どこまでも玩具

片桐瑠衣

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荒らされた日常

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「こんなもの使われて大丈夫なの? なぁ、瑞希」
「……」 
 俯くしかない。
「……絶対殺す。腕へし折って爪剥いで、首絞めて殺す。類沢と篠田だったな」
 去ろうとする金原の肩に縋る。
「瑞希?」
 今にも見境なく人を殴り飛ばしそうな金原は、荒い息を静めて俺を見る。
 止める理由が解らないように。
 俺だって衝動任せだ。
「……金原までさ、襲われたらどうすんだよ」
 声が震える。
 さっきまでの時間など思い出したくもない。
 行為が終われば服を着せられ、何事も無かった様に振る舞う二人の前で泣くこともできない。
 金原とアカが入ってきた時も、助けを叫びたかったが、類沢の圧力がそれを留めた。
「みぃずき、優しいね」
 いつの間にか、トイレの入り口にアカが立っていた。
「でも、俺らだって無力じゃないよ」
 静かに、言い聞かせる口調。
 アカらしいな。
「殺すまではいかなくても、みぃずきにした仕打ちの代償は払わせてやれる。このままになんてしない」
 また目が熱くなる。
 右手で握り締めたバイブに更に力をかける。潰してしまう位。
「瑞希はどうしたいの?」
 いつもの穏やかな金原が訊く。
「俺は……」
―体罰だからさ―
―瑞希、可哀相だね―
 類沢の言葉が脳を煮えたぎらせる。
 口には篠田のものの感覚がまだ残っている。
「俺は……」
 誰か、助けて、許して。
 ずっとそう願ってた。
 でも誰も来なくて。
 金原とアカがじっと言葉を待っている。
 喉がヒリヒリする。
 何とか絞り出したい。
 今の思いを。
 なのに。
 脳裏に類沢の差し出した携帯の画面が過ぎる。
―あぁ……金原や紅乃木にバラされたい?―
 言えない。
 言ったらあの自分を知られる。
 言えない。
「言えよ」
 金原が肩を掴む。
「聞くよ」
 アカも反対の肩に手を添える。
 二人が目の前にいる。
 恥ずかしいじゃんか。
「……止めさせて欲しい」
 思いが堰を切って流れる。
「もう嫌だ……止めたい!」

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