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7話 ミリアリア
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~ ミリアリア視点 ~
何で私だけ…。
みんなやってることなのに…。
たかが平民の命を一つ二つ刈り取ったことが、なんだって言うのよ。
特別な私の為に、平民の汚いお金を使ってあげたのよ。
特別な私が、声をかけ、話してあげたのよ。有り難いと思いなさいよ。
平民のくせに。
平民の分際で。
高貴な私になんて事を!
どうしてくれよう…。
リューベック・ハイルディー。
あいつのせいで、サーシス様との結婚は白紙にされてしまった。
侯爵家は私を見捨てた。
でもね、私を見捨てても、お腹の子は見捨てられないでしょ。
花嫁修業なんて古くさいしきたり、私には不要なのよ。サーシス様の子供さえ産めば、侯爵家への義務は果たせるもの。
私は婚約段階で、その義務を果たしたのよ!
サーシス様待っててね。
「誰か、医者を呼んでくださらない。あと、侯爵様に連絡もお願い。世継ぎのことで話があると伝えて」
裁判所にある、貴族専用の牢屋から、看守に伝えた。
ここを出たあかつきには、リューベック・ハイルディー、貴方が復讐される側になるのよ
×××
いくら待っても、侯爵様やサーシス様は現れなかった。
「ねぇ、貴方。ちゃんと侯爵様に伝えたの?何故何も返事が来ないのかしら」
男の看守に話しかけたが、ちらっとこちらを見て、また机に向かい書類を書き始める。
不躾な男ね。
「ねえ!」
男は鬱陶しそうにこちらを見た。
なんて不遜な男なのかしら!
侯爵様が来たら罰してもらうんだから!
「侯爵様は来ねーよ。罪人の世迷い言をワザワザ上に上げるなと、俺が怒られちまっただろうが。わかったら大人しくしてろ」
「世迷い言ですって!なんて愚かな!私のお腹には侯爵家の跡取りが居るのよ!」
はぁ~と、男が呆れたように息をはいた。
「侯爵家に確認をとったら、妊娠するような行為はしていないと連絡があった。また、裁判直前に身体検査をし、妊娠の可能性はないと医師の診断書もある」
「嘘よ!私はサーシス様と愛し合っていたわ。彼と何度も夜を共にしたもの!」
鉄格子に掴まり、看守に訴えた。
嘘をつくなんて酷いわ。
「バカだな~。あんた本当に貴族なのか?」
「無礼な!」
「結婚前に子供が出来るなんて、貴族にとっては醜聞、恥だぜ。もしもその行為をする場合は、避妊薬を使うものだ」
「避妊薬?そんなもの使ってなかったわ!」
「最近は良いやつが出回ってるぜ。男用も女用もある。大方、お前みたいなバカ女は、行為後の紅茶にでも入れられていたんだろ」
行為後の紅茶…。
覚えがある。
行為が終わったあと、サーシス様は必ず紅茶を入れてくれた。使用人ではなく、彼自ら入れてくれる紅茶は、私への愛だと、そう思っていた。
そうよ!必ず最後まで飲まされたわ。
残そうとしたとき
「俺の愛は要らなかったかい?」
なんて言うから、
「貴方の愛は全て私のものよ」
と、残さず飲み干していた。
あれは、避妊薬を確実に飲ませて、妊娠しないようにしていた?
じゃぁ、私のお腹には…。
なにもない…。
「ははっ」
思わず笑いが込み上げた。
何がおかしいか、私にもわからない。
お父様もお母様も、すでに北の牢獄に向かった。私の拠り所はサーシス様だけだった。このお腹の子が居れば、上手くいくと、そう思っていた。
私には何もない。
ふと、妹のエリーゼを思い出した。
私とは考え方が正反対で、使用人達は愚妹をこぞって慕っていた。
平民に媚を売り、笑ってるあの子が嫌いだった。
ドレスも宝石も何も持ってないのに、幸せそうに笑うあの子が許せなかった。
私たち貴族は選ばれた人種なのよ。
平民と仲良くするなんて、血の冒涜だと、何度も体に制裁を加えたのに、頑なに辞めなかった。
仕舞いには孤児院にまで行って、汚い孤児の服を洗ったり、掃除したりと、本当に腹立たしい子だったわ。
だから、平民からお金を巻き上げ、要らなくなった男は処分した。
ハロルド?あいつも始めはエリーゼにまとわりつく羽虫だったのよ。だから声をかけたの。
「リゼは重い病気なのに無理して動いてるの」
「新薬が隣国で開発されているらしいの。取りに行くにもお金が…」
「高名なお医者様に見せてあげたいのにお金が…」
バカみたいにお金を渡して来たわ。
「自分は母親に何もしてあげられなかったから、リゼさんの為になるなら喜んでお金を渡すよ」
なんて言うから、余計にムカついた。
でも、最後は
「見守るしか出来ないなんて辛いよね。僕も気持ちがわかるよ。僕が君を支えるから、一人で悲しまないで」
私の方に傾倒してきたの。
エリーゼから奪った。それだけで気分が高揚したわ。
でも、そろそろエリーゼが病にかかっているという嘘がバレそうだったから、心中と見せかけて殺したのよ。
あの子への当て付けと、遊ぶ金欲しさに犯行に及んだのよ。
私がこうなったのはあの子のせいよ!
エリーゼ、私たち家族はもう何もかも失くしたのだから、貴女も家族なら、一緒に地獄に行きましょう。
「フフフフ。ラウトゥーリオの丘で会いましょう」
先程の笑いとは違う、ほの暗い笑い声が牢に木霊した。
何で私だけ…。
みんなやってることなのに…。
たかが平民の命を一つ二つ刈り取ったことが、なんだって言うのよ。
特別な私の為に、平民の汚いお金を使ってあげたのよ。
特別な私が、声をかけ、話してあげたのよ。有り難いと思いなさいよ。
平民のくせに。
平民の分際で。
高貴な私になんて事を!
どうしてくれよう…。
リューベック・ハイルディー。
あいつのせいで、サーシス様との結婚は白紙にされてしまった。
侯爵家は私を見捨てた。
でもね、私を見捨てても、お腹の子は見捨てられないでしょ。
花嫁修業なんて古くさいしきたり、私には不要なのよ。サーシス様の子供さえ産めば、侯爵家への義務は果たせるもの。
私は婚約段階で、その義務を果たしたのよ!
サーシス様待っててね。
「誰か、医者を呼んでくださらない。あと、侯爵様に連絡もお願い。世継ぎのことで話があると伝えて」
裁判所にある、貴族専用の牢屋から、看守に伝えた。
ここを出たあかつきには、リューベック・ハイルディー、貴方が復讐される側になるのよ
×××
いくら待っても、侯爵様やサーシス様は現れなかった。
「ねぇ、貴方。ちゃんと侯爵様に伝えたの?何故何も返事が来ないのかしら」
男の看守に話しかけたが、ちらっとこちらを見て、また机に向かい書類を書き始める。
不躾な男ね。
「ねえ!」
男は鬱陶しそうにこちらを見た。
なんて不遜な男なのかしら!
侯爵様が来たら罰してもらうんだから!
「侯爵様は来ねーよ。罪人の世迷い言をワザワザ上に上げるなと、俺が怒られちまっただろうが。わかったら大人しくしてろ」
「世迷い言ですって!なんて愚かな!私のお腹には侯爵家の跡取りが居るのよ!」
はぁ~と、男が呆れたように息をはいた。
「侯爵家に確認をとったら、妊娠するような行為はしていないと連絡があった。また、裁判直前に身体検査をし、妊娠の可能性はないと医師の診断書もある」
「嘘よ!私はサーシス様と愛し合っていたわ。彼と何度も夜を共にしたもの!」
鉄格子に掴まり、看守に訴えた。
嘘をつくなんて酷いわ。
「バカだな~。あんた本当に貴族なのか?」
「無礼な!」
「結婚前に子供が出来るなんて、貴族にとっては醜聞、恥だぜ。もしもその行為をする場合は、避妊薬を使うものだ」
「避妊薬?そんなもの使ってなかったわ!」
「最近は良いやつが出回ってるぜ。男用も女用もある。大方、お前みたいなバカ女は、行為後の紅茶にでも入れられていたんだろ」
行為後の紅茶…。
覚えがある。
行為が終わったあと、サーシス様は必ず紅茶を入れてくれた。使用人ではなく、彼自ら入れてくれる紅茶は、私への愛だと、そう思っていた。
そうよ!必ず最後まで飲まされたわ。
残そうとしたとき
「俺の愛は要らなかったかい?」
なんて言うから、
「貴方の愛は全て私のものよ」
と、残さず飲み干していた。
あれは、避妊薬を確実に飲ませて、妊娠しないようにしていた?
じゃぁ、私のお腹には…。
なにもない…。
「ははっ」
思わず笑いが込み上げた。
何がおかしいか、私にもわからない。
お父様もお母様も、すでに北の牢獄に向かった。私の拠り所はサーシス様だけだった。このお腹の子が居れば、上手くいくと、そう思っていた。
私には何もない。
ふと、妹のエリーゼを思い出した。
私とは考え方が正反対で、使用人達は愚妹をこぞって慕っていた。
平民に媚を売り、笑ってるあの子が嫌いだった。
ドレスも宝石も何も持ってないのに、幸せそうに笑うあの子が許せなかった。
私たち貴族は選ばれた人種なのよ。
平民と仲良くするなんて、血の冒涜だと、何度も体に制裁を加えたのに、頑なに辞めなかった。
仕舞いには孤児院にまで行って、汚い孤児の服を洗ったり、掃除したりと、本当に腹立たしい子だったわ。
だから、平民からお金を巻き上げ、要らなくなった男は処分した。
ハロルド?あいつも始めはエリーゼにまとわりつく羽虫だったのよ。だから声をかけたの。
「リゼは重い病気なのに無理して動いてるの」
「新薬が隣国で開発されているらしいの。取りに行くにもお金が…」
「高名なお医者様に見せてあげたいのにお金が…」
バカみたいにお金を渡して来たわ。
「自分は母親に何もしてあげられなかったから、リゼさんの為になるなら喜んでお金を渡すよ」
なんて言うから、余計にムカついた。
でも、最後は
「見守るしか出来ないなんて辛いよね。僕も気持ちがわかるよ。僕が君を支えるから、一人で悲しまないで」
私の方に傾倒してきたの。
エリーゼから奪った。それだけで気分が高揚したわ。
でも、そろそろエリーゼが病にかかっているという嘘がバレそうだったから、心中と見せかけて殺したのよ。
あの子への当て付けと、遊ぶ金欲しさに犯行に及んだのよ。
私がこうなったのはあの子のせいよ!
エリーゼ、私たち家族はもう何もかも失くしたのだから、貴女も家族なら、一緒に地獄に行きましょう。
「フフフフ。ラウトゥーリオの丘で会いましょう」
先程の笑いとは違う、ほの暗い笑い声が牢に木霊した。
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