どこまでも玩具

片桐瑠衣

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枯らされた友情

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 口火を切ったのはアカだ。
「放課後六時にね。七時になっても連絡来なきゃ向かうから」
 二人は同時にフェンスから離れる。
 キィ。
「……ただ、瑞希への行為を止めさせれば良いんだよな」
「……うん」
 アカは、胸に渦巻く不安を口に出さずにぎこちない笑みを浮かべた。


 カリカリ。
 夕日がカーテンに溶け込む逢魔が時。
 類沢は書類を整理していた。
 カリカリ……。
「類沢センセ」
 その手が止まる。
「……やぁ、どうかしたの?」
 オレはドアを閉める。
 類沢の目が少しだけ鋭く光った。
 近くのソファに乱雑に鞄を投げ、彼の机の前に立つ。
「怪我でもした?」
 何にも疾しいことの無い表情。
 瑞希を犯して、そんな態度で何故いられるんだ。
「オレじゃねえんすよ」
 パラッ。
 手元の資料を捲る。
「……あぁ、金原圭吾君ね。まだ名前を覚えて無くてさ」
「じゃあ、宮内瑞希を知ってますか」
 一瞬の沈黙。
 冷や汗が首筋を流れる。
 こんなに暑いのに。
 いつの間にか、オレは緊張していた。
「……保健委員だからね」
 その眼も嘘は吐いてない。
 どうする。
 下手すれば、やられる。
 真っ直ぐ詰め寄るべきか。
 遠回しに追い詰めるべきか。
「で? その親友の金原は何しに来たの?」
 ゾワリ。
 類沢がペンを置いた。
「なんで……親友って」
 カタン。
 相手も立ち上がる。
 座ってるときは気付かなかった、その存在感の大きさに圧倒される。
 身長は百八十を超える程度だろうか。
 薄く化粧をしているのか、白い肌が薄暗い保健室に浮かび上がる。
 白すぎる白衣。
「呼んでたから」
「あ?」
 声が震える。
 机を回って類沢が近づく。
 オレは一歩下がった。
「ずっと……金原助けてって呼んでたから」
 頭が真っ白になる。
 気づけば拳を振り上げていた。
「てっめえ!!」
 だが、容易く受け止められる。
 ツンと消毒の臭いがした。
「……教師を殴るなんて問題児だね」
 ゾワ。
「離せ」
 甘い香り。
 瑞希もこれを嗅いだのだろうか。
 六時のチャイムが鳴る。
 オレは我に返って類沢を払いのけた。
 微笑みながら見下ろす相手に、寒気が収まらない。
「優しいね、圭吾は」
 親しげに名前を呼ぶ。
「瑞希の為に来たんだろ」
「知っててその余裕かよ」
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