どこまでも玩具

片桐瑠衣

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放たれた憎悪

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 食い下がる彼に仁野は叫び返した。
「あの保健教師が同性愛者だって言ってんの!」
 空気が止まる。
 何もかもが固まっている。
 金原は目を見開いたまま。
 俺は靴を取り出したまま。
 周りの生徒は怪訝そうに二人を見つめたままに。
 頭の中はグツグツ新たな疑念をごちゃ混ぜに煮詰めてる。
 まさか。

 ……仁野にバラしやがった?

 いや、すぐに俺は否定する。
 だったら金原に対しても何か云われたはずだ。
 コレクションのように扱う類沢なら、自分の手駒の数など喜んで喋るだろうから。
「ほら! ほら、嗤いなさいよ!……嘘つきだって……言えばいい…」
 金原は呆然として仁野を見下ろす。
 それからそっと彼女の手を握る。
 肩を震わせる仁野に何か囁くと、二人はこっちに向かってきた。
 何も知らない素振りで立ち去ろうとしたが、金原の視線が突き刺さる。
「瑞希、二人きりで話すから」
 帰れ。
 耳を閉じて。
 そういうことだ。
 俺は応えずに玄関を出た。
 つまり、金原は紅乃木よりも元カノが大事ってことだ。
 どこかで期待していた。
 否定するんじゃないかって。
 何言ってんだよ。
 有紗って。
 否定……すんじゃないかって。
 バラす気かよ。
 オレは信じるよって。
 自分のことは言えないだろうな。
 実は瑞希……が……って
 俺は校門に寄りかかった。
 何も、何も今日じゃなくたって。
 携帯を見る。
 着信一件。
 誰からかなんて数パターン。
 紅乃木か。
 母親か。
 類沢、か。
『話がある』
「……アカ」
 俺はすぐに指定された場所に向かった。
 最も、それは別れたあの公園だったのだが。
「アカ!」
 ベンチの背もたれに座っている紅乃木は、あの日から変わったのかよくわからない。
 クルリとこちらに首を回す。
「久しぶり。みーずーき」
 明るい。
 不自然なくらい明るい紅乃木。
 制服ではなく、真っ黒のジャケットと紫のパンツ。
 朱髪が際立つ色合い。
「アカ……何日休んでんだよ!」
「二日くらい?」
 やっぱり明るい。
 なんだ。
 この嫌な感じ。
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