デブだから婚約破棄?!上等だ、お前なんかこっちから願い下げだ!!

ともどーも

文字の大きさ
上 下
13 / 37

13話 再度の婚約破棄?!

しおりを挟む
~ クローヴィア視点 ~

「ネル、本当にごめんなさい」
「え?……え?!」
「ネルに……他に好きな人が居たなんて……知らなかったのよ。すぐに婚約破棄しましょ。大丈夫よ。その好きな方に、これは契約婚約だったと伝えるわ。それでも信じてもらえないなら、陛下や王妃様にご助力いただいて……。あっ、惚れ薬は完成しているの?非人道的だけど、まずネルの気持ちを」
「ちょっと待って!!」
 
 軽いパニック状態で話していた私の口を、ネルが手で塞いできた。

「婚約破棄はしない」
 
 何故?
 わからなくて、頭をかしげてしまう。

「もう……鈍いな……」
 ボソボソ言っているので聞こえない。

 ゆっくりとネルが手を離した。
「ヴィアは……婚約破棄したいの?誰か好きなヤツがいるの?」
「好きな人?はいないけど、ネルの事が大切だから……私のせいでネルが我慢するのは、嫌よ……」

 なんだろう…。
 胸がキューとなる。

「大切って……どんな意味で?」
「?ん~……幸せを願っちゃう感じ、かな?」
「なんで疑問系なんだよ……。たく」

 ネルがおもむろに薬品棚から、小さな小瓶を取り出した。

「惚れ薬って、ヴィアはどう思う?」
「う~ん……、一種の魅了魔法みたいなもの?なのかな。でも魅了魔法は常に魔力を放出しなくちゃいけないし、魔力がなくなると解けちゃうから燃費が悪い魔法よね。広範囲魔法だから、特定の一人を惚れさせるのは」
「違う違う!魔法分析してほしいんじゃなくて……その……私が……ヴィアに使ったら……幻滅する?」
「?あぁ!治験したいってこと?別にいいよ。ネルの役に立てるなら。そうよね、好きな子に新薬は試せないものね」

 ネルが肩を落としてため息をついた。

「私の事、嫌い?」
「?好きよ」

 ネルが小瓶を見せて来た。
 スッゴい睨まれているようだ。

「この惚れ薬、自分の唾液と相手の唾液を混ぜて飲ませる必要があるんだ。だから、口移しで相手に飲ませるのが効率的だ」
「なるほど。唾液で自分と相手の情報を混ぜて、特定の状況下を作って作用するのね。うん、それなら一人に限定した魅了魔法の」

 一人情報を整理していると

「いいの?」
 とネルに声をかけられた。
 治験して良いかと聞いているのだろう。
 ネルの為なら断らないわ。
「いいわよ」

「……ヴィアは……誰とでもキス……できるの」
「?治験でしょ」
「じゃ、私以外の研究員、男と、治験の為とはいえ、口移しの液体を、飲めるのか……」

 治験に協力すると言っているのに、なんで不機嫌になるのかしら。
 でも、ネル以外にされる……。

 考えただけで虫酸が走ったわ!

「ネルだったら出来ると思う。他はちょっと……考えたけど無理ね。ほら、鳥肌立っちゃった」
「それって……」

 ネルがおもむろに近づいてきた。

「私の事が好きなのか?」
「うん、好きよ」
「それは男として?」
「え?う~ん……」

 悩んでいると、ネルの顔が近づいてきた。
 近づくと、髪の隙間から瞳が見えるんだ。
 なんて、思わず観察してしまった。

 唇が軽く当たる。

「こう言う時は、『目をつぶる』と恋愛小説には書いてあったぞ。色気ゼロの鈍感女」
「なっ!」

 また軽く唇を当ててくる。

「私の事、男として好き?」
「……嫌い。他に好きな人が居るのに……女なら誰でも良いとか、最低でしょ」

 ネルが盛大なため息をついて、私にもたれ掛かってきた。
 重いんですけど……。

「愚鈍、鈍感、研究オタク……。はぁ~……。あのな~、私が、好きでもない女にキスするヤツに見えるのか?」
「実際にしてるじゃない」
「はぁ~……そうじゃなくて……。あぁ、もう!!」
 ネルが突然頭をかきむしった。その拍子に前髪が乱れて、瞳が見える。

「いいか、一回しか言わないからな!一言一句漏らさず聞けよ!いいな!わかったら返事!!」
「はいっ!」

 両肩をネルが掴んでくる。
 いつもは隠れてる瞳と目が合う。

「私が好きなのは、ヴィアだけだ!あんなクズ男と婚約する前からずっと好きだった。タイミングを見計っていたら、……出遅れて、あんな男に……。とにかく、私が好きなのはヴィアだけ。わかったか?」
 あまりの捲し立てに、ちょっと引いてしまう。
「わかったんなら、私と結婚する!いいな!返事!」
「はいっ!」
 押し負けるように返事をしてしまった。

 見つめ合っていると、笑いが込み上げてくる。

「ヴィアはどうなの?私とのキス、嫌じゃないんだろう?」
「嫌……では……なかった、わ」
 自分で考えてみて、何だか不思議な気分だ。

「じゃ、ヴィアからキスして」
「え?!」

 何を言い出すんだ、この男!

「実験だよ。鈍感女が自分の気持ちを知るまでの研究。第一アプローチとして、私からのキスは嫌じゃなかった。第二アプローチとして、ヴィアからキスをしてみて、その感情を観察してみて。ほら」

 ほらっ、じゃないんだけど……。
 やらないと終わらせないって意地悪な顔してる。いや、あれは私が困ってる姿を楽しんでる顔だ。魔法省で意味がわからない絡み方をして来た時の顔ね。

「目を……瞑って」

 恋愛小説では上目遣いで懇願すると、男心に何かしらの干渉が起こると書いてあった。
 どうかしら?
 ん、ネルの顔が少し赤いけど、険しい顔になった。ちょっと面白い。

 顔を近づけると、険しい顔のまま、ゆっくりと目を瞑っていく。
 あと少しで唇が触れる瞬間。

「ぷっ……」
 私が吹き出してしまった。
 ダメだ、堪えられなかった。
 顔を背けてしまう。

「ヴィ~ア~……」
 低~いネルの声がした。
 本能的に距離を取ろうとしたら、一足先に腰を抱えられてしまった。
 顎をとられ、顔を上げさせられた瞬間、ネルが唇を押し当ててきた。いや、何かヌルッとした。
 え?!唇を舐められた?!
 唇を頑なに閉じる私の背中を、ネルが触れるか触れないかの距離で撫で上げた。

「ひぁ!」
 こそばゆくて、思わず口を開けると、ネルの舌が入ってきた。
 止めてほしくて胸を叩くが、びくともしない。

 どうやって呼吸すればいいの?
 苦しい……。

 口の中でネルの舌が動いているが、よくわからない。酸素が足らなくて、頭がボーっとする。

「キスの時は……鼻で、息を……しろよ」
 ネルも息が上がっている。

「私をからかった罰。結婚したら、覚えてろよ」
 いつにもまして妖艶な微笑みに、背筋が凍りました。
 
しおりを挟む
感想 171

あなたにおすすめの小説

もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」 婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。 もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。 ……え? いまさら何ですか? 殿下。 そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね? もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。 だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。 これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。 ※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。    他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。

婚約破棄、果てにはパーティー追放まで!? 事故死を望まれた私は、第2王子に『聖女』の力を見出され性悪女にざまぁします

アトハ
恋愛
「マリアンヌ公爵令嬢! これ以上貴様の悪行を見過ごすことはできん! 我が剣と誇りにかけて、貴様を断罪する!」  王子から突如突き付けられたのは、身に覚えのない罪状、そして婚約破棄。  更にはモンスターの蔓延る危険な森の中で、私ことマリアンヌはパーティーメンバーを追放されることとなりました。  このまま私がモンスターに襲われて"事故死"すれば、想い人と一緒になれる……という、何とも身勝手かつ非常識な理由で。    パーティーメンバーを追放された私は、森の中で鍋をかき混ぜるマイペースな変人と出会います。  どうにも彼は、私と殿下の様子に詳しいようで。  というかまさか第二王子じゃないですか?  なんでこんなところで、パーティーも組まずにのんびり鍋を食べてるんですかね!?  そして私は、聖女の力なんて持っていないですから。人違いですから!  ※ 他の小説サイト様にも投稿しています

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

身に覚えがないのに断罪されるつもりはありません

おこめ
恋愛
シャーロット・ノックスは卒業記念パーティーで婚約者のエリオットに婚約破棄を言い渡される。 ゲームの世界に転生した悪役令嬢が婚約破棄後の断罪を回避するお話です。 さらっとハッピーエンド。 ぬるい設定なので生温かい目でお願いします。

稀代の悪女として処刑されたはずの私は、なぜか幼女になって公爵様に溺愛されています

水谷繭
ファンタジー
グレースは皆に悪女と罵られながら処刑された。しかし、確かに死んだはずが目を覚ますと森の中だった。その上、なぜか元の姿とは似ても似つかない幼女の姿になっている。 森を彷徨っていたグレースは、公爵様に見つかりお屋敷に引き取られることに。初めは戸惑っていたグレースだが、都合がいいので、かわい子ぶって公爵家の力を利用することに決める。 公爵様にシャーリーと名付けられ、溺愛されながら過ごすグレース。そんなある日、前世で自分を陥れたシスターと出くわす。公爵様に好意を持っているそのシスターは、シャーリーを世話するという口実で公爵に近づこうとする。シスターの目的を察したグレースは、彼女に復讐することを思いつき……。 ◇画像はGirly Drop様からお借りしました ◆エール送ってくれた方ありがとうございます!

婚約破棄された悪役令嬢が実は本物の聖女でした。

ゆうゆう
恋愛
貴様とは婚約破棄だ! 追放され馬車で国外れの修道院に送られるはずが…

護国の聖女、婚約破棄の上、国外追放される。〜もう護らなくていいんですね〜

ココちゃん
恋愛
平民出身と蔑まれつつも、聖女として10年間一人で護国の大結界を維持してきたジルヴァラは、学園の卒業式で、冤罪を理由に第一王子に婚約を破棄され、国外追放されてしまう。 護国の大結界は、聖女が結界の外に出た瞬間、消滅してしまうけれど、王子の新しい婚約者さんが次の聖女だっていうし大丈夫だよね。 がんばれ。 …テンプレ聖女モノです。

無能だと言われ続けた聖女は、自らを封印することにしました

天宮有
恋愛
国を守る聖女として城に住んでいた私フィーレは、元平民ということもあり蔑まれていた。 伝統だから城に置いているだけだと、国が平和になったことで国王や王子は私の存在が不愉快らしい。 無能だと何度も言われ続けて……私は本当に不必要なのではないかと思い始める。 そうだ――自らを封印することで、数年ぐらい眠ろう。 無能と蔑まれ、不必要と言われた私は私を封印すると、国に異変が起きようとしていた。

処理中です...