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質された前科
3
しおりを挟む「瑞希!」
「金原、どした?」
放課後の面談時間だ。
ほとんどの生徒は帰っている。
「……アカの奴、今日休んでるだろ? 何回か連絡入れたんだけど出ねぇんだ」
すぐに、家に行くことを決めた。
ピンポーン。
インターフォンからの反応はない。
「留守?」
「朝から?」
新聞がそのままだった。
タンタン。
階段を上がってくる音がする。
タイツを履いた細い足が現れる。
「こんばんは」
アカの部屋の隣人だろうか。
共同アパートにそぐわない澄んだ声。
優しそうな女性が挨拶をしてきた。
ストレートの黒髪が揺れる。
シャンプーのCMにでも現れそうだ。
「あ……ども」
買い物袋を置いて、鍵を探る。
若い。
二十代後半だろうか。
「哲くんのお友達?」
「そうっスけど」
金原がぶっきらぼうに答える。
相手は笑顔を崩さない。
「昨日から帰ってないの」
「嘘だろ?」
つい声を荒げてしまった。
女性は少しびっくりしたように眉を上げた。
「行方……不明なの?」
「あ、いや」
まだそうと決まった訳じゃない。
そう言う前に相手は、駆け寄ってアカの部屋の鍵を開けた。
手には四本程、鍵が握られている。
「えっ、お姉さん……」
「大家よ」
まじかよ。
金原が口パクで言った。
少し躊躇ったが、中に入る。
「……いないわね」
部屋はアカと話した時のままだ。
カーテンは閉じられたまま。
荒らされた形跡もない。
旅支度もした跡はない。
「あ、遅くなったわね。私は栗鷹鏡子よ。ここの大家なの」
髪を整え、思い出したかのように自己紹介をした。
「ども。アカの友人の宮内瑞希です」
「……金原圭吾です」
「警察に連絡するわ」
「え?」
栗鷹はすぐに部屋を出て行った。
「ちょっ……待って鏡子さん!」
急すぎる。
余りの目まぐるしさについて行けない。
隣の部屋に向かうと、受話器を持つ栗鷹がいた。
金原が走って電源ボタンを押す。
「……なにするの?」
「警察は待ってくれ」
「理由がないわ」
大人だ。
冷静で、強気。
こっちは子供だ。
金原がアイコンタクトをする。
伝えてくることは一つ。
アカの父親。
もし彼が関わっていたとすれば、警察を呼んだところで解決しない。
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