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明かされた記憶
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しおりを挟む「くっ……はは……あはははは」
部屋には類沢の笑いだけが響いた。
「あっはははは。面白いなぁ……あぁそう」
愉しげに肩を揺らす彼が、何故か怖くて口が開けない。
紅乃木は予備のナイフを取り出し、左手で回す。
「有紗、お前今までの聞いててよくそんな」
「うるさいっ。圭吾にはわかんないんだよ、好きになるってのが」
スキニナル。
それは、この状況に余りに似合わない言葉ゆえ変換されない。
誰を?
誰が?
「あたしと付き合って、それで他の人に手を出すのをやめて! それでいいんでしょ」
そういう作戦ね。
でも、それで解決するのなら瑞希があれほど悩むか。
「キミは彼氏を犯した男とセックスしたい訳?」
有紗が口をつぐむ。
金原は青筋を浮き上がらせて、類沢に掴みかかった。
襟を乱すその手を逆に捻り上げ、彼は笑みを消す。
「随分な彼女だね、圭吾?」
「名前で呼ぶんじゃねぇよ」
バシン。
金原は打たれた頬を押さえながら横によろけた。
「口の悪い生徒たちだ……」
有紗が駆け寄るが、その手は振り払われる。
「もう、知らねぇよ」
「圭……」
立ち上がった金原が有紗を押しやる。
「有紗はこんな奴でも欲しいんだろ。オレはもう我慢なんねえっつの」
それはそうだ。
紅乃木はナイフを腿に当てて見下ろした。
光る切っ先は有紗に向いている。
目障りだな。
あの女。
扉が開き、金原が消えた。
「圭吾!」
「自業自得じゃん……」
「なんですって」
有紗がツカツカと歩み寄る。
紅乃木は躊躇なくナイフを突き出した。
ピタリと止まるが、今にも飛びつかんばかりの勢いだ。
「……どうせ逆恨みなんでしょ? 自分が苛つくから類沢センセ避けてるだけじゃん」
「なら、犯されてみれば?……あぁ、お前の場合は嬉しくて盛っちゃうか」
「うるさい!」
殴りかかったきた彼女をかわし、紅乃木はその頭を平手打ちする。
バン。
ストレートの髪が舞う。
有紗は呆然と座り込んだ。
「馬鹿が犠牲になるのはどうでもいいんだけどさ」
「女性に手をあげるのはどうかと思うけど」
「男ならメチャクチャにしていいのかよ?」
類沢が口に軽く手を当てて黙る。
「……あんたは関係ないじゃない」
「は?」
有紗がよろよろと立ち上がる。
「関係ないじゃない!」
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