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明かされた記憶
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しおりを挟む「俺はどうすりゃいいんだ」
とりあえず職員室の脇にある小会議室で四人は席に着いた。
篠田が呆れながらそう吐き出し、生徒三人も同調する。
「まぁ、新任の類沢先生の下で騒ぎが起ころうが上は動かん。ほら」
篠田はそばの棚から紙を数枚取り出して渡す。
まさかとは思うが。
「反省文?」
明らかに不服そうなアカに鋭い睨みが飛ぶ。
「……なんなら反省室でもいいぞ」
「書かせて頂きます」
アカの口調から、その恐ろしさを想像した。
「明日までな。あぁ、仁野はいい」
「え? いんですか」
「お前は被害者だろ」
有紗は設定を思い出したとばかりに舌を出す。
「そうですぅ」
「早く教室戻れ」
ジャンパーを抱えたアカを教室に戻すわけにもいかないので、有紗と三人で例の如くバスケ部の部室へ。
「あれ、なに?」
「類沢だろ」
「だから、なにあれ」
アカの疑問は全員が感じている。
だから頭が痛む。
恩を着せたつもりだろうか。
それとも、ただの気まぐれか。
「センセって、いつもああなの?」
「知るか」
何故かアカが有紗にだけ冷たい。
むしろ殺気すら見える。
「……なによ。私だって止めようと必死だったのよ!」
「なんだろうが、彼氏犯した男とヤりたいんだろ」
有紗がガタリと立ち上がる。
ワナワナと怒りを押さえつけ、数秒後また座った。
大きく深呼吸している。
今、争ったところで誰も得しない。
それはみんなわかっている。
「悪い……みぃずき、あいつは無理」
「……ん」
俺はただ頷いた。
希望はあった。
でも、アカが類沢に危害を加えたら、多分誰もが不幸になった。
なら、不幸なのは俺だけでいい。
「あ」
突然有紗が声を上げる。
人差し指が、アカのポケットを指していた。
「それ! 懐かしい!」
「あ?」
取り出したのは、虎と熊のキーホルダー。
見たことがある。
バスケ最後の試合の。
「あたしが圭吾に渡したのだ」
「じゃ、捨てる」
「ちょ、ちょっと!」
アカの手を掴み、有紗は奪い取った。
「これ、御守りなんだから」
「なんの?」
有紗は俺を見て、少し顔を緩めた。
「圭吾が、最後の試合に勝ちますように」
「終わってんじゃん」
「それと」
有紗は力強く言う。
「圭吾と周りが幸せになりますように」
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