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放たれた憎悪
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しおりを挟む「おはよー」
「瑞希、アカ見てないか?」
「え?」
荷物を置くと同時に金原が言った。
「まだ休んでんのかな……」
「そうなのかな」
俺は寒気を感じつつ相づちを打った。
紅乃木の最後の姿を思い出して。
カシン。
ナイフが弾かれ現れる音が蘇る。
「家に行ってみるか」
「そうだな」
金原はそこで言葉を区切り、俺の耳元に顔を近づける。
「……瑞希は大丈夫か」
ビクリ。
自分の背中が恨めしいくらい素直に反応してしまう。
あれから二日。
類沢からは校外で呼び出しを受けた。
―今から、駅前に来なさい―
携帯を見て頭が痛くなった。
多分気を失っているうちに携帯の情報くらい操作したのだろう。
差出人を見て眩暈が隠せなかった。
金原まで歯牙にかけたと知り、一層彼への殺意が募る一方、その前に引きずり出されれば逆らえなくなる。
その夜を思い出して戦慄する。
見たこともないホテルに連れて行かれると、そういう類なのか、男二人連れというのを店員は全く気にもせずに鍵を渡した。
エレベーターではお互い無言だった。
しかし、緊張してるのは俺だけで、類沢はせせら笑うように壁にもたれていた。
また部屋の悪趣味なこと。
入った途端甘すぎる匂いが脳をくらませた。
流石に逃げれない状況だと思い知ってからは震えが止まらなかった。
学校じゃない。
誰かにバレることもない。
時間を気にすることもない。
そんな空気が満ちていた。
写真一つの為に、たかがそれのために黙ってついてきた自分を憎んだ。
類沢が反応を楽しんでるのもわかったから、余計に辛かった。
―悔しい?―
ベッドに投げ飛ばして、彼は意地悪く尋ねる。
俺は後ずさりながら、精一杯睨みつけた。
それ以外に、すべき抵抗も見つからなかったから。
類沢の手が伸びてきて、服を掴む。
「瑞希って!」
ハッと現実に戻される。
金原が厳しい表情で顔を覗き込んでいる。
「……ワリ」
「お前は悪くねぇよ」
情けなくなって乾いた笑いが零れた。
俺は、いつまで奴に好き勝手されるんだろうな。
―刺せば効くよね―
紅乃木の言葉が耳を掠め消える。
彼は今、どこで何を企んでいるんだろうか。
「授業始まんぞ」
隣の席の日比谷が忠告して、二人は別れた。
一限は数学。
担当は篠田。
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