死ぬまでにやりたいこと~浮気夫とすれ違う愛~

ともどーも

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1巻

1-3

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「先輩、この後時間ありますか?」

 診療室に真剣な顔をしたエイダンが現れた。
 雰囲気から、宮廷医師局長様との面会の約束がとれたのだろうと思った。

「えぇ、大丈夫よ。ほら、入って」
「いえ、このまま一緒についてきてもらえますか? 急なんですが、叔父上から連絡が来て、これからなら時間を取れるそうです」

 叔父上?

「詳しくは移動しながら話します」
「わかったわ」

 迎えに来た家の馬車の御者に、遅くなるから先に帰るように伝え、エイダンが用意した馬車に乗りこんだ。


   ◇◇◇


「俺、婚外子なんです」

 馬車で移動中、エイダンは前置きもなく、突然切り出した。思わぬ内容に息を吞む。

「ネイサン・マーヴィルは知ってますよね?」

 ネイサン・マーヴィルとは、現宮廷医師局長だ。
 十年も宮廷医師局長を務めている、国を代表する凄腕医師だ。それから、愛妻家として有名だ。

「ネイサン叔父上の兄、ナサニエル・マーヴィルが俺の父です。女ったらしの最低野郎ですよ。素行が悪かったのでマーヴィル侯爵家から勘当され、市井に放逐されたんです。で、場末の飲み屋で働いていた母と関係を持って、俺が生まれました。クソ野郎はとんずら。母は逃げられた苛立ちから俺に暴力を振るっていました。五歳になる前に蒸発しましたけど」

 どうしよう……。とんでもなく重い話だ。

「餓死寸前だった俺は町に出て助けを求め、幸運にも助けてくれた人がいました。その人は俺を診療所に運び、治療費を出してくれました。その後、孤児院に身を寄せていたところ、クソな父親が死んだらしく、尻拭いで奔走していた叔父上に見つけてもらって、成人するまで養育してもらいました。ただ、俺は勘当された男の子供なので、表立って『叔父』『甥』の関係は公表できません。先輩も表立って言わないでくださいね」

 淡々としゃべっているけど、反応に困るわ!

「宮廷医師局長様との関係はわかったわ。だけど、そこまで話してくれなくてもよかったのよ?」
「? ……誤解がないようにしたかったんですが、いけませんでしたか?」
「いえ、いけないわけではないけれど……」
「あ~……、何かすみません」
「エイダンが大丈夫ならいいのよ。教えてくれてありがとう。宮廷医師局長様と会えることは、治療魔法師の夢でもあるし、とても嬉しいわ」

 宮廷医師局長様は国の最先端医療の第一人者で、医療に携わる者にとって憧れの存在だ。
 経緯はどうあれ、会えるのが楽しみだ。
 不意に視線を感じた。エイダンがじっとこちらを見ている。

「どうかした?」
「……いえ、先輩には関係ないです」
「はい?」

 プイッと顔を背けてしまった。心なしか不機嫌のように見える。
 さっきの出生のことで、機嫌を損ねてしまったのかしら……?

「ごめんなさい、何か気に障ることをしてしまったかしら?」
「いえ、先輩は何も悪くありません。俺の問題なので気にしないでください」

 淡々とした返答だが、それ以上は聞かないでくれと言っているように感じた。

「宮廷医師局長様と仲はいいの?」

 空気を変えたくて、当たり障りなさそうな話題を選んだ。

「悪くはないです。医療の話はいくら聞いても聞き足りないくらいです。叔父と言うよりは師匠のような存在ですね」

 いつも不愛想なのに、宮廷医師局長様のことを話すエイダンの表情は少し柔らかかった。

「尊敬しているのね」
「はい。ただ、オヤジギャグはよくわかりません」
「ぶっ!」

 まずい、吹き出しちゃった。

「話の間に挟んで来るのですが、どや顔されても、何が面白いのか理解できないんですよ。もっと精進が必要だと思ってしまいます」

 真面目な顔で言ってくるから、ダメだ……

「ぷ……あははははっ」
「? 何ですか、先輩」
「ごっ、ごめっ、あははははっ」

 淡々とした男にオヤジギャグを言って、真剣に意味を聞かれるなんて拷問ね。宮廷医師局長様の精神力が強いのか……ダメ。想像すると笑いが止まらない。
 久しぶりに声を出して笑った。
 エイダンは不思議そうな顔をしていたが、それもまた面白くて、なかなか笑いを抑えられなかった。


 マーヴィル侯爵家に着くと、宮廷医師局長様が自ら出迎えてくれた。
 光栄なことだが、同時に恐縮してしまう。

「よくいらっしゃった。私はネイサン・マーヴィルだ。気軽にネイサンと呼んでくれ」

 白髪混じりの黒髪に、細められた青空を思わせるブルーの瞳。気さくに握手を求められている。
 驚きと嬉しさで震えそうになりながら、握手に応える。

「ネイサン様、お会いでき、お名前で呼ぶことをお許しいただき光栄です。わたくしは第三騎士団長ルイス・ダグラスの妻、アニータ・ダグラスと申します。王都第二診療所で治療魔法師をしております」
「そうか、貴女が。とても腕がいいと聞いている」
「恐縮です」
「さっ、立ち話もなんだ。入りなさい」

 ネイサン様にエスコートされ、私は屋敷に入った。


 ネイサン様の執務室に重い空気が漂っていた。
 ネイサン様は私の透過図と検査表を鋭い目つきで見ている。
 人好きしそうな笑顔は消え、宮廷医師局長の厳しい顔をしている。

「なぜ、こんなことになるまで気が付かなかった。相当な痛みがあったはずだ」
「単なる胃炎だと思い、胃薬を常時服用していたため、発見が遅れました」
「症状はいつ頃からだ」
「痛みを感じたのは半年前くらいです。ストレスから来るものかと思っていました」
「……検査は?」

 ネイサン様は立て続けに質問をしてきた。それに答えるたびに、彼の表情は暗く厳しいものになっていく。

「そう、か……」

 彼が導き出した病が想像できて気持ちが落ちこむ。
 宮廷医師局長でも難しい反応をしていることに衝撃を受け、うつむいてしまう。

「叔父上、どうか力を貸してください。正直、自分はどこから手をつけたらいいか、わかりません。ですが、国の最先端医療に携わる叔父上なら、何か手立てをお持ちではありませんか?」

 エイダンの淡々としているが、真剣な声が耳に入った。
 しかし、私は顔を上げることができない。
 自分の症状は最悪なのだ。
 すでに内臓が癒着している。手術でどうにかなるレベルではない。

「ダグラス夫人」
「アニータとお呼びください」
「……アニータ君。この前発表された新薬の論文は読んだかな?」
「はい、現在のものより強力な痛み止めの開発に成功したそうですね」

 この前ソファーで読んでいた論文だ。

「治験に参加しないか? 費用はすべて国が持つ」

 あぁ……。そうよね。
 はじめからわかっていたことなのに、希望を持たないようにしていたのに……

「叔父上……それは……」

 ネイサン様の視線が下がった。
 希望を持ってやってきた甥に、治療する術がなく、今の医療では延命治療しかできることがないと伝えるのは辛いのだろう。

「……ネイサン様。それ以上の説明は不要です。治験の件、ありがたく参加させていただきます」

 ニッコリ微笑むと、ネイサン様の表情が一瞬苦しげに歪んだ気がしたが、すぐに人のいい微笑みを浮かべた。

「協力に感謝する。晩餐ばんさんもどうだろう、一緒に」
「光栄です」


 その後の晩餐ばんさんはとても楽しかった。
 私の前には消化吸収のいいトマトリゾットが置かれた。野菜もみじん切りにされていたので、とても食べやすく、美味しかった。
 チーズを加えるともっと美味しかっただろうが、私の体を考えてあえてチーズは省いたのだろう。

「私はね、ワインによだよ~」

 お酒が回っているのか、ネイサン様はオヤジギャグを連発するが、「弱いなら飲まないでください」と、ことごとくエイダンには通じなかった。
 噛みあわない二人が面白くて、終始笑いが絶えなかった。


 楽しくて、すっかり遅くなってしまった。
 エイダンが馬車で送ってくれることになり、ネイサン様が見送りに出てくれた。

「治験の薬は自宅に送ればいいだろうか?」

 ネイサン様に問われた。
 笑顔なのに、目は真剣だった。
 おそらく、家族に病気のことを伝えているのか探っているように感じた。

「いいえ。できれば彼を通して送っていただけると助かります」

 エイダンを見ながらそうお願いすると、ネイサン様は少し目を伏せた。

「わかった。後悔のないようにな」
「はい。お心遣い、ありがとうございます」

 ネイサン様にはわかったのだろう。
 浮気者の旦那に病気のことを知らせず、一人で死を迎える覚悟だと。
 その考えに対して「後悔のないように」と助言してくださったのだ。


 ネイサン様と笑顔で別れの挨拶をした。その後、診療所に寄ってもらい、透過図と検査表を診察室の引き出しに戻した。自宅に持ち帰りたくなかったからだ。
 馬車は夜の街道を走っている。静かな車中、夜空に浮かぶ月を見た。満月が少し欠けた形だ。
 感傷的になって、いろいろな物事と重ねてしまいそうだが、今はエイダンもいるので心を穏やかに保とうとした。

「旦那に言わないんですか?」

 前置きもなく、直球で言ってくる。エイダンらしい。

「少しは大切にしてくれるんじゃないですか?」

『英雄は色を好む』有名な話だ。
 最近彼と浮き名を流しているのは、シレーヌ・ミュラー侯爵令嬢だ。
 十五歳と若く、亜麻あま色の髪と紫の瞳が特徴的な美しい女性だ。
 ミュラー侯爵家の使用人が診療所に何度かお使いに来て、二人の逢瀬を自慢してくるのだから笑ってしまう。
『お前よりお嬢様のほうが英雄の伴侶に相応ふさわしい』と言いたいのだろうが、『既婚者に言い寄る不埒な娘だ』と公言しているのがわからないらしい。
『お嬢様によい縁談が来ればいいですね』と言ってやれば、『平凡な年増女の負け惜しみか、さっさと離婚しろ!』と、暴言を残していった。
 まったく、ミュラー侯爵家は使用人にどんな教育を施しているのか、甚だ疑問だ。
 診療所にまで彼の浮気相手達が来るので、同僚達にルイスが浮気男だと知れ渡っていた。
 病気のことを告白すれば、浮気をやめて尽くしてくれるのではないか、とエイダンは言いたいのだろう。

「言わないわ」

 言ってもみじめになるだけだ。
 二度と浮気しないと宣言されたとしても、嬉しさよりも虚しさを感じてしまうだろう。
 それに、もしも……もうじき死ぬとわかって喜ばれたら? もしも無関心だったら? 後妻候補を連れてこられたら? 死ぬ最後の一瞬を、憎悪の気持ちで迎えたくはない。

「彼を悲しませたくないし、彼に看取られたくないもの」

 愛と憎しみは紙一重ね。



   第四章 私の……


 帰ってきた屋敷は、重苦しく不穏な雰囲気を漂わせていた。
 馬車を玄関前に横付けにし、エイダンの手を借りて降りた。すると、玄関が勢いよく開かれ、中からルイスが出てきた。
 逆光で表情が見えにくいが、不機嫌だとわかる。

「遅かったじゃないか。心配した」

 声色は優しげなのに、どこかトゲがある。

「早かったのね、お帰りなさい」

 何でもないように微笑む。
 ルイスの視線がエイダンに向いた。
 手を借りたままの格好だったと気づき、そっと手を離そうとした時、エイダンが突然手を握ってきた。

「アニータ様。本日は食事にお付き合いいただき、ありがとうございました」

 いつもの彼の様子から想像できない、好青年のような明るい話し方だ。
 ルイスを挑発しているようだ。
 きっと、妻を蔑ろにしたら他の男に取られるぞと警告したいのだろう。
 だが、これはやりすぎだ。
 顔が見えづらくても、ルイスの雰囲気がピリつくのがわかる。

「えぇ、またネイサン様と会合がある時は声をかけてください。宮廷医師局長様とお話しできるなんて光栄ですから」

 エイダンに握られた手を強引に引き抜く。
 彼と少し距離を取ると、すぐ横にルイスが移動してきていた。

「アニータ、彼は?」
「ご挨拶が遅れました。私はエイダンと申します。アニータ様と同じ診療所で働く後輩です」

 二人とも笑顔だが、空気が重い。

「えぇ、とても若いのに腕がいいのよ。宮廷医師局長様とも知り合いで、今日は無理を言って会合に同席させてもらったのよ。エイダン先生、今日はありがとうね」
「そうか。妻の希望を叶えていただきありがとう。もう夜も遅い。挨拶はこの辺で失礼するよ」

 半ば強引にルイスに屋敷に引き入れられてしまった。
 エイダンの鋭い視線を感じたが、玄関のドアにさえぎられてしまった。
 後輩に失礼な態度をとったルイスのことを咎めないといけないのだが、とても口を挟むことができる雰囲気ではなかった。


 ルイスは一直線に夫婦の寝室に入った。ドアを閉め、鍵もかけてしまった。

「あの男とはどんな関係だ」

 獣が唸るような、とても低い声だ。
 今までこんな声を聞いたことはない。彼が相当怒っているのがうかがえる。

「診療所の後輩よ」
「嘘をつくな。あの男の態度はそれ以上だった。いつから付き合っていたんだ? あんな若い奴を引っ掻けて、恥ずかしくないのか⁉」

 蔑む言葉に苛立ちを覚える。

「残業とうそぶいて、あの男と遊んでいたんだな! あんな優男が好みとは知らなかったよ。安っぽいキザな口説き文句にクラッときたのか? まさか、もう肌を重ねて――」
「口を慎みなさい!」

 頭の中が煮えたぎるようだ。

「自分のことは棚にあげて、よくそんなことが言えるわね。逆に聞くけど、貴方こそ何人と関係を持っているの? 年若い騎士、十五歳の令嬢、夜会の警護とかこつけて未亡人や既婚者、貴方に憧れる美しい男性と幾多も浮き名を流しているのは知っているのよ」
「っ! 何で知って……」
「ご親切に教えてくれる人が診療所に来るのよ。いいえ、自慢しに来るのかしらね。私がその時なんて言うと思う? 『主人を慰めてくださり、ありがとうございます』よ。何度口にしたか、貴方はわからないでしょ?」

 彼の顔が面白いくらい青ざめていく。

「貴方に服を持っていった日、私が何も見なかったと思うの? 執務室の中に全裸の男性がいたのなんて丸見えよ! しかも自分がいやらしい匂いをまとっていることもわからないなんて、バカじゃない⁉」

 今までこんな激情を彼にぶつけたことはないし、彼の浮気を知っているなど言ったこともない。

「私が後輩と食事したくらい、何でもないでしょ‼」

 言い訳を口にしたいのか、彼は口をパクパクさせるだけだ。
 浮気をしたことがバレたとわかったなら、謝ったらどうなのよ。誠心誠意謝りなさいよ!
 それとも、私を侮って誤魔化ごまかせば許されると思ってるの?
 最低……。最低、最低、最低、最低!

「……離婚して」

 はじめて口にできた。
 あんなに躊躇ちゅうちょしていた言葉は、つっかえることなく、すんなりと口から吐き出せた。

「っ! 離婚はしない!」

 バカらしい。離婚を切り出されて当然でしょう。

「なぜ? そんなに遊びたいなら、私の存在は邪魔でしょ。お飾りの妻でいるのも、同情で一緒にいられるのも迷惑よ」

 ひどく冷静な自分がいる。
 声も淡々としており、他人事のように思える。

「俺には君が必要なんだ」
「お飾りの妻が必要なら、英雄に憧れる令嬢でも飾っていなさい」
「違う、君を愛しているんだ!」
「ぷっ……愛?」

 乾いた笑いが口から漏れる。

「愛してる。愛しているんだ! これは、にんっ、その……。俺が全身全霊で愛しているのはアニータだけなんだ! 君以上に大切な人なんていない。わかるだろ⁉」

 彼に肩を触られた。
 焦って弁明する姿は滑稽ね。

「わからないわ」

 心がとても凪いでいる。
 彼の顔など見たくなくて、私は床を見つめた。

「やはり一方的だったんだ……」
「え?」

 突然、彼の声色が変わった。低い。とても低い声だ。

「君は、俺を愛してなかったんだ。はじめから、他に好きな奴が……。あいつと寝たから。だから離婚を……。俺と離婚して、あいつと結婚するんだな。……許さない。お前は俺の妻だ。俺だけのものだ!」

 両肩をすごい力で掴まれた。

「いた……い……」

 痛みで顔がひきつる。
 彼と視線が合った。
 その顔は今まで見たことがないくらい、冷たく、瞳は常軌を逸している。
 いつもは美しい夕日のような瞳が、闇をまとった呪われたガーネットのように禍々しさを感じる。

「上書きしてやる」

 言うや否や、ベッドに連れていかれ、突き飛ばされた。

「あんな軟弱男との交わりはつまらなかっただろ。俺が、その体に喜びを教えてやる」

 彼は首に巻いていたスカーフをほどき、私の手首を頭の上で拘束した。
 ほの暗い瞳に、私の怯えた顔が映る。

「やめ……て」

 辛うじて声が出たが、弱々しい声はかえって彼を刺激したのか、彼の瞳は獲物を定めた獣のようにギラついた。

「手加減はなしだ。お前が誰の妻か刻み付けてやる」


   ◇◇◇


 死を覚悟するのに十分な行為だった。
 目を覚ました時は、生きていたことに安堵したほどだ。そして、隣にルイスがいなかったことに安心すると共に、寂しさに胸がきしんだことが嫌だった。
 ルイスは朝方騎士団から緊急の伝令が来たため、侍女のレベッカに「無理をさせたから、診療所は休ませるように」と告げて出ていったそうだ。
 私の体はボロボロだ。
 下半身の痛みでベッドから降りることもできないし、唇を噛んだのは覚えているが、まさか舌も噛んでいたとは……。しゃべることが困難だ。
 それから、首の付け根にルイスが噛みついた痕がある。
 キスマークを残されることはあっても、噛まれたのははじめてだった。
 ルイスと体を重ねる人は喜んで噛まれているのだろうか……。私には理解できない感覚だ。
 彼はずっと、私との行為に不満があったのだ。あんな激しい行為が彼の求めるものだったのなら、確かに私は受け入れられない。
 浮気を容認するわけではないが、彼が他の人で発散させようと考えた経緯は、わかったように思えた。


 コンコン。
 自室のベッドで寝ていると、ドアをノックする音がした。

「奥様、お客様がお見えです。診療所のエイダン先生と受付のココ嬢です。こちらにお通ししてもよろしいでしょうか?」

 私は体を起こし、サイドテーブルに置いた鈴を手に取った。
 声が出ないので、鈴を鳴らす。
 入ってよいと言う合図だ。
 レベッカに案内されて、ココとエイダンが入室した。

「紅茶をお持ちいたしましょうか?」

 また鈴を鳴らす。
 私の了承を確認し、レベッカは退出していった。笑顔を絶やさない、とても気が利く女性だ。


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