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ダレン外伝 祖国 エピローグ
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~ 7年後 ~
ミアのつわりは出産間近まで続いたため、祖国の俺達の家で子供を産んだ。
元気な男の子だ。
名前はデーヴィト。
元男爵が残した箱の中の手紙に、男なら『デーヴィト』(意味は最愛)女なら『エイミー』(意味は愛された)と書いてあった。
ミアと同じピンクゴールドのさらさらヘアーで、愛くるしい顔をしている。
今年で六歳になった。
素直な良い子だ。
ミアの出産後、俺達は祖国を出た。
兄さん達や両親に『領地に帰ってこい』と再三言われたが、冒険者として生きていきたいと伝えた。
ミア誘拐事件?後に、家族で腹を割って話すことができた。
両親としては決して俺を疎んでいたわけでも、どうでも良いと考えていたわけでもないと言われた。
母上の教育方針が、兄達を武芸ではなく文学が秀でた人間にしようと教育していたそうだ。かなりのスパルタだったらしい。
末っ子の俺はのびのび育ってほしいと思って、あえて何も強要しなかったと言われた。
俺は何も期待されていない、必要のない人間だと思って生きてきた事を伝えると、両親は涙を流しながら謝ってきた。
正直……複雑な気持ちだ。
そうだったのか~。と笑って受け流すには、重ねた時間が多すぎる。許せないのかと聞かれたら、今はまだ許せないと答えてしまう。
でも、心のどこかで……気持ちを整理しようと足掻いているのは確かだ。
時間が欲しい……。
とりあえず、連絡を取り合うことから始めている。
祖国を出て、俺はザビートのいる村に移り住んだ。ミアを連れてきたときは驚かれたが、歓迎された。
ヤックル村はとても暖かい村だ。
子供が夜泣きした次の日は、決まって誰が来て昼間、子供の面倒を見てくれた。はじめは意地を張っていたミアも、村人達の
「一人で頑張らなくても大丈夫。辛いときは辛いって言っていいんだ。誰かに子供を任せても、誰もあんたを責めない。子供は宝物さ。みんなで守り、育てるものだよ」
と言う励ましの言葉で、肩の力が抜けたのか余裕を持つことが出来たようだ。
そうそう、ミアは冒険者ギルドの受付嬢になった。それなりに難しい試験らしいが、少し勉強したらすぐに合格した。
『バカな女』と侮っていたが……。
本当に、単純に、教養が足りなかっただけらしい。スポンジが水を吸収するように、教えた知識を吸収していく。
最近はよく笑うようになった。
仕事も楽しいらしく、同僚の女子職員と仲良くやっているそうだ。
中には言い寄ってくる男もいるらしいが、既婚者で子供もいると伝えているらしい。
俺達の関係は、愛はないが『夫婦』だ。それは変わらない。
だが、デーヴィトの父親ではないと公表している。デーヴィトは『ミアの死別した元夫との子供』と言うことにしてある。
俺はミアと再婚した男という設定だ。
デーヴィトを出産する前にミアと話し合った結果だ。
『父親になる』と俺が言っても、ミアは『あんたは一番助けて欲しい時に逃げる男よ。無駄に期待したくないし、子供にも期待させたくない。義理の父親、が、ちょうどいいのよ。実際そうなんだし、そういうことにして』
悪態をついているが、彼女の配慮を感じさせた。『他人の子供を自分の子供のように愛する』それは並大抵の事じゃない。『逃げてる男』と蔑みながら『逃げて良い』と言ってるようだった。
まぁ、産まれたデーヴィトは、とにかく可愛い。人懐っこいし、俺の後を追いかけて「パパ」と笑いかけられると、心臓を鷲掴みにされる。
「大人になったら、パパみたいな冒険者になりたい!世界中を旅するのが楽しそう!」
こんな言葉を言われると、嬉しすぎてギュウギュウ抱き締めてしまう。
俺は『自由の絆』というパーティーのリーダーをやっている。気の良い仲間達とダンジョン攻略や人助けなど、幅広く活動している。
それなりに知られるようになったが、まだまだ精進しなければならないと思っている。
なぜならーーー。
「ただいま」
「パパ!お帰りなさい!」
家のドアを開けると、デーヴィトが駆け寄ってきた。
「今回のクエストはどうだったの?いっぱいお話してよ!」
「あぁ、すごい話がたくさんあるぞ」
「やった~!」
デーヴィトに誇れる自分になりたいからだ。
自分がしてきた愚かな行為は、決して許される事じゃない。
償いたい。
でも、償いたい人に直接償うことは出来ない。
だから、たくさんの人を助けようと思う。
間接的にでも、彼女に償えるように……。
fin
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
~ あとがき ~
最後まで読んで頂き、ありがとうございました!
皆様の温かいコメントや、しおりを拝見する度に励まされ、最後まで書くことが出来ました。
本当にありがとうございました!
次回作も楽しんで頂ければ幸いです。
ミアのつわりは出産間近まで続いたため、祖国の俺達の家で子供を産んだ。
元気な男の子だ。
名前はデーヴィト。
元男爵が残した箱の中の手紙に、男なら『デーヴィト』(意味は最愛)女なら『エイミー』(意味は愛された)と書いてあった。
ミアと同じピンクゴールドのさらさらヘアーで、愛くるしい顔をしている。
今年で六歳になった。
素直な良い子だ。
ミアの出産後、俺達は祖国を出た。
兄さん達や両親に『領地に帰ってこい』と再三言われたが、冒険者として生きていきたいと伝えた。
ミア誘拐事件?後に、家族で腹を割って話すことができた。
両親としては決して俺を疎んでいたわけでも、どうでも良いと考えていたわけでもないと言われた。
母上の教育方針が、兄達を武芸ではなく文学が秀でた人間にしようと教育していたそうだ。かなりのスパルタだったらしい。
末っ子の俺はのびのび育ってほしいと思って、あえて何も強要しなかったと言われた。
俺は何も期待されていない、必要のない人間だと思って生きてきた事を伝えると、両親は涙を流しながら謝ってきた。
正直……複雑な気持ちだ。
そうだったのか~。と笑って受け流すには、重ねた時間が多すぎる。許せないのかと聞かれたら、今はまだ許せないと答えてしまう。
でも、心のどこかで……気持ちを整理しようと足掻いているのは確かだ。
時間が欲しい……。
とりあえず、連絡を取り合うことから始めている。
祖国を出て、俺はザビートのいる村に移り住んだ。ミアを連れてきたときは驚かれたが、歓迎された。
ヤックル村はとても暖かい村だ。
子供が夜泣きした次の日は、決まって誰が来て昼間、子供の面倒を見てくれた。はじめは意地を張っていたミアも、村人達の
「一人で頑張らなくても大丈夫。辛いときは辛いって言っていいんだ。誰かに子供を任せても、誰もあんたを責めない。子供は宝物さ。みんなで守り、育てるものだよ」
と言う励ましの言葉で、肩の力が抜けたのか余裕を持つことが出来たようだ。
そうそう、ミアは冒険者ギルドの受付嬢になった。それなりに難しい試験らしいが、少し勉強したらすぐに合格した。
『バカな女』と侮っていたが……。
本当に、単純に、教養が足りなかっただけらしい。スポンジが水を吸収するように、教えた知識を吸収していく。
最近はよく笑うようになった。
仕事も楽しいらしく、同僚の女子職員と仲良くやっているそうだ。
中には言い寄ってくる男もいるらしいが、既婚者で子供もいると伝えているらしい。
俺達の関係は、愛はないが『夫婦』だ。それは変わらない。
だが、デーヴィトの父親ではないと公表している。デーヴィトは『ミアの死別した元夫との子供』と言うことにしてある。
俺はミアと再婚した男という設定だ。
デーヴィトを出産する前にミアと話し合った結果だ。
『父親になる』と俺が言っても、ミアは『あんたは一番助けて欲しい時に逃げる男よ。無駄に期待したくないし、子供にも期待させたくない。義理の父親、が、ちょうどいいのよ。実際そうなんだし、そういうことにして』
悪態をついているが、彼女の配慮を感じさせた。『他人の子供を自分の子供のように愛する』それは並大抵の事じゃない。『逃げてる男』と蔑みながら『逃げて良い』と言ってるようだった。
まぁ、産まれたデーヴィトは、とにかく可愛い。人懐っこいし、俺の後を追いかけて「パパ」と笑いかけられると、心臓を鷲掴みにされる。
「大人になったら、パパみたいな冒険者になりたい!世界中を旅するのが楽しそう!」
こんな言葉を言われると、嬉しすぎてギュウギュウ抱き締めてしまう。
俺は『自由の絆』というパーティーのリーダーをやっている。気の良い仲間達とダンジョン攻略や人助けなど、幅広く活動している。
それなりに知られるようになったが、まだまだ精進しなければならないと思っている。
なぜならーーー。
「ただいま」
「パパ!お帰りなさい!」
家のドアを開けると、デーヴィトが駆け寄ってきた。
「今回のクエストはどうだったの?いっぱいお話してよ!」
「あぁ、すごい話がたくさんあるぞ」
「やった~!」
デーヴィトに誇れる自分になりたいからだ。
自分がしてきた愚かな行為は、決して許される事じゃない。
償いたい。
でも、償いたい人に直接償うことは出来ない。
だから、たくさんの人を助けようと思う。
間接的にでも、彼女に償えるように……。
fin
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
~ あとがき ~
最後まで読んで頂き、ありがとうございました!
皆様の温かいコメントや、しおりを拝見する度に励まされ、最後まで書くことが出来ました。
本当にありがとうございました!
次回作も楽しんで頂ければ幸いです。
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