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任された事件
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ホテルから出て、指定場所に戻る。
掌には一万円が握られている。
ネオンの中を虚ろな目でふらつく。
全身が痛み、ビルの壁にもたれた。
皺ついた札を見下し、指をかける。
ビリ。
「いらない……」
ビリビリ。
粉々になった紙片を道に落とす。
吹かれて散れ。
証拠を消すように。
「瑞希?」
類沢が俺の顔を見るやすぐにコートを脱ぎ、被せてくれた。
冷たい腕に触れ、眉を潜める。
「なんでそんな格好で」
「……俺の服、破かれちゃったんで」
嘘じゃない。
昨日の行為に皮肉を込める。
「あんたの服ならどうなっちゃってもいいかなって」
「あのさ、瑞希」
俺の肩を掴み目線を合わさせようとする。
俯いたままの頬に手を添えて。
それでも顔を上げたくなくて。
「なにかあった?」
あぁ、なんで。
こんな時にだけ教師の仮面をつけてしまうのだろうか。
喫茶店に入り、類沢がホットコーヒーを二つ注文した。
ウェイターが来るまで沈黙が続く。
シャワーは浴びたが、まだ臭いが残っている。
そう感じて、また俯いてしまう。
こんなことをしていれば、何か隠してるなんてすぐにバレてしまうだろう。
コーヒーが来た。
その器を指で触れても、熱さを感じない。
さっきまで、冬の寒さを感じなかったように。
色々なものが麻痺し始めている。
以前の俺なら、こんな格好で男に捕まったりなんかしない。
会話だって普通に出来る。
理由なんてわかってる。
だから、見返してやりたかったのかもしれない。
ほら。
俺はあんたのものじゃない。
簡単に逃げられるんだって。
「……瑞希」
あぁ、呼ぶな。
呼ばれたらブレてしまう。
後悔してしまう。
なんて馬鹿なことをしたんだって。
理性が気づいてしまう。
類沢は煙草を取り出そうとして、途中でやめた。
じっと視線を感じる。
「あの人誰かな?」
ビクッ。
つい反応してしまった。
「瑞希と一緒にいた人」
見てたのか。
いや、ホテルを出る時周りに人はいなかった。
狭い路地だったし。
しかし、心臓は早鐘を打つ。
バレた。
そんなわけはない。
目線が泳ぐ。
コン。
類沢が音を立ててカップを置いた。
黒の液体が不穏に揺れる。
「瑞希は嘘もつけないんだね」
誰かに同じことを言われた。
掌には一万円が握られている。
ネオンの中を虚ろな目でふらつく。
全身が痛み、ビルの壁にもたれた。
皺ついた札を見下し、指をかける。
ビリ。
「いらない……」
ビリビリ。
粉々になった紙片を道に落とす。
吹かれて散れ。
証拠を消すように。
「瑞希?」
類沢が俺の顔を見るやすぐにコートを脱ぎ、被せてくれた。
冷たい腕に触れ、眉を潜める。
「なんでそんな格好で」
「……俺の服、破かれちゃったんで」
嘘じゃない。
昨日の行為に皮肉を込める。
「あんたの服ならどうなっちゃってもいいかなって」
「あのさ、瑞希」
俺の肩を掴み目線を合わさせようとする。
俯いたままの頬に手を添えて。
それでも顔を上げたくなくて。
「なにかあった?」
あぁ、なんで。
こんな時にだけ教師の仮面をつけてしまうのだろうか。
喫茶店に入り、類沢がホットコーヒーを二つ注文した。
ウェイターが来るまで沈黙が続く。
シャワーは浴びたが、まだ臭いが残っている。
そう感じて、また俯いてしまう。
こんなことをしていれば、何か隠してるなんてすぐにバレてしまうだろう。
コーヒーが来た。
その器を指で触れても、熱さを感じない。
さっきまで、冬の寒さを感じなかったように。
色々なものが麻痺し始めている。
以前の俺なら、こんな格好で男に捕まったりなんかしない。
会話だって普通に出来る。
理由なんてわかってる。
だから、見返してやりたかったのかもしれない。
ほら。
俺はあんたのものじゃない。
簡単に逃げられるんだって。
「……瑞希」
あぁ、呼ぶな。
呼ばれたらブレてしまう。
後悔してしまう。
なんて馬鹿なことをしたんだって。
理性が気づいてしまう。
類沢は煙草を取り出そうとして、途中でやめた。
じっと視線を感じる。
「あの人誰かな?」
ビクッ。
つい反応してしまった。
「瑞希と一緒にいた人」
見てたのか。
いや、ホテルを出る時周りに人はいなかった。
狭い路地だったし。
しかし、心臓は早鐘を打つ。
バレた。
そんなわけはない。
目線が泳ぐ。
コン。
類沢が音を立ててカップを置いた。
黒の液体が不穏に揺れる。
「瑞希は嘘もつけないんだね」
誰かに同じことを言われた。
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