どこまでも玩具

片桐瑠衣

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任された事件

17

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 目を開けると、荒野に立っていた。
 制服を着ている。
 地平線に、山々が並んで周りには何もない。
 頭が痛い。
 いつ、寝たっけ。
 夢だと気づいて記憶を辿る。
 そのうち、夢の中で考える行為がバカバカしくなった。
―瑞希ちゃん―
 河南ちゃん?
 俺は空を見上げた。
 しかし、予想外にも背中をポンと叩かれた。
「こっちだよ、瑞希ちゃん」
 ニコッと笑って河南はスカートの裾を持ち、会釈をする。
 この制服。
 見たことがある。
「また……大変そうな顔」
 スッと額に細い手を添えられた。
 頭痛が消える。
 無意識にその手を握った。
 少しびっくりした顔をする。
「河南ちゃん……いや、河南。教えて欲しいんだ」
 はっきり自分の声が聞こえる。
 こんな経験は珍しい。
 現実みたいだ。
 河南は風に流される髪を押さえながら頷いた。
「俺は、類沢先生について行っていいのかな……」
 なんてこと訊いてるんだ。
 これまでのいきさつを知らない河南に。
 夢の中の河南に。
 だが、俺は真剣だった。
 河南も笑わない。
 真剣に受け止めてくれた。
「ねぇ……瑞希ちゃん」
 握られた手をじっと見つめる。
 それからキュッと握り返して来た。
 心臓が脈打つ。
「それを決める時が来てるよ」

 起こした身に鈍痛が走る。
 あぁ、そうだ。
 あのまま寝たんだ。
 俺はリビングに横たわっていた。
 座ったまま眠って、倒れたのか。
 まだ暗い。
 時計は五時を指していた。
 随分早く目が覚めたものだ。
 類沢の部屋から物音はしない。
 経験から知ったのだが、類沢はほとんど寝息を立てない。
 いびきは勿論のこと、無音で眠るものだから、始めのうちは不気味だった。
 しかし、今は存在を感じる。
 類沢は、そこに、いる。
 寝てるのか起きてるのかは知らない。
 俺は河南の言葉を思い返した。
―決める時が来てるよ―
 どういうことだ。
 頭を抱える。
 これから、まだ何か起きるのか。
 俺は頭を冷やすためにも、家に帰った。
 荷物をそっと持って。

 家に着く。
 電気を点けて、自分の部屋に上がりベッドに倒れ込んだ。
 全身が大喜びして、筋肉は役目を放棄する。
 疲れた。
 泣き疲れたし。
 色々疲れた。
 目を瞑る。
 何も考えずに、あと二時間だけ寝てみよう。
 何かが変わるかも。
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