どこまでも玩具

片桐瑠衣

文字の大きさ
上 下
43 / 206
放たれた憎悪

6

しおりを挟む
 食い下がる彼に仁野は叫び返した。
「あの保健教師が同性愛者だって言ってんの!」
 空気が止まる。
 何もかもが固まっている。
 金原は目を見開いたまま。
 俺は靴を取り出したまま。
 周りの生徒は怪訝そうに二人を見つめたままに。
 頭の中はグツグツ新たな疑念をごちゃ混ぜに煮詰めてる。
 まさか。

 ……仁野にバラしやがった?

 いや、すぐに俺は否定する。
 だったら金原に対しても何か云われたはずだ。
 コレクションのように扱う類沢なら、自分の手駒の数など喜んで喋るだろうから。
「ほら! ほら、嗤いなさいよ!……嘘つきだって……言えばいい…」
 金原は呆然として仁野を見下ろす。
 それからそっと彼女の手を握る。
 肩を震わせる仁野に何か囁くと、二人はこっちに向かってきた。
 何も知らない素振りで立ち去ろうとしたが、金原の視線が突き刺さる。
「瑞希、二人きりで話すから」
 帰れ。
 耳を閉じて。
 そういうことだ。
 俺は応えずに玄関を出た。
 つまり、金原は紅乃木よりも元カノが大事ってことだ。
 どこかで期待していた。
 否定するんじゃないかって。
 何言ってんだよ。
 有紗って。
 否定……すんじゃないかって。
 バラす気かよ。
 オレは信じるよって。
 自分のことは言えないだろうな。
 実は瑞希……が……って
 俺は校門に寄りかかった。
 何も、何も今日じゃなくたって。
 携帯を見る。
 着信一件。
 誰からかなんて数パターン。
 紅乃木か。
 母親か。
 類沢、か。
『話がある』
「……アカ」
 俺はすぐに指定された場所に向かった。
 最も、それは別れたあの公園だったのだが。
「アカ!」
 ベンチの背もたれに座っている紅乃木は、あの日から変わったのかよくわからない。
 クルリとこちらに首を回す。
「久しぶり。みーずーき」
 明るい。
 不自然なくらい明るい紅乃木。
 制服ではなく、真っ黒のジャケットと紫のパンツ。
 朱髪が際立つ色合い。
「アカ……何日休んでんだよ!」
「二日くらい?」
 やっぱり明るい。
 なんだ。
 この嫌な感じ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...