どこまでも玩具

片桐瑠衣

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任された事件

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 目を覚ます。
 布団を引き寄せ、朝の寒さを凌ぐ。
 周りを見回すが、誰もいない。
 ここは、どこだっけ。
 カチカチ。
 六時か。
 モゾ。
 脚を摺り合わせる。
 Tシャツ一枚で、下着も付けてない。
 なにがあったんだっけ。
 上を見て、思い出す。
「あ……あぁあ」
 昨晩の行為が。
 彼の言葉が。
 自分の声が。
 全部が蘇る。
 ガバリと布団に突っ伏す。
 信じられない。
 あれが現実なんて。
 あれが昨晩なんて。
 もう涙は出ない。
 静かに布団を抜け出す。
 シーツの乱れを見たくないから、真っ直ぐリビングに向かった。
 チラリと覗くと、白い煙が見える。
 その下には、煙草をくわえた類沢が座っていた。
 胸が疼く。
 朝日を浴びる横顔を眺めて。
 なんで。
 なんで、あの眼は濁ってないんだろう。
 だから、信じてしまう。
 乱暴に抱かれた後なのに。
 ソファから立ち上がった類沢が、俺を見つけた。
 煙草を灰皿に押しつけて歩いてくる。
「まだ寝てて良いのに」
「……」
「暖かいのでも飲む?」
「要らない、です」
 しかし類沢はコーヒーを二つ淹れて来た。
 手渡され、受け取ってしまう。
 ズズ、と音が鳴る。
 美味しい。
「……もう少し、休みますね」
「それが良いんじゃない」
 カップを片付けた類沢が、俺の背をそっと押してベッドに誘う。
 布団を頭まで被り、窓を見る。
 類沢はまたすぐに出て行った。

 無音だ。
 身を起こす。
 あれから何分経ったんだろう。
 七時。
 リビングに出ると、朝食の横にメモが置いてあった。
―召し上がれ―
 出掛けたのだろうか。
 俺はメモを握りつぶした。
 食欲もない。
 ラップをされた綺麗な朝食を眺める。
 やっぱり料理、上手い。
 あの時も、自分のために作ってくれたんだっけ。
 寝室に戻り、類沢のタンスを漁る。
 どれも大きいが、Tシャツとズボンを借りる。
 下着は流石に借りれない。
 自分の下着を探すと、ドロドロに濡れていた。
 昨日は脚までズラされ、そのままされたんだった。
 洗面所で洗うが、中々落ちない。
 その間はズボンをそのまま穿いていた。
 干して、リビングに戻る。
 後で取らなきゃ。
 ソファに寝転がる。
 うつ伏せで。
 ふかふかだ。
 眠れそう。
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