16 / 22
15話 襲撃2
しおりを挟む
~ リューベック視点 ~
「エリーゼ…?」
床に手をつき、弱々しくエリーゼがこちらを見ている。
驚きで一瞬力が緩んだ。
ミリアリアはこの瞬間を逃さず、力を込めた為、俺の左肩にナイフが突き刺さった。
「ぐっ!」
ミリアリアの口が不気味に半月を描いた。
「きゃーーーー!!」
エリーゼの悲鳴が木霊する。
「キャハハハハ!これよ、これ!これが見たかったのよ」
狂ったように笑うミリアリア。
俺は痛みに耐えながら、ミリアリアの腕を掴みつつ、体の回転を利用して、相手を反対側の壁に打ち付けた。
「ぎゃ!」
背中を打ち付けて、床に倒れ込むミリアリア。
ミリアリアが離れた瞬間、ナイフも抜け落ちて、さらに激痛を感じた。
しかし、そんな事に構ってはいられない。
落ちたナイフを拾い、手早く足の縄も切って、エリーゼのもとにむかい、跪いた。
「逃げるぞ!」
「あっ、あっ、旦那様。肩が、そんな」
錯乱状態のエリーゼ。
無理もない。
目を覚ましたら、突然人が刺される現場を目撃したのだから、混乱してもおかしくない。
くそ、左腕が上がらないからエリーゼを抱えられない。
どうする。
「エリーゼ、ここは危険だ。逃げるぞ、さぁ、立つんだ!」
座り込むエリーゼを立たせようとするが、彼女はガタガタ震えて立てない。
そうこうしている間に、煙が部屋に入ってきた。
火の手が近づいてきている。
早く脱出しなければ!
「ヒッ!」
急にエリーゼが引きつった。
次の瞬間、背中に激痛が走る。
「逃がさないわよ」
ミリアリアだ。
火かき棒を手にしている。
くそ、まだ邪魔するのか!
再度火かき棒が振り上げられた。
背中の痛みで動きが取れない。
俺はエリーゼを抱き込み、攻撃から守った。
火かき棒の引っかけ部分が何度も背中に突き刺さり、肉を抉るが、エリーゼだけは守ってみせる。
「それ!それ!」
狂った笑いのミリアリア。
「やめて!やめて!」
俺の腕の中でもがき、涙するエリーゼ。
ガシャーン!
窓ガラスが割れる音がした。
「旦那様!」
警備隊長の声だ。
窓ガラスを突き破って入ってきたようだ。
「邪魔しないで!」
ミリアリアは火かき棒で応戦するが、あっけなく警備隊に拘束された。
「離しなさい!汚い手で私に触るんじゃないわよ!」
わめき散らすミリアリアを横目に、エリーゼを確認する。
「怪我は…ないか?」
「私より旦那様が、旦那様が!」
あぁ、エリーゼが泣いている。
こんなオレのために泣いている。
「旦那様、火の手が近づいてます!お早く!」
護衛隊長とエリーゼの肩を借りて、俺たちはテラスから脱出したのだった。
屋敷は赤く燃え上がり、あと少し遅ければ脱出は難しかったかもしれない。
ゴウゴウと燃える屋敷を、俺はエリーゼと共に呆然とみていた。
そして、次第に意識が遠退いて行く。
立っていられず、その場に倒れ込んでしまった。情けない。
「旦那様!」
エリーゼの悲痛な声を聞いた。
頭の片隅で『名前で呼ぶことを禁じていたんだった』と『リューベック様』と呼ばれない事に、今さらだが悲しさが胸をよぎった。
自業自得だと思う反面、彼女の瞳に映れたことに喜ぶ自分が滑稽だった。
「エリーゼ、本当にすまなかった。全ては俺の誤解だった」
声がかすれてしまう。
届いているだろうか…。
「今、医師を呼んでいますから、しゃべらないで下さい」
紫の瞳から絶え間なく涙がこぼれ落ちてしまう。
その涙をぬぐってあげたいのに、腕が上がらない。なんで、肝心な時にいうことを聞いてくれないのだろう。
泣かないでくれエリーゼ。
「孤児院にいたのは、リゼさんは君だった…。俺は愚かだ…。初恋の人を…虐げて…しまった」
呼吸がしづらい…。
目が霞む。
「もう、しゃべらないで…」
「償い…たい。俺の全てを君に捧げる…」
あと少し、あと少しだけ…。
「愛してる…」
俺の意識はそこで途切れた。
「エリーゼ…?」
床に手をつき、弱々しくエリーゼがこちらを見ている。
驚きで一瞬力が緩んだ。
ミリアリアはこの瞬間を逃さず、力を込めた為、俺の左肩にナイフが突き刺さった。
「ぐっ!」
ミリアリアの口が不気味に半月を描いた。
「きゃーーーー!!」
エリーゼの悲鳴が木霊する。
「キャハハハハ!これよ、これ!これが見たかったのよ」
狂ったように笑うミリアリア。
俺は痛みに耐えながら、ミリアリアの腕を掴みつつ、体の回転を利用して、相手を反対側の壁に打ち付けた。
「ぎゃ!」
背中を打ち付けて、床に倒れ込むミリアリア。
ミリアリアが離れた瞬間、ナイフも抜け落ちて、さらに激痛を感じた。
しかし、そんな事に構ってはいられない。
落ちたナイフを拾い、手早く足の縄も切って、エリーゼのもとにむかい、跪いた。
「逃げるぞ!」
「あっ、あっ、旦那様。肩が、そんな」
錯乱状態のエリーゼ。
無理もない。
目を覚ましたら、突然人が刺される現場を目撃したのだから、混乱してもおかしくない。
くそ、左腕が上がらないからエリーゼを抱えられない。
どうする。
「エリーゼ、ここは危険だ。逃げるぞ、さぁ、立つんだ!」
座り込むエリーゼを立たせようとするが、彼女はガタガタ震えて立てない。
そうこうしている間に、煙が部屋に入ってきた。
火の手が近づいてきている。
早く脱出しなければ!
「ヒッ!」
急にエリーゼが引きつった。
次の瞬間、背中に激痛が走る。
「逃がさないわよ」
ミリアリアだ。
火かき棒を手にしている。
くそ、まだ邪魔するのか!
再度火かき棒が振り上げられた。
背中の痛みで動きが取れない。
俺はエリーゼを抱き込み、攻撃から守った。
火かき棒の引っかけ部分が何度も背中に突き刺さり、肉を抉るが、エリーゼだけは守ってみせる。
「それ!それ!」
狂った笑いのミリアリア。
「やめて!やめて!」
俺の腕の中でもがき、涙するエリーゼ。
ガシャーン!
窓ガラスが割れる音がした。
「旦那様!」
警備隊長の声だ。
窓ガラスを突き破って入ってきたようだ。
「邪魔しないで!」
ミリアリアは火かき棒で応戦するが、あっけなく警備隊に拘束された。
「離しなさい!汚い手で私に触るんじゃないわよ!」
わめき散らすミリアリアを横目に、エリーゼを確認する。
「怪我は…ないか?」
「私より旦那様が、旦那様が!」
あぁ、エリーゼが泣いている。
こんなオレのために泣いている。
「旦那様、火の手が近づいてます!お早く!」
護衛隊長とエリーゼの肩を借りて、俺たちはテラスから脱出したのだった。
屋敷は赤く燃え上がり、あと少し遅ければ脱出は難しかったかもしれない。
ゴウゴウと燃える屋敷を、俺はエリーゼと共に呆然とみていた。
そして、次第に意識が遠退いて行く。
立っていられず、その場に倒れ込んでしまった。情けない。
「旦那様!」
エリーゼの悲痛な声を聞いた。
頭の片隅で『名前で呼ぶことを禁じていたんだった』と『リューベック様』と呼ばれない事に、今さらだが悲しさが胸をよぎった。
自業自得だと思う反面、彼女の瞳に映れたことに喜ぶ自分が滑稽だった。
「エリーゼ、本当にすまなかった。全ては俺の誤解だった」
声がかすれてしまう。
届いているだろうか…。
「今、医師を呼んでいますから、しゃべらないで下さい」
紫の瞳から絶え間なく涙がこぼれ落ちてしまう。
その涙をぬぐってあげたいのに、腕が上がらない。なんで、肝心な時にいうことを聞いてくれないのだろう。
泣かないでくれエリーゼ。
「孤児院にいたのは、リゼさんは君だった…。俺は愚かだ…。初恋の人を…虐げて…しまった」
呼吸がしづらい…。
目が霞む。
「もう、しゃべらないで…」
「償い…たい。俺の全てを君に捧げる…」
あと少し、あと少しだけ…。
「愛してる…」
俺の意識はそこで途切れた。
169
お気に入りに追加
5,279
あなたにおすすめの小説
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)
【完結】365日後の花言葉
Ringo
恋愛
許せなかった。
幼い頃からの婚約者でもあり、誰よりも大好きで愛していたあなただからこそ。
あなたの裏切りを知った翌朝、私の元に届いたのはゼラニウムの花束。
“ごめんなさい”
言い訳もせず、拒絶し続ける私の元に通い続けるあなたの愛情を、私はもう一度信じてもいいの?
※勢いよく本編完結しまして、番外編ではイチャイチャするふたりのその後をお届けします。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
自称地味っ子公爵令嬢は婚約を破棄して欲しい?
バナナマヨネーズ
恋愛
アメジシスト王国の王太子であるカウレスの婚約者の座は長い間空席だった。
カウレスは、それはそれは麗しい美青年で婚約者が決まらないことが不思議でならないほどだ。
そんな、麗しの王太子の婚約者に、何故か自称地味でメガネなソフィエラが選ばれてしまった。
ソフィエラは、麗しの王太子の側に居るのは相応しくないと我慢していたが、とうとう我慢の限界に達していた。
意を決して、ソフィエラはカウレスに言った。
「お願いですから、わたしとの婚約を破棄して下さい!!」
意外にもカウレスはあっさりそれを受け入れた。しかし、これがソフィエラにとっての甘く苦しい地獄の始まりだったのだ。
そして、カウレスはある驚くべき条件を出したのだ。
これは、自称地味っ子な公爵令嬢が二度の恋に落ちるまでの物語。
全10話
※世界観ですが、「妹に全てを奪われた令嬢は第二の人生を満喫することにしました。」「元の世界に戻るなんて聞いてない!」「貧乏男爵令息(仮)は、お金のために自身を売ることにしました。」と同じ国が舞台です。
※時間軸は、元の世界に~より5年ほど前となっております。
※小説家になろう様にも掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
母が病気で亡くなり父と継母と義姉に虐げられる。幼馴染の王子に溺愛され結婚相手に選ばれたら家族の態度が変わった。
window
恋愛
最愛の母モニカかが病気で生涯を終える。娘の公爵令嬢アイシャは母との約束を守り、あたたかい思いやりの心を持つ子に育った。
そんな中、父ジェラールが再婚する。継母のバーバラは美しい顔をしていますが性格は悪く、娘のルージュも見た目は可愛いですが性格はひどいものでした。
バーバラと義姉は意地のわるそうな薄笑いを浮かべて、アイシャを虐げるようになる。肉親の父も助けてくれなくて実子のアイシャに冷たい視線を向け始める。
逆に継母の連れ子には甘い顔を見せて溺愛ぶりは常軌を逸していた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
優柔不断な公爵子息の後悔
有川カナデ
恋愛
フレッグ国では、第一王女のアクセリナと第一王子のヴィルフェルムが次期国王となるべく日々切磋琢磨している。アクセリナににはエドヴァルドという婚約者がおり、互いに想い合う仲だった。「あなたに相応しい男になりたい」――彼の口癖である。アクセリナはそんな彼を信じ続けていたが、ある日聖女と彼がただならぬ仲であるとの噂を聞いてしまった。彼を信じ続けたいが、生まれる疑心は彼女の心を傷つける。そしてエドヴァルドから告げられた言葉に、疑心は確信に変わって……。
いつも通りのご都合主義ゆるんゆるん設定。やかましいフランクな喋り方の王子とかが出てきます。受け取り方によってはバッドエンドかもしれません。
後味悪かったら申し訳ないです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
愛する旦那様が妻(わたし)の嫁ぎ先を探しています。でも、離縁なんてしてあげません。
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
【清い関係のまま結婚して十年……彼は私を別の男へと引き渡す】
幼い頃、大国の国王へ献上品として連れて来られリゼット。だが余りに幼く扱いに困った国王は末の弟のクロヴィスに下賜した。その為、王弟クロヴィスと結婚をする事になったリゼット。歳の差が9歳とあり、旦那のクロヴィスとは夫婦と言うよりは歳の離れた仲の良い兄妹の様に過ごして来た。
そんな中、結婚から10年が経ちリゼットが15歳という結婚適齢期に差し掛かると、クロヴィスはリゼットの嫁ぎ先を探し始めた。すると社交界は、その噂で持ちきりとなり必然的にリゼットの耳にも入る事となった。噂を聞いたリゼットはショックを受ける。
クロヴィスはリゼットの幸せの為だと話すが、リゼットは大好きなクロヴィスと離れたくなくて……。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
次は絶対に幸せになって見せます!
Karamimi
恋愛
侯爵令嬢マリアは、熾烈な王妃争いを勝ち抜き、大好きな王太子、ヒューゴと結婚したものの、結婚後6年間、一度も会いに来てはくれなかった。孤独に胸が張り裂けそうになるマリア。
“もしもう一度人生をやり直すことが出来たら、今度は私だけを愛してくれる人と結ばれたい…”
そう願いながら眠りについたのだった。
翌日、目が覚めると懐かしい侯爵家の自分の部屋が目に飛び込んできた。どうやら14歳のデビュータントの日に戻った様だ。
もう二度とあんな孤独で寂しい思いをしない様に、絶対にヒューゴ様には近づかない。そして、素敵な殿方を見つけて、今度こそ幸せになる!
そう決意したマリアだったが、なぜかヒューゴに気に入られてしまい…
恋愛に不器用な男女のすれ違い?ラブストーリーです。
「好き」の距離
饕餮
恋愛
ずっと貴方に片思いしていた。ただ単に笑ってほしかっただけなのに……。
伯爵令嬢と公爵子息の、勘違いとすれ違い(微妙にすれ違ってない)の恋のお話。
以前、某サイトに載せていたものを大幅に改稿・加筆したお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる