どこまでも玩具

片桐瑠衣

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質された前科

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 むしろ法の元でアカを自分のものにしてしまいかねない。
 今は騒いではいけない。
 だが、どう伝える。
 金原はそこまでは教えてくれなかった。
 依然受話器を持ったままの栗鷹に近寄る。
 彼女は怯みも拒みもしなかった。
 ただ、次の反応を待っている。
「ワケを話します」
 俺は真っ直ぐそう言った。
 栗鷹はソファに座り、俺たちに説明を促した。
 仕事着だろうか。
 スーツ姿に少し緊張する。
 軽い飲み物を置く仕草一つ一つに年齢差を感じる。
 そういえば、女性の部屋に入るのは小学生ぶりだな。
「さ、どうぞ」
 栗鷹はコーヒーを飲んで頷いた。
「確認させて下さい」
「なに?」
 息を吸う。
「ここに、アカを探しに来た男はいますか?」
「……云う必要があるの?」
 怪訝そうな声。
 無理もない。
 金原は腕を組んで唇を舐めた。
「アカには」
 間を開ける。
「隠したい過去があります」
 髪を掻き上げ、彼女は目を見張る。
「その過去を暴こうとしている男がいるんです。アカはその男に殺されかけた過去もあります」
「本当?」
 嘘は吐いていない。
 肩に力が籠もる。
「ここ数年、アカはそいつから逃げてました。でも、三日前に携帯に電話が入ったんです。一言……『会いに行くよ』って」
「俺たちはアカが、その男に攫われたんじゃないかと思ってます」
 栗鷹が目を泳がせる。
「もう一度訊きます。ここに、アカを探しに来た男はいますか?」
 少し考える時間が空いた。
 三人の息遣いだけが場を支配する。
 どうなんだろう。
 ここまで事情を隠して協力を頼むのは失礼かもしれない。
 しかし、話すわけにはいかない。
 アカが一番隠したい過去を。
 誰にもバレたくない過去を。
「……来たわ」
「えっ」
「来た。中年の男が。知り合いだって」
「アカがいるって言ったんですか」
 栗鷹は眉をしかめ、一瞬泣きそうな顔を見せた。
 胸が締めつけられる。
「知らなかったんだもの。紅乃木くんの親戚だって……怪しさなんて全くない普通の人だったから」
「それで?」
「その男、なんて言ったんですか」
 聞きたくないパターンがいくつかよぎる。
 そんなこと考えても仕方ない。
 真実を一つずつ掴まないと。
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