どこまでも玩具

片桐瑠衣

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荒らされた日常

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 チャイムが鳴る。
 朝のホームルームが終わった。
「なぁ、アカ。瑞希帰ってきてないよな?」
 金原は彼の机に寄りかかる。
 頬杖をついていたアカがふっと体を起こす。
「……心配だよな」
「探しに行かね?」
「あと五分でか?」
 時計を見ると、数分で始業だ。
 だが、なにが問題だろうか。
「みぃずき……行くか」
 アカが囁いて立ち上がった。

 廊下に出ると、喧騒の真っ只中に放り出された気分になる。
 受験生と言えど、休み時間には生徒の雑談で満たされる。
「職員室かな」
 二人は一階の南校舎に向かった。
 冷房の効いた職員室に入り、篠田の机を見るが、本人はいない。
 担当表を確認すると、篠田は三限まで授業が入っていなかった。
「他には……反省室とか」
 アカが嫌な顔をして呟く。
 昔タバコがバレて入ったことがあるらしいが、余程恐ろしかったのか一度も話してくれない。
 金原は苦笑いして目的地を地下に変える。
 そもそも学校において地下室がある自体異様だ。
 いくら反省の為とは言え、体罰もいいところだ。
 女生徒の間では、処女が奪われるどうだのと怖いことを話していた。
 コツコツと音を立てて階段を降りる。
 真っ暗だ。
 物音一つしない。
 空気が喉を塞ぐように重く、二人は口を押さえた。
 ゆっくり奥に進む。
 隔離病棟のような真っ白な壁が嫌に暗闇に光る。
 一番奥の扉に耳をつけるが、何も聞こえない。
 ここでも無いらしい。
 二度と入る機会が無いことを祈って、二人はそこを後にした。

「今朝さ、瑞希おかしかったんだ」
「どんな?」
 ひとまず中庭に落ち着き、ベンチに座った。
 既に二限が始まり、廊下を歩く人影は見えない。
「なんつうか……顔色悪くてさ。保健室連れてこうとしたら」
 金原は宙を見てハッとする。
「どした?」
 アカはその視線を追うが、特に変わったものはない。
「……オレ、馬鹿だ。アカ、今すぐ保健室向かうぞ!」
「はあ?」
 金原は逸る気持ちを抑えてアカに説明しようとする。
「つまり、あれだけ嫌がる保健室で、その理由となることが行われてるに違いないって?」
「そう」
「どこの担任が生徒を保健室に強制連行なんざ……する」
 アカも青ざめて金原を見上げる。
「……まさか」
「そのまさかを確かめに行こうって言ってるんだ」
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