どこまでも玩具

片桐瑠衣

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剥がされた家庭

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 類沢はすぐに家中の窓を開けた。
 それから掃除機を五分で済ませると、俺に洗濯機の位置だけ尋ねて洗濯を始めた。
 同時にキッチンに行くと、買ってきた具材で料理をする。
 俺は呆けたままそれを眺めた。
 わからなくなる。
 なんで、類沢が家にいるのか。
 まさか、心配して訪ねてきたのか。
 まさか。
 どうせ見返りを要求するんだろう。
 そしたら包丁持って抗議してやる。
 人の弱みにつけこむ最低な奴ってことで、今までの恨みをぶつけてやる。
「ご飯、出来たよ」
「うわっ」
 俺は跳ね起きた。
 それからリビングの机を見る。
 湯気をたてる雑炊と、おひたしと味噌汁。それに鯖。
「和食しか作れないけど、栄養価は高いから」
「……ありがとう、ございます」
 類沢はフライパンを洗って、それから冷蔵庫に買ってきたものを詰めると、食べてる俺の横でコートを着た。
「じゃあ、お大事にね」
「えっ」
 予想外過ぎて声を上げてしまう。
 類沢も驚いて振り返る。
「なに?」
「あ、いや……帰るんだ」
「まだ家事あった? あぁ、お風呂沸かそうか?」
「違くて」
 類沢はコートを抱えて首を傾げる。
 なんで呼び止めたんだっけ。
 あぁ、余りに予想外だったからだ。
 予想通りなら、どうなっていた。
 類沢と包丁バトル?
 何考えてんだ俺。
 風呂沸かして欲しかった?
 違う。
 望みは一つだけ。
「あの……折角作ってもらったんで」
 それしか言えなかった。
 しかし、彼は汲み取った。
「ああ、一緒に食べていいの?」
 俺は小さく頷いた。

 確か、最後に見たのは保健室で篠田にアカ達と連れ出される時か。
 なんでか事情を誤魔化して。
 あれはアカを庇ったのか。
 それとも篠田を信用していないのか。
 もしくはアカが云ったとおり、俺だからか。
「訊きたいことがあるなら答えるけど」
 類沢は雑炊をよそりながら言った。
「泣きはらした目しちゃってさ」
「そりゃ仕方ないだろ!」
「両親には……ご冥福を祈るよ」
「は」
 なんで。
 類沢は目を伏せる。
「ニュース、見たからさ。宮内って名字は珍しいし」
「あ……」
 知ってたんだ。
 知ってて来たんだ。
 なら、その理由なんて訊くまでもない。
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