18 / 45
十七話 駆け込み教会の秘密(後編)
しおりを挟む
「支援する理由……ですか?」
「えぇ」
確かにおかしい気がする。
王家が支援するなら、貴族街の大聖堂ではないだろうか。後ろ暗い話だが、大聖堂の支持を獲られれば、王の権力維持に大きく貢献するはずだ。
王妃様が支援している……。
女性を助けるため?
「駆け込み教会だから……」
「フフッ。表向きはね。女性や子供を守りたいって善良な気持ちで支援を受けているわ。でも本当は、秘密の脱出ルートの出口だからよ」
「「えっ!?」」
背筋に悪寒が走った。
そっ……そんな重要事項を……知って……。
「安心して。危害を加えるつもりはないわ。この件は王妃様も了承しているの。ソフィアさんには驚かされっぱなしよ。彼女の師匠、リーガル公爵も切れ者だけど、ソフィアさんも凄腕ね。この教会の秘密を見抜いて、王妃様に交渉を持ちかけるなんて、本当、豪胆」
おっ、王妃様に?!
どういう経緯でそうなったの……。
怖くて想像できないわ。本当、ソフィア、凄すぎる。
「これから二人には王城に行ってもらうわ。ただ、二人の命を守るために、秘密ルートを通っているときは、目隠しと耳栓。それから睡眠薬を飲んで寝てもらうわ」
「王城?!」
「そう。王城で親子鑑定を受けてもらうの。研究所の所長がその場で鑑定してくれるから安心して。その後、リリーちゃんは王城の一室で審議会まで身を隠してもらうわ」
えっ!?
王城で身を隠す?
「あのっ!」
混乱しながら、私は声を上げた。
「どういうことですか……」
エドワードと離婚するだけなのに、王城で身を隠す必要があるの?
そもそも、彼の嫌がらせか酷いので、教会から出られないはずじゃないの?
「だだの離婚騒動なのに、王城で匿ってもらうのはおかしいです。しかも、王家が秘匿にする脱出ルートを使うなんて、怪しすぎます。何か裏取引なり、面倒事に巻き込まれているのでは?」
「……そうね。これは単純な離婚騒動ではなくなってしまったわ」
説明が欲しくて、私はじっとシスター・ハンナの目を見た。彼女も、じっと私の目を見ている。
「……はぁ……。伯爵とアリアちゃんとの親子鑑定書が不正作成された事は聞いてる?」
「はい」
「親子鑑定は王家が総力を挙げて取り組んでいる大切な事業よ。それに泥が塗られたの。国王様も王妃様もカンカンよ。犯人を見つけ出して厳罰に処すつもりみたい」
ソフィアも『公的鑑定書偽造罪』で、犯人は貴族であっても禁固刑が適用される重罪だと言っていた。
「犯人の立場になって考えてみて。伯爵が行っている婚姻無効申請の手続きなら、文官を買収すれば簡単に受理は可能。でも、異議申立をされたら?」
「っ!!」
審議会が執り行われる。
そこで各々の証拠を開示し、互いの主張を競いあう。その時、親子鑑定書の事を調べられたらまずいことになるわ。
ソフィアが『私の同意書は偽造されたもの』と言っていたから、同意書の偽造が証明されてしまうと、親子鑑定を執り行った検査員が不正をしたと露見することになる。
そうなれば、王宮騎士団が調査に乗り出し、検査員に犯行を依頼した犯人に行き着くのは時間の問題だ。
では、犯人はどうするか。
審議会に私を参加させないよう、拉致監禁するだろう。いや、そんな面倒なことをせず、人目の無いところに連れ込んで――。
「っっ!!」
背筋が凍る。
殺される……。
死体さえ見つからなければ、生きていようが死んでいようが結果は変わらない。審議会から逃げたと思われて婚姻無効が成立する。
犯人が親子鑑定書を不正作成したことは明るみに出ない。
「大丈夫です。俺が必ず守ります」
オーウェンさんは私を安心させようと、膝をつき、目線を合わせて告げた。
力強い声に安心する。
「王城なら守りも堅いし、王妃様の御好意で王宮騎士団から一人護衛を出してくださるわ。カイン・フィート。この上ない護衛でしょ?」
「えっ、カインが?」
オーウェンさんが驚いた声を出した。
カイン・フィート……。
そんなに有名な方なのか……し……ら……。
フィート……。
フィート!?
『ソフィア・フィートです。平民街で探偵兼弁護士をしています』
ソフィアの家族だ!
「こちらから護衛を出す代わりに、オーウェン君にお願いがあるの。ソフィアさんからは貴方の判断に任せると言われてるわ」
「何でしょう」
「親子鑑定が済んだら、貴方だけこちらに戻ってきて欲しいの。リリーちゃんがこの教会に居ると偽装するために。そして、審議会が開かれる日、ここから馬車に乗って王城に行ってもらうわ」
シスター・ハンナの真剣な表情に、オーウェンさんが息を飲むのがわかった。
「……わかりました。リリーシアさん。カインは俺が最も信頼する男です。腕っぷしも申し分ありません。貴女やお嬢様が危険になることはないです」
オーウェンさんがそこまで言う人なら問題無いだろうし、ソフィアの家族なのだから安心出来るわ。
でも、何か……胸騒ぎがする。
私が教会に居ると偽装する。
それによって、私とアリアの安全は保たれる。
あれ?
じゃぁ、教会はどうなるの?
審議会の日、教会から王城に馬車で移動するオーウェンさんは……。
「おっ、オーウェンさん!」
「大丈夫です」
襲撃されるのをわかって、馬車に乗ると言うことだ。いくら腕がたつとしても、多勢に無勢では危険だ。それをわかった上で『大丈夫』と、彼は笑って答えている。
「っ……」
危険だ。
そんな事しないでいい。
自分の安全を考えて。
……そう言いたいのに、その言葉は喉に詰まって出てこない。
無力感、卑劣な自己愛、罪悪感。
彼を危険に晒す、迷惑をかけてしまう。そう思うのに、我が身可愛さで『止めて』と言えない卑劣な自分が憎らしい。
そして、現状を打破する力も、知恵も、人脈も持ち合わせていない無力感に、憤りもある。
「ごめんなさい……」
何の意味もない謝罪しか出来なかった。
「リリーシアさん」
オーウェンさんが優しく話しかけてきた。
「どうか謝らないでくれ。俺が好きで行うことで、貴女が気に病むことはないんだ。むしろ頼ってもらう方が嬉しい。俺達は運命共同体のような状況じゃないか。貴女の無実が証明されれば、俺の濡れ衣もはれる。その為に証拠集めとして囮になり、敵を捕縛する必要があるんだ」
「オーウェンさん……」
「心配してくれてありがとう。大丈夫。俺は貴女の護衛騎士だ。主人を残して死ねない」
彼はまっすぐ答えた。
迷いのない目だ。
あぁ……もう。
失礼な事をしてしまったわ。
心配に思っても、顔に出してはダメだった。だってそれでは、彼の強さを、誇りを信用してないと同義だからだ。
「俺を信じて」
「はい。貴方を信じます!」
「えぇ」
確かにおかしい気がする。
王家が支援するなら、貴族街の大聖堂ではないだろうか。後ろ暗い話だが、大聖堂の支持を獲られれば、王の権力維持に大きく貢献するはずだ。
王妃様が支援している……。
女性を助けるため?
「駆け込み教会だから……」
「フフッ。表向きはね。女性や子供を守りたいって善良な気持ちで支援を受けているわ。でも本当は、秘密の脱出ルートの出口だからよ」
「「えっ!?」」
背筋に悪寒が走った。
そっ……そんな重要事項を……知って……。
「安心して。危害を加えるつもりはないわ。この件は王妃様も了承しているの。ソフィアさんには驚かされっぱなしよ。彼女の師匠、リーガル公爵も切れ者だけど、ソフィアさんも凄腕ね。この教会の秘密を見抜いて、王妃様に交渉を持ちかけるなんて、本当、豪胆」
おっ、王妃様に?!
どういう経緯でそうなったの……。
怖くて想像できないわ。本当、ソフィア、凄すぎる。
「これから二人には王城に行ってもらうわ。ただ、二人の命を守るために、秘密ルートを通っているときは、目隠しと耳栓。それから睡眠薬を飲んで寝てもらうわ」
「王城?!」
「そう。王城で親子鑑定を受けてもらうの。研究所の所長がその場で鑑定してくれるから安心して。その後、リリーちゃんは王城の一室で審議会まで身を隠してもらうわ」
えっ!?
王城で身を隠す?
「あのっ!」
混乱しながら、私は声を上げた。
「どういうことですか……」
エドワードと離婚するだけなのに、王城で身を隠す必要があるの?
そもそも、彼の嫌がらせか酷いので、教会から出られないはずじゃないの?
「だだの離婚騒動なのに、王城で匿ってもらうのはおかしいです。しかも、王家が秘匿にする脱出ルートを使うなんて、怪しすぎます。何か裏取引なり、面倒事に巻き込まれているのでは?」
「……そうね。これは単純な離婚騒動ではなくなってしまったわ」
説明が欲しくて、私はじっとシスター・ハンナの目を見た。彼女も、じっと私の目を見ている。
「……はぁ……。伯爵とアリアちゃんとの親子鑑定書が不正作成された事は聞いてる?」
「はい」
「親子鑑定は王家が総力を挙げて取り組んでいる大切な事業よ。それに泥が塗られたの。国王様も王妃様もカンカンよ。犯人を見つけ出して厳罰に処すつもりみたい」
ソフィアも『公的鑑定書偽造罪』で、犯人は貴族であっても禁固刑が適用される重罪だと言っていた。
「犯人の立場になって考えてみて。伯爵が行っている婚姻無効申請の手続きなら、文官を買収すれば簡単に受理は可能。でも、異議申立をされたら?」
「っ!!」
審議会が執り行われる。
そこで各々の証拠を開示し、互いの主張を競いあう。その時、親子鑑定書の事を調べられたらまずいことになるわ。
ソフィアが『私の同意書は偽造されたもの』と言っていたから、同意書の偽造が証明されてしまうと、親子鑑定を執り行った検査員が不正をしたと露見することになる。
そうなれば、王宮騎士団が調査に乗り出し、検査員に犯行を依頼した犯人に行き着くのは時間の問題だ。
では、犯人はどうするか。
審議会に私を参加させないよう、拉致監禁するだろう。いや、そんな面倒なことをせず、人目の無いところに連れ込んで――。
「っっ!!」
背筋が凍る。
殺される……。
死体さえ見つからなければ、生きていようが死んでいようが結果は変わらない。審議会から逃げたと思われて婚姻無効が成立する。
犯人が親子鑑定書を不正作成したことは明るみに出ない。
「大丈夫です。俺が必ず守ります」
オーウェンさんは私を安心させようと、膝をつき、目線を合わせて告げた。
力強い声に安心する。
「王城なら守りも堅いし、王妃様の御好意で王宮騎士団から一人護衛を出してくださるわ。カイン・フィート。この上ない護衛でしょ?」
「えっ、カインが?」
オーウェンさんが驚いた声を出した。
カイン・フィート……。
そんなに有名な方なのか……し……ら……。
フィート……。
フィート!?
『ソフィア・フィートです。平民街で探偵兼弁護士をしています』
ソフィアの家族だ!
「こちらから護衛を出す代わりに、オーウェン君にお願いがあるの。ソフィアさんからは貴方の判断に任せると言われてるわ」
「何でしょう」
「親子鑑定が済んだら、貴方だけこちらに戻ってきて欲しいの。リリーちゃんがこの教会に居ると偽装するために。そして、審議会が開かれる日、ここから馬車に乗って王城に行ってもらうわ」
シスター・ハンナの真剣な表情に、オーウェンさんが息を飲むのがわかった。
「……わかりました。リリーシアさん。カインは俺が最も信頼する男です。腕っぷしも申し分ありません。貴女やお嬢様が危険になることはないです」
オーウェンさんがそこまで言う人なら問題無いだろうし、ソフィアの家族なのだから安心出来るわ。
でも、何か……胸騒ぎがする。
私が教会に居ると偽装する。
それによって、私とアリアの安全は保たれる。
あれ?
じゃぁ、教会はどうなるの?
審議会の日、教会から王城に馬車で移動するオーウェンさんは……。
「おっ、オーウェンさん!」
「大丈夫です」
襲撃されるのをわかって、馬車に乗ると言うことだ。いくら腕がたつとしても、多勢に無勢では危険だ。それをわかった上で『大丈夫』と、彼は笑って答えている。
「っ……」
危険だ。
そんな事しないでいい。
自分の安全を考えて。
……そう言いたいのに、その言葉は喉に詰まって出てこない。
無力感、卑劣な自己愛、罪悪感。
彼を危険に晒す、迷惑をかけてしまう。そう思うのに、我が身可愛さで『止めて』と言えない卑劣な自分が憎らしい。
そして、現状を打破する力も、知恵も、人脈も持ち合わせていない無力感に、憤りもある。
「ごめんなさい……」
何の意味もない謝罪しか出来なかった。
「リリーシアさん」
オーウェンさんが優しく話しかけてきた。
「どうか謝らないでくれ。俺が好きで行うことで、貴女が気に病むことはないんだ。むしろ頼ってもらう方が嬉しい。俺達は運命共同体のような状況じゃないか。貴女の無実が証明されれば、俺の濡れ衣もはれる。その為に証拠集めとして囮になり、敵を捕縛する必要があるんだ」
「オーウェンさん……」
「心配してくれてありがとう。大丈夫。俺は貴女の護衛騎士だ。主人を残して死ねない」
彼はまっすぐ答えた。
迷いのない目だ。
あぁ……もう。
失礼な事をしてしまったわ。
心配に思っても、顔に出してはダメだった。だってそれでは、彼の強さを、誇りを信用してないと同義だからだ。
「俺を信じて」
「はい。貴方を信じます!」
2,705
お気に入りに追加
5,425
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約を解消してくれないと、毒を飲んで死ぬ? どうぞご自由に
柚木ゆず
恋愛
※7月25日、本編完結いたしました。後日、補完編と番外編の投稿を予定しております。
伯爵令嬢ソフィアの幼馴染である、ソフィアの婚約者イーサンと伯爵令嬢アヴリーヌ。二人はソフィアに内緒で恋仲となっており、最愛の人と結婚できるように今の関係を解消したいと考えていました。
ですがこの婚約は少々特殊な意味を持つものとなっており、解消するにはソフィアの協力が必要不可欠。ソフィアが関係の解消を快諾し、幼馴染三人で両家の当主に訴えなければ実現できないものでした。
そしてそんなソフィアは『家の都合』を優先するため、素直に力を貸してくれはしないと考えていました。
そこで二人は毒を用意し、一緒になれないなら飲んで死ぬとソフィアに宣言。大切な幼馴染が死ぬのは嫌だから、必ず言うことを聞く――。と二人はほくそ笑んでいましたが、そんなイーサンとアヴリーヌに返ってきたのは予想外の言葉でした。
「そう。どうぞご自由に」
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
5年ぶりに故郷に戻ったら、かつて私を捨てた元婚約者が助けを求めてきました
柚木ゆず
恋愛
かつての婚約者によって全てを失い、最愛の人に救われてから5年。わたしは今は亡きおばあ様に結婚の報告をするため、久しぶりに故郷に戻りました。
お墓にご挨拶をして、おばあ様との思い出の場所を巡って。懐かしい時間を過ごしていた、そんな時でした。突然わたしの前に大嫌いな元婚約者が現れ、わたしだと気付かずこのようなことを叫んだのでした。
「お願いしますっ、たすけてください!!」
※体調不良の影響でお返事を行えないため、日曜日ごろ(24日ごろ)まで感想欄を閉じさせていただいております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約者と妹が運命的な恋をしたそうなので、お望み通り2人で過ごせるように別れることにしました
柚木ゆず
恋愛
※4月3日、本編完結いたしました。4月5日(恐らく夕方ごろ)より、番外編の投稿を始めさせていただきます。
「ヴィクトリア。君との婚約を白紙にしたい」
「おねぇちゃん。実はオスカーさんの運命の人だった、妹のメリッサです……っ」
私の婚約者オスカーは真に愛すべき人を見つけたそうなので、妹のメリッサと結婚できるように婚約を解消してあげることにしました。
そうして2人は呆れる私の前でイチャイチャしたあと、同棲を宣言。幸せな毎日になると喜びながら、仲良く去っていきました。
でも――。そんな毎日になるとは、思わない。
2人はとある理由で、いずれ婚約を解消することになる。
私は破局を確信しながら、元婚約者と妹が乗る馬車を眺めたのでした。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
お姉様。ずっと隠していたことをお伝えしますね ~私は不幸ではなく幸せですよ~
柚木ゆず
恋愛
今日は私が、ラファオール伯爵家に嫁ぐ日。ついにハーオット子爵邸を出られる時が訪れましたので、これまで隠していたことをお伝えします。
お姉様たちは私を苦しめるために、私が苦手にしていたクロード様と政略結婚をさせましたよね?
ですがそれは大きな間違いで、私はずっとクロード様のことが――
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約者様。現在社交界で広まっている噂について、大事なお話があります
柚木ゆず
恋愛
婚約者様へ。
昨夜参加したリーベニア侯爵家主催の夜会で、私に関するとある噂が広まりつつあると知りました。
そちらについて、とても大事なお話がありますので――。これから伺いますね?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約者マウントを取ってくる幼馴染の話をしぶしぶ聞いていたら、あることに気が付いてしまいました
柚木ゆず
恋愛
「ベルティーユ、こうして会うのは3年ぶりかしらっ。ねえ、聞いてくださいまし! わたくし一昨日、隣国の次期侯爵様と婚約しましたのっ!」
久しぶりにお屋敷にやって来た、幼馴染の子爵令嬢レリア。彼女は婚約者を自慢をするためにわざわざ来て、私も婚約をしていると知ったら更に酷いことになってしまう。
自分の婚約者の方がお金持ちだから偉いだとか、自分のエンゲージリングの方が高価だとか。外で口にしてしまえば大問題になる発言を平気で行い、私は幼馴染だから我慢をして聞いていた。
――でも――。そうしていたら、あることに気が付いた。
レリアの婚約者様一家が経営されているという、ルナレーズ商会。そちらって、確か――
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
10年前にわたしを陥れた元家族が、わたしだと気付かずに泣き付いてきました
柚木ゆず
恋愛
今から10年前――わたしが12歳の頃、子爵令嬢のルナだった頃のことです。わたしは双子の姉イヴェットが犯した罪を背負わされ、ルナの名を捨てて隣国にある農園で第二の人生を送ることになりました。
わたしを迎え入れてくれた農園の人達は、優しく温かい人ばかり。わたしは新しい家族や大切な人に囲まれて10年間を楽しく過ごし、現在は副園長として充実した毎日を送っていました。
ですが――。そんなわたしの前に突然、かつて父、母、双子の姉だった人が現れたのです。
「「「お願い致します! どうか、こちらで働かせてください!」」」
元家族たちはわたしに気付いておらず、やけに必死になって『住み込みで働かせて欲しい』と言っています。
貴族だった人達が護衛もつけずに、隣の国でこんなことをしているだなんて。
なにがあったのでしょうか……?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
お久しぶりですね、元婚約者様。わたしを捨てて幸せになれましたか?
柚木ゆず
恋愛
こんなことがあるなんて、予想外でした。
わたしが伯爵令嬢ミント・ロヴィックという名前と立場を失う原因となった、8年前の婚約破棄。当時わたしを裏切った人と、偶然出会いました。
元婚約者のレオナルド様。貴方様は『お前がいると不幸になる』と言い出し、理不尽な形でわたしとの関係を絶ちましたよね?
あのあと。貴方様はわたしを捨てて、幸せになれましたか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる