりに車に乗った。
「次は遠いから、高速を使うよ」
 インターチェンジに入る。
 平日だが、車量は多い。
 スピードが上がる。
 類沢はグイグイ車を抜かしてゆく。
「先生……飛ばし過ぎじゃ」
「遅くしてるつもりだけど」
 メーターは百三十キロ。
 普通か異常か俺には判断つかない。
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