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枯らされた友情
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しおりを挟む六時五十分。
まだ連絡は来ない。
ひょっとしてもう帰ったのだろうか。
あり得る。
金原は元々こまめに連絡するタイプじゃない。
家に帰ってからメールすれば良いと思ってるかもしれない。
紅乃木は自嘲気味に笑って首を振る。
あり得ない。
今回は問題が問題だ。
金原が瑞希を軽んじる筈がない。
携帯を開く。
すぐにメールが一件来た。
金原かと思えば、瑞希だった。
『今日はありがとう。明日からちゃんと学校行けるから』
短いし、絵文字もない。
しかし思いは伝わった。
右手だけで素早く返信を打つ。
『わかった。迎えに行くから、金原と一緒に』
送信完了まで画面を見つめる。
類沢雅。
離退任式で見た時、父に雰囲気が似ていて不快だった。
容姿とかじゃない。
空気だ。
自分のことを道具としか見ていない父と同じ空気。
放つ本人は涼しい顔して、こちらだけが怯えてる。
紅乃木は手すりにもたれた。
父が消えて一年。
まだ彼の亡霊に怯えてる。
―ほら、こっちに来なさい―
歯を噛み締める。
もうあいつに捕まることはない。
髪だって変えた。
街中で会っても気づかれない。
―綺麗だ……―
紅乃木は手すりを強く握り締めた。
七時だ。
約束の時間。
念の為携帯を見るが、連絡はない。
紅乃木はポケットに手を突っ込んで屋上の扉に向かった。
軋む階段を降り、保健室に辿り着く。
『入室禁止―不在』
電気も消えている。
紅乃木は暫くうろうろして、玄関に足を向ける。
靴を出そうとした時、あることに気づいた。
金原の靴がある。
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