どこまでも玩具

片桐瑠衣

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阻まれた関係

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 保健室に戻り、全ての事務を終わらせる。
 放課後、六時を過ぎてから屋上に足を運んだ。
 ドアに手をかけ、扉の向こうの会話に耳を済ます。
「……ちゃんとパクってきたかよ?」
「当たりめぇだろ。ほら、感謝しろよ」
「またビールかよ」
「はは、今日もあいついねぇかな」
「ああ、宮内だっけ?」
「あれは楽しかったよな」
「写真も撮ったし、今から呼んでみるか?」
「ひでー」
「鬼畜キタ。なになに、携番押さえたの? 頭いいー」
 そこで扉を開いた。
 三人の男子がこちらを向く。
 酒を隠す者はいなかった。
 図太い奴らだ。
「なんすか」
「新人の類沢先生じゃないすか」 
「先生も飲みます?」
 下卑た笑いを無視し、彼らに近づく。
 カツカツ。
 白衣が風に舞う。
「君たちだよね?」
 沈黙を味わう。
「瑞希を遊んでくれたのは」

 否定する。
 ごまかして笑う。
 そんなことをすれば、この場で屋上から突き落としてやるつもりだった。
 しかし、予想通り、彼らは笑って肯定した。
「なんで知ってるんすか?」
「カウンセリングでも受けたんじゃねーの?」
「はは、そういうことか」
 盛り上がる彼らの前に立ち、口を開く。
「あの倉庫に、今日も人がいるよ」
 黙る男子達をせせら笑う。
「瑞希じゃないけど」
 
 それから後は、見る必要は無かった。
 屋上から去り、しばらく階段に立ち尽くす。
 後ろから騒ぎが聞こえたのはすぐだった。
 これだから、馬鹿は扱いやすい。
 暴れる音。
 叫ぶ声。
 服を破る音。
 ライターを手の中で回す。
 煙草は取り出さなかった。
「足押さえろ! ほらほら、暴れんなよヒナヤン先生?」
「やべぇ、コイツ気持ちいいんだけど」
「……ひぐッッ……やめ」
 自然と口が笑う。
 思い切り乱暴にすればいい。
 雛谷が使ったような媚薬なんてない。
 痛みはそのまま感じるだろう。
 卑劣な手で瑞希を弄んだ分にしては、足りなすぎる代償だ。
 階段を下りる。
 足音が妙に耳に障る。

 家に着くと、瑞希がソファーに体育座りをしていた。
「休めた?」
「……はい」
 コートを脱ぎ、クローゼットにしまう。
「あの」
「ナニ?」
 間が空く。
「ありがとう、ございました」
 息が一瞬止まった。
 じっと自分を見つめる瑞希。
 その言葉が本心からのものだと、確かに物語っている。

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