どこまでも玩具

片桐瑠衣

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阻まれた関係

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 急ブレーキを踏み、車を停める。
 八時。
 類沢は時計を見て溜め息を吐いた。
「……瑞希」
 走って学校の玄関に入る。
 真っ暗な廊下に非常灯だけが明かりを照らしている。
 階段を駆け上がり、全ての教室を確認する。
―縛ってどっかのトイレに置いて来ちゃったぁ―
 雛谷の言葉を思い出し拳を握る。
―今頃、誰かさんに遊ばれてるかもよ? 急いで探さないと―
 学校周辺の施設を虱潰しに回った。
 勿論反省室と、校内のトイレも確認した。
 だが、いなかった。
 屋上に着く。
 鍵が閉まっている。
 類沢は管理室でくすねてきた鍵束を探る。
 どれだ。
 ジャラジャラ。
 どれだ。
 何十もの鍵が鳴る。
 屋上の文字を見つけ、鍵穴に差し込んだ。
 開いた。
 冷気が吹き込んでくる。
 月明かりが白くその輪郭を光らせている。
 きっかけは金原の言葉だった。
 あのあと保健室に戻ると、まだ二人が残っていたのだ。
「あ、類沢先生」
「瑞希は?」
「……今から探す」
 誰が犯人かなど云いたくもない。
 類沢は急いで鞄を掴む。
「もしかして、屋上にいたり……」
 それはない。
 類沢は保健室を出る。
「有紗に連れられてったもんな」
 有紗?
 仁野有紗?
 その後雛谷に襲われたのか。
 なぜ、屋上を先に見なかったのか。
 焦っていたんだろう。
 カツカツ。
 建物の陰を一つ一つ覗く。
 いない。
 そして、諦めようとしたとき、出口の隣に小さな倉庫があるのに気がついた。
 入ったことはない。
 存在すら知らなかった。
 その錆びれた様子から、人がいる気配は感じられない。
 しかし、鍵束を取り出した。
 倉庫と書かれた三つの鍵を試す。
 ガキン。
 違う。
 キンッ。
 違う。
 最後の一つ。
 カチャリ。
 金属音と共に扉が開く。
 暗い室内。
 目が慣れず、足を踏み出した途端に何かを踏んだ。
 嫌な予感がして足を戻す。
 手探りでスイッチを押した。
 同時に室内がはっきり姿を現した
 言葉を失う。
 湿った空気。
 濡れた床。
 そこに転がる瑞希。
 学ランが被されただけで、裸だ。
 類沢は上着を脱いで着せた。
 ツンとした臭いがする。
 瑞希は半眼で意識を失っていた。
 暴力の跡もある。
 手足は縛られた縄目模様。
 太股には誰のかわからない精液が流れている。

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