どこまでも玩具

片桐瑠衣

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阻まれた関係

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 類沢かと思った。
 同じ白の白衣だったから。
 違った。
「確認したいことがあって、探してたんだよ」
 チャラチャラと音を鳴らしながら雛谷が近づく。
 例の反省室の鍵が。
 俺は昨日の話を思い出して警戒する。
 勿論、噂を全て信じる訳じゃないが。
 用心するに越したことはない。
「そんなに怖い顔されると、嫌われてるみたいで厭だな」
「あ、すみません」
「あはは、謝ること? 宮内って素直だよね」
 何故名前を覚えてる。
 二年前に授業を受けただけだが。
 覚えてるものなのだろうか。
「確認ってなんですか?」
 化学は入試に使う。
 ただ、雛谷には添削も頼んでないし、そもそも関わる点がない。
「その前に一つ。午後はサボる気?」
 まさか。
 その言葉が出なかった。
 躊躇が答えとなる。
 雛谷はニィッと笑うと隣のフェンスにもたれかかる。
「昔はよくサボったなぁ……こうして屋上に来てさ」
「雛谷先生が?」
「ぽくない?」
「……」
 そういえば嘘になる。
 彼も類沢と似通う空気を持っていて、学校とかいう規律から逸脱しているように見えるからだ。
「宮内は嘘もつけないんだね」
「そうすね」
 暫くの沈黙。
 つい雛谷を観察してしまう。
 百六十程度の背に、童顔。
 ヒナヤンというあだ名が似合う、チワワ顔。
 類沢がV系とするなら、アイドルってとこだ。
 変な例えをした。
 ついさっき有紗と言い合いした場所に、雛谷と二人でいる。
 この現状がおかしい。
 雛谷はフェンスに手をかけて空を仰いでいる。
「……授業はないんですか?」
「んー? 流石に授業あったらサボれないよ、教師だもん」
 ですよね。
 俺は苦笑いして俯く。
 どうしていいかわからない。
 二年ぶりに話す雛谷と、二人なんて。
 ぞわり。
 寒気が走る。
 昨日の話を思い出したのだ。
 確か、最初の犠牲者は部活で二人きりになって。
 いや、忘れよう。
 予定は未定っていうし。
 意味が違うか。
 考えたことは実現するっていうし。
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