2 / 18
1巻
1-2
しおりを挟む
「使用人に『しつけ』をしただけなのに、あの女が変に勘違いして君を敵視したんだ。愛しているのはアニータだけだよ」
使用人のしつけって……貴族男性が使用人を手篭めにした時の言い訳じゃない。
彼は必死に言い訳をし、言い募り、私への愛を囁いた。
「愛しているのは君だけ」
その言葉をそのまま受け止めることが……できない。でも、別れることもできない。
裏切られているのに、彼を愛する気持ちが『離婚』の選択肢を私から隠してしまう。
「わかっているわ。私もルイスを愛している」
許すしかなかった。
許さなければ、彼はどこかに行ってしまう。
それが怖くて、笑顔を貼りつけて彼を許した。
『同情で彼を縛りつける』
『幼い頃からの「情」で側に置いてもらっている置物』
使用人に言われた言葉が、心をえぐり、真実をわからなくする。
私が見ていたもの。
彼が囁く愛の言葉。
他人から聞く彼の姿。
もう何を信じればいいのかわからない。
彼の愛はもう冷めてしまい、同情で一緒にいてくれているのではないか。
もしそうなら、なんて惨めで卑怯なの……
彼と離婚して、一人になるのが怖い。彼が私から離れていかないのなら、最後には私の元に帰ってきてくれるのなら、多少のことには目をつぶればいいのだ。
彼を愛している。
でも、この思いは長年一緒にいた情による執着なのかも……
もう……わからない。
誰かに触った手で触らないで。
でも、触れてくれないと寂しい……
誰かに触れた唇でキスしないで。
でも、貴方とのキスは嫌いじゃない……
誰かに囁いた愛を私に囁かないで。
でも、愛してると言ってほしい……
こんな自分は大嫌いだ。
第二章 私の過去
浮遊感を感じた。ゆっくりと目を開ける。
「すまない、起こしてしまったな」
ルイスの優しい微笑みが暗闇の中でもわかった。
「ソファーで寝ては風邪をひくぞ」
あぁ……。寝る前に、最近発表された新薬の論文を読んでいたんだった。どうやらそのまま寝てしまったらしい。
ゆっくりとベッドに下ろされた。
「ありがとう。お帰りなさい」
「ただいま」
布団をかけられると、温かく感じた。少し体が冷えていたようだ。
「少し痩せたんじゃないか?」
なぜこういう時は目敏いのだろう。
「……仕事が忙しくて、あまり食べてなかったの」
「気をつけてくれよ、君が倒れたら心配で仕事も手につかなくなってしまう」
優しく頭を撫でる手は大きくて温かい。
「えぇ、気を付けるわ」
頭を撫でていた手が頬に触れた。ゆっくりと彼の顔が近づいてくる。
キス……された。
本当に最悪だ。
昼間は執務室であの騎士と、夜会の警護と言ってまた誰かと……
私の知らない誰かに触れた唇なのに、なぜ彼に嫌悪感を抱かないのだろう。
「アニータ、愛してる」
甘く微笑む彼が憎らしい。
「私も……」
それに応える自分も大嫌いだ。
でも……拒めない。
◇◇◇
熟睡するルイスの腕からそっと抜け出し、脱ぎ散らかした夜着を拾い集めて袖を通す。彼が拭いてくれたのか、体に不快感はない。
静かに部屋を抜け出し、隣にある自分の部屋に来た。
朝日が昇る前だから、屋敷は静まりかえっている。
静寂の中だとよりいっそう強く、自分は一人だと思う。
窓辺に座り、夜の寒さで冷たくなったガラスに触れた。
ガラスの冷たさが体温と共に何かを奪っていくようだ。
「罰ね……」
女々しくすがる自分が滑稽で、泣けてくる。
私に生きている資格はない。
真実を知った十五の時、無責任に命を手放せればよかったのに……
十五歳。
ナイヴィーレル王国では、成人と認められる歳だ。十五歳になった貴族家の子供は、王立貴族学園に通うことになる。
そこは、将来の伴侶を探す者、出世のために人脈作りをする者の、さまざまな思惑が交錯する小さな社交場だ。
かくいう私も、ヤーマン伯爵家に婿入りしてくれる方を探さなければならなかった。しかし、有力家主催のお茶会に何度か参加したら、人の悪口ばかりの集まりに辟易してしまって、図書室でばかり過ごしていた。
貴族の結婚は政略結婚がほとんどだ。私が婚約者を見つけられなくても、お父様が家にとって有益な縁談を持ってくるはずだ。ただ、優秀な方は高位貴族家と婚約を結ぶことがほとんどなので、ヤーマン伯爵家を繁栄、存続させるには私が頑張らなくてはと思い、勉学に勤しんだ。
まぁ、ルイスに恋をしていたので、他の殿方が子供っぽく見えてしまったのも要因ね。
入学してしばらく経った頃、私は図書室で運命の出会いを果たした。
ヴィッセル公爵家のヴィオレット様と知りあったのだ。
みんなの憧れのまとだった彼女は、気さくで、勤勉で、努力家だった。もちろん容姿も美しく、所作も公爵令嬢だけあって優美で洗練されていた。
本棚に近い、窓側のテーブル席が私達のお気に入りだった。
私達は同学年だったが、違うクラスだった。彼女は高位貴族が集まるAクラス。私は下級貴族が集まるBクラス。そのため面識はほとんどなかったが、経済学の本をお互いに探していたことから仲良くなったのだ。
「ごきげんよう」
「ごきげんよう、ヴィオレット様、そちらの本はどうされたのですか? 帳簿……ですか?」
「えぇ、お母様にお借りしたの。屋敷の調理場で使用する食材の帳簿よ。本当は領地の帳簿を見せてほしいのだけど、帳簿の見方を勉強するなら簡単なものから取り組みなさいって渡されたわ」
ヴィオレット様は『黒い表紙が印象的な帳簿』を見せてくれた。
何月何日に何の食材を購入したとか、何月何日の料理メニューが何だったか記載されていた。
書き方や単語がよくわからず、帳簿は未知の宝箱のようだった。
「とても面白いですね!」
「帳簿の書き方は家によって違うって聞いたわ。アニータの家はどんな書き方なのかしらね」
「私も気になります! 今度お母様に聞いてみますわ」
その後、お母様に帳簿の見方を勉強したいから、調理場の帳簿を借りたいと相談すると、帳簿はお母様の書斎にあると言われた。
ドレスにしか興味がないお母様だったが、女主人としての体面のため、形だけの書斎を持っていた。管理は家令がしていたと記憶している。
あの日は、ちょうど両親が夜会に行く日だったため、忙しさから好きな帳簿を見ていいと、おざなりな対応をされた。
ヤーマン伯爵家の帳簿の表紙は白が多かった。
そんな中、書斎の机の引き出し奥に、黒い表紙の帳簿を発見した。
今思えば、あの帳簿は隠すように置かれていた。
だが、憧れのヴィオレット様が見せてくれた『黒い表紙の帳簿』が印象に残っていたためだろう、私はその帳簿を持ち出した。
その帳簿が、お父様がお母様の書斎に隠していた『裏帳簿』だと知らずに……
後のことは、あまり覚えていない。
ヴィオレット様と勉強をしていたら、帳簿を見た彼女が血相を変えて図書室を飛び出していった。仕方なく帰ろうとしたら第一騎士団の方に城の一室に連行され、監禁され、外部との連絡を遮断された。
ただ、自分が持ってきた黒い表紙の帳簿は、お父様が違法奴隷の販売に関与したこと、違法カジノの運営に携わっていたこと、そしてお母様が違法奴隷の中でも見目のよい男性を引き抜き、娼館を経営していたことがわかるものだったらしい。
その後、私の知らないところで両親は裁判にかけられた。お父様とお母様は有罪判決を受けて北の監獄に収容されることになった。ヤーマン伯爵領は国に返還され、私はすべてを失った。
「お前のせいだ!」
監獄に送られる両親に最後の挨拶をするように言われ、事件後はじめて両親に会った。
二人ともひどく薄汚れており、頬は痩けていた。
私は監禁されていただけで、衣食住は十分に面倒を見てもらっていたようだ。
「お前が余計なことをしなければ、すべてうまくいったんだ!」
いつも前髪をきっちり後ろに流していたお父様の髪はボサボサで、目はつり上がっていた。お父様は、私を射殺さんばかりの眼光を向けていた。
「遊ぶことしか能のない、あんな女と結婚させられなければ……。くそっ! 不要品のお前なんぞに邪魔されるなんて……。畜生……。畜生。畜生! お前など生まれてこなければよかったんだ‼」
お父様は「くそっ! くそっ!」とわめきながら護送の馬車に押しこめられた。
ごめんなさいも、体に気をつけても、必ず保釈金を貯めて助けますも……何も言えなかった。
ただ、恐ろしく、立っているのがやっとだった。
「わたくしは何も悪くない。悪くないわ。家のために嫁いできただけ。義務だって果たしたわ。わたくしは悪くない。わたくしは悪くない。悪いのは……? 悪いのはすべて、すべて……」
ブツブツ言いながら下を向いていたお母様が、不意に顔を上げてこちらを見た。
「貴女よ」
墓から這い出てきた、亡者のような顔だった。
「貴女が罪を償いなさい! 貴女が悪いのだから。貴女が。貴女が代わりに行けばいいのよ!」
お母様が私に掴みかかろうとし、側にいた兵士二人が彼女の両脇を拘束した。
「止めろ!」
「あの子を連れて行って! あの子が悪いのよ!」
暴れるお母様は、お父様とは別の護送用馬車に手荒く放りこまれた。
扉越しに「死んで! 死んで詫びなさい! 貴女が悪いのよ! 死になさい! 死になさい!」と叫ぶ声が辺りに響いた。
「出発しろ!」
お母様を無視して、二人を乗せた馬車は呆気なく出発し、すぐに見えなくなった。私は足が震えてその場から動けず、しばらく馬車が走っていった道を呆然と見ていた。
お母様は監獄に入ってすぐ、自身の服を縄にして首を吊ったそうだ。
お父様は一年ほど苦役労働に従事したが、監視の目を掻い潜って脱走した。しかし魔物が跋扈する森に入ってしまったため、数日後無惨な姿で発見されたと連絡をもらった。
私は両親が監獄に向かった後、ルイスに支えられながら、王都の屋敷や元ヤーマン伯爵領の屋敷を引き渡すのに立ち会った。
仕えてくれた使用人全員に紹介状を渡したが、犯罪者の家の紹介状なんてあってもなくても同じだったかもしれない。
両親だけではなく、何の罪もない使用人達の人生まで狂わせてしまった。
私はなんて罪深いのだろう……
お母様の言うように、死んで詫びなくてはならないだろうか……
死は償いになるのだろうか……
ギリギリの精神状態だった。
そんな時、ルイスにプロポーズされた。
死ぬしかないと思っていた私に、生きることを許してくれた。側にいてほしいと言ってくれた。
あの時、ルイスのために生きると決めたのだ。
でも、罰が当たったのよ。
罪深い私が幸せを感じてしまったから。
ルイスが浮気するのは私のせいだ。
同情で結婚までさせてしまった。
すべて私の罪だ。
◇◇◇
「おはよう、アニータ」
「おはよう」
ダイニングに入ると、ルイスがテーブルについていた。
彼はスッと立ち、私の椅子を引いた。
一緒に朝食を取る時は、必ず私の椅子を引いてくれる。そして私が着席すると、オレンジジュースを渡された。それは毎朝、彼自ら私のために搾ってくれるものだ。
「今日のオレンジは甘味が強くて当たりだったよ」
「ありがとう」
オレンジジュースを一口飲む。
甘い酸味が口に広がり美味しいのに、なぜか美味しくない。
不意に視線を感じてルイスを見ると、彼は優しい顔をして私にキスをした。
「甘いな」
柔らかく甘い瞳を向けられると、愛されていると勘違いしてしまいそう。
「アニータ、愛してる」
胸が軋む……
どうして、そんなに嘘がうまいの。
彼に深くキスをされはじめた時、私はわざとオレンジジュースを自分にこぼした。
「あっ! すまない!」
「いいえ、大丈夫よ。ルイスは? かかってしまった?」
「俺は大丈夫だ。あぁ、本当にごめん」
彼は跪いて、私のスカートにかかったジュースを拭いた。
「ねえ。指輪、どうしたの?」
私の指摘に、彼は動きを止めた。
少し前から、彼の指に結婚指輪がないことを、私は知っていた。
治療魔法師になってはじめてもらった給料で買った、安物の結婚指輪。
結婚当初、私もお金を稼ごうと、元貴族令嬢が多く勤める家庭教師の働き口を探したが、犯罪者の娘を雇う家はなかった。
ただ、幼い頃から魔力操作の訓練は受けていたし、少しだが貴族学園で治療魔法の講義も受講していたので、私は診療所の面接を受けた。
そして、人手不足だったことと、即戦力になりそうだからということで採用された。
はじめは『犯罪者の娘!』と謗られたが、ただ真面目に真摯に仕事と向きあうことで同僚に受け入れられていった。
患者にはなおも厳しい目を向けられていたが、それが変わった一件がある。
「犯罪者の娘なら無料で治療しろ!」と怒鳴っていたおじさんに、私はこう返した。
「両親の犯した罪は許されることではありません。気づけなかった私も同罪だと思っています。申し訳ありませんでした。ですが、治療費の件は別です。もしも私が貴方を無料で治療すると、貴方は『治療費泥棒』になってしまいます。そんな不名誉を貴方に負わせたくないのです。ご理解いただけますか?」
今にして思えば小生意気な口を叩いたと思う。
だがおじさんは急に笑い出した。
「アンタは悪い奴じゃないな!」
その後、おじさんは「反省している奴を貶めるのは、犯罪者よりも劣るバカだ」と、みんなに言ってくれたようだ。実は大商会の会長だった彼の呼びかけもあって、変な絡まれ方をすることがなくなり、平和な日常を送れたのだった。
話が脱線したが、ルイスに贈った指輪は安物だけど、私には大切なものだった。
結婚式を挙げるお金もなかったので、仕事終わりに二人で教会に行って婚姻届を出し、聖堂のすみで私が買った二つの指輪を互いにはめた。
「一生貴女を愛します」
彼は誓いの言葉を口にしながら、私の指にはめてくれた。
もちろん、私も「一生貴方を愛します」と誓って彼の指にはめた。
どうやら、私の愛は捨てられたようだ。
「あ……どこにいったかな。執務室に忘れたのかもしれない。大丈夫、すぐに見つけるから」
忘れられた指輪……。まるで私ね。
「いいのよ、安物だし。気にしないで。こんな何の変哲もない金属の輪っかだもの。パーティーに出る時だって恥ずかしかったでしょ? もういいの」
顔に笑顔を貼りつけ、何でもないように装った。心がズキズキ痛んだ。
「こっ、今度、宝石商に行こう。王都で人気の店を教えてもらったんだ。今年で結婚して十年だから、新しい指輪を――」
「あっ、いけない! 今日までに提出しなくちゃいけない医療備品の申請書があったわ。急いで出勤しないと。洋服も着替えなくちゃいけないから、先に出かけるわ」
「あっ、アニータ⁉ 朝食は⁉」
「お昼をたくさん食べるから大丈夫よ」
わざとらしかったけど、私は彼の言葉を遮ってダイニングルームから退出した。
呼び止める声がしたが、振り向かない。
新しい指輪なんて、いらない。
第三章 私の後輩
「次の人~」
診療所は、今日も患者さんがいっぱい来ていた。
「アニータ先生、今の方で午前の診療は終了です」
診察室のドアを開けて、ココが顔を出した。
「お疲れ様、ココ」
終了と聞いて、体を大きく伸ばした。
「先生、お昼どうします? 一緒にランチはどうですか?」
「お弁当があるからごめんね」
嘘だ。
正直、食べるのが苦痛で栄養剤を飲むので精一杯なのだ。でも、そんな姿は誰にも見せたくない。
「わかりました~。じゃ、ランチ行ってきます」
昼食は魚のフライ定食にしよ~、なんて声が扉越しに聞こえた。本当に可愛い。
コンコン。ドアをノックする音がした。
「先輩、終わりました?」
エイダンが顔を覗かせた。
「お疲れ様。ちょうど終わったところよ」
「じゃ、失礼しますね」
彼は入室すると、鍵を閉めた。
「先輩、血圧を測りますから座ってください」
鍵を閉められた時はドキッとしたが、どうやら診察してくれるようだ。
本当、言葉が足りないんだから。
私は患者用の椅子、彼は私の座っていた椅子に座った。それから、机に置いてある血圧計測器を手早く私の腕に巻きつけた。
「そんな無愛想で、患者さんに何か言われないの?」
「特には。受付の子が機転をきかせてくれるので助かっています」
機転って……。受付の子も大変ね。
「具合の方はどうですか? 吐き気は?」
淡々とした声だ。
「悪くはないわ。薬が効いている時は痛みもない。ただ、体がだるいのは辛いわね」
「……内臓から……心臓は……」
彼は考えこむようにブツブツ言った。
「食欲は?」
「空腹感はあるわ。でも胸焼けを起こすから量は食べられないし、食欲は基本的にない」
「水分は?」
「それはなんとか」
「水分は取れても……栄養が……じゃ、聴診します」
流れるように診察は終了した。
「先輩、点滴しといたほうがいいです。栄養剤を服用しているようですが、十分ではないですね」
診察台に寝るように指示され、点滴の準備をテキパキとしていく。
「かけ布団はないですか?」
「あぁ……、ココに洗濯をお願いしちゃった」
「そうですか」
エイダンが突然白衣を脱いだ。
「えっ⁉」
「ないよりはマシなんで、使ってください」
そう言って白衣をかけてきた。
「しばらく寝てていいですよ。体、しんどいでしょ」
「ありがとう。……ねぇ、エイダン。どうしてこんなによくしてくれるの?」
正直謎だ。
面倒臭そうにしているのに、やることは的確で、気遣いも温かい。
宮廷医師局長様との面会も調整してくれているようだし……
「成り行きですよ。余計なことを考えてないで、さっさと休んでください。俺も少し仮眠を取りますから、話しかけないでください」
私の椅子にドカッと座ると、顔を背けられた。耳が赤いように見えたが、気のせいだろう。
成り行きって、可愛くない答えね。まったく照れ屋なんだから。
エイダンの気遣いに、ささくれだった心がホッコリ温かくなった。
持つべきものは可愛い後輩ね。
点滴のお陰か、その後はすこぶる体調がよかった。体のだるさは栄養不足のせいかもしれない。
午後の診療もたくさんの患者さんがやってきて、診療所はてんやわんやだった。
「アニータ先生、お疲れ様でした」
「ココもお疲れ。明日もよろしくね」
午後の診療も無事終わり、帰ろうと支度をしている時だった。
使用人のしつけって……貴族男性が使用人を手篭めにした時の言い訳じゃない。
彼は必死に言い訳をし、言い募り、私への愛を囁いた。
「愛しているのは君だけ」
その言葉をそのまま受け止めることが……できない。でも、別れることもできない。
裏切られているのに、彼を愛する気持ちが『離婚』の選択肢を私から隠してしまう。
「わかっているわ。私もルイスを愛している」
許すしかなかった。
許さなければ、彼はどこかに行ってしまう。
それが怖くて、笑顔を貼りつけて彼を許した。
『同情で彼を縛りつける』
『幼い頃からの「情」で側に置いてもらっている置物』
使用人に言われた言葉が、心をえぐり、真実をわからなくする。
私が見ていたもの。
彼が囁く愛の言葉。
他人から聞く彼の姿。
もう何を信じればいいのかわからない。
彼の愛はもう冷めてしまい、同情で一緒にいてくれているのではないか。
もしそうなら、なんて惨めで卑怯なの……
彼と離婚して、一人になるのが怖い。彼が私から離れていかないのなら、最後には私の元に帰ってきてくれるのなら、多少のことには目をつぶればいいのだ。
彼を愛している。
でも、この思いは長年一緒にいた情による執着なのかも……
もう……わからない。
誰かに触った手で触らないで。
でも、触れてくれないと寂しい……
誰かに触れた唇でキスしないで。
でも、貴方とのキスは嫌いじゃない……
誰かに囁いた愛を私に囁かないで。
でも、愛してると言ってほしい……
こんな自分は大嫌いだ。
第二章 私の過去
浮遊感を感じた。ゆっくりと目を開ける。
「すまない、起こしてしまったな」
ルイスの優しい微笑みが暗闇の中でもわかった。
「ソファーで寝ては風邪をひくぞ」
あぁ……。寝る前に、最近発表された新薬の論文を読んでいたんだった。どうやらそのまま寝てしまったらしい。
ゆっくりとベッドに下ろされた。
「ありがとう。お帰りなさい」
「ただいま」
布団をかけられると、温かく感じた。少し体が冷えていたようだ。
「少し痩せたんじゃないか?」
なぜこういう時は目敏いのだろう。
「……仕事が忙しくて、あまり食べてなかったの」
「気をつけてくれよ、君が倒れたら心配で仕事も手につかなくなってしまう」
優しく頭を撫でる手は大きくて温かい。
「えぇ、気を付けるわ」
頭を撫でていた手が頬に触れた。ゆっくりと彼の顔が近づいてくる。
キス……された。
本当に最悪だ。
昼間は執務室であの騎士と、夜会の警護と言ってまた誰かと……
私の知らない誰かに触れた唇なのに、なぜ彼に嫌悪感を抱かないのだろう。
「アニータ、愛してる」
甘く微笑む彼が憎らしい。
「私も……」
それに応える自分も大嫌いだ。
でも……拒めない。
◇◇◇
熟睡するルイスの腕からそっと抜け出し、脱ぎ散らかした夜着を拾い集めて袖を通す。彼が拭いてくれたのか、体に不快感はない。
静かに部屋を抜け出し、隣にある自分の部屋に来た。
朝日が昇る前だから、屋敷は静まりかえっている。
静寂の中だとよりいっそう強く、自分は一人だと思う。
窓辺に座り、夜の寒さで冷たくなったガラスに触れた。
ガラスの冷たさが体温と共に何かを奪っていくようだ。
「罰ね……」
女々しくすがる自分が滑稽で、泣けてくる。
私に生きている資格はない。
真実を知った十五の時、無責任に命を手放せればよかったのに……
十五歳。
ナイヴィーレル王国では、成人と認められる歳だ。十五歳になった貴族家の子供は、王立貴族学園に通うことになる。
そこは、将来の伴侶を探す者、出世のために人脈作りをする者の、さまざまな思惑が交錯する小さな社交場だ。
かくいう私も、ヤーマン伯爵家に婿入りしてくれる方を探さなければならなかった。しかし、有力家主催のお茶会に何度か参加したら、人の悪口ばかりの集まりに辟易してしまって、図書室でばかり過ごしていた。
貴族の結婚は政略結婚がほとんどだ。私が婚約者を見つけられなくても、お父様が家にとって有益な縁談を持ってくるはずだ。ただ、優秀な方は高位貴族家と婚約を結ぶことがほとんどなので、ヤーマン伯爵家を繁栄、存続させるには私が頑張らなくてはと思い、勉学に勤しんだ。
まぁ、ルイスに恋をしていたので、他の殿方が子供っぽく見えてしまったのも要因ね。
入学してしばらく経った頃、私は図書室で運命の出会いを果たした。
ヴィッセル公爵家のヴィオレット様と知りあったのだ。
みんなの憧れのまとだった彼女は、気さくで、勤勉で、努力家だった。もちろん容姿も美しく、所作も公爵令嬢だけあって優美で洗練されていた。
本棚に近い、窓側のテーブル席が私達のお気に入りだった。
私達は同学年だったが、違うクラスだった。彼女は高位貴族が集まるAクラス。私は下級貴族が集まるBクラス。そのため面識はほとんどなかったが、経済学の本をお互いに探していたことから仲良くなったのだ。
「ごきげんよう」
「ごきげんよう、ヴィオレット様、そちらの本はどうされたのですか? 帳簿……ですか?」
「えぇ、お母様にお借りしたの。屋敷の調理場で使用する食材の帳簿よ。本当は領地の帳簿を見せてほしいのだけど、帳簿の見方を勉強するなら簡単なものから取り組みなさいって渡されたわ」
ヴィオレット様は『黒い表紙が印象的な帳簿』を見せてくれた。
何月何日に何の食材を購入したとか、何月何日の料理メニューが何だったか記載されていた。
書き方や単語がよくわからず、帳簿は未知の宝箱のようだった。
「とても面白いですね!」
「帳簿の書き方は家によって違うって聞いたわ。アニータの家はどんな書き方なのかしらね」
「私も気になります! 今度お母様に聞いてみますわ」
その後、お母様に帳簿の見方を勉強したいから、調理場の帳簿を借りたいと相談すると、帳簿はお母様の書斎にあると言われた。
ドレスにしか興味がないお母様だったが、女主人としての体面のため、形だけの書斎を持っていた。管理は家令がしていたと記憶している。
あの日は、ちょうど両親が夜会に行く日だったため、忙しさから好きな帳簿を見ていいと、おざなりな対応をされた。
ヤーマン伯爵家の帳簿の表紙は白が多かった。
そんな中、書斎の机の引き出し奥に、黒い表紙の帳簿を発見した。
今思えば、あの帳簿は隠すように置かれていた。
だが、憧れのヴィオレット様が見せてくれた『黒い表紙の帳簿』が印象に残っていたためだろう、私はその帳簿を持ち出した。
その帳簿が、お父様がお母様の書斎に隠していた『裏帳簿』だと知らずに……
後のことは、あまり覚えていない。
ヴィオレット様と勉強をしていたら、帳簿を見た彼女が血相を変えて図書室を飛び出していった。仕方なく帰ろうとしたら第一騎士団の方に城の一室に連行され、監禁され、外部との連絡を遮断された。
ただ、自分が持ってきた黒い表紙の帳簿は、お父様が違法奴隷の販売に関与したこと、違法カジノの運営に携わっていたこと、そしてお母様が違法奴隷の中でも見目のよい男性を引き抜き、娼館を経営していたことがわかるものだったらしい。
その後、私の知らないところで両親は裁判にかけられた。お父様とお母様は有罪判決を受けて北の監獄に収容されることになった。ヤーマン伯爵領は国に返還され、私はすべてを失った。
「お前のせいだ!」
監獄に送られる両親に最後の挨拶をするように言われ、事件後はじめて両親に会った。
二人ともひどく薄汚れており、頬は痩けていた。
私は監禁されていただけで、衣食住は十分に面倒を見てもらっていたようだ。
「お前が余計なことをしなければ、すべてうまくいったんだ!」
いつも前髪をきっちり後ろに流していたお父様の髪はボサボサで、目はつり上がっていた。お父様は、私を射殺さんばかりの眼光を向けていた。
「遊ぶことしか能のない、あんな女と結婚させられなければ……。くそっ! 不要品のお前なんぞに邪魔されるなんて……。畜生……。畜生。畜生! お前など生まれてこなければよかったんだ‼」
お父様は「くそっ! くそっ!」とわめきながら護送の馬車に押しこめられた。
ごめんなさいも、体に気をつけても、必ず保釈金を貯めて助けますも……何も言えなかった。
ただ、恐ろしく、立っているのがやっとだった。
「わたくしは何も悪くない。悪くないわ。家のために嫁いできただけ。義務だって果たしたわ。わたくしは悪くない。わたくしは悪くない。悪いのは……? 悪いのはすべて、すべて……」
ブツブツ言いながら下を向いていたお母様が、不意に顔を上げてこちらを見た。
「貴女よ」
墓から這い出てきた、亡者のような顔だった。
「貴女が罪を償いなさい! 貴女が悪いのだから。貴女が。貴女が代わりに行けばいいのよ!」
お母様が私に掴みかかろうとし、側にいた兵士二人が彼女の両脇を拘束した。
「止めろ!」
「あの子を連れて行って! あの子が悪いのよ!」
暴れるお母様は、お父様とは別の護送用馬車に手荒く放りこまれた。
扉越しに「死んで! 死んで詫びなさい! 貴女が悪いのよ! 死になさい! 死になさい!」と叫ぶ声が辺りに響いた。
「出発しろ!」
お母様を無視して、二人を乗せた馬車は呆気なく出発し、すぐに見えなくなった。私は足が震えてその場から動けず、しばらく馬車が走っていった道を呆然と見ていた。
お母様は監獄に入ってすぐ、自身の服を縄にして首を吊ったそうだ。
お父様は一年ほど苦役労働に従事したが、監視の目を掻い潜って脱走した。しかし魔物が跋扈する森に入ってしまったため、数日後無惨な姿で発見されたと連絡をもらった。
私は両親が監獄に向かった後、ルイスに支えられながら、王都の屋敷や元ヤーマン伯爵領の屋敷を引き渡すのに立ち会った。
仕えてくれた使用人全員に紹介状を渡したが、犯罪者の家の紹介状なんてあってもなくても同じだったかもしれない。
両親だけではなく、何の罪もない使用人達の人生まで狂わせてしまった。
私はなんて罪深いのだろう……
お母様の言うように、死んで詫びなくてはならないだろうか……
死は償いになるのだろうか……
ギリギリの精神状態だった。
そんな時、ルイスにプロポーズされた。
死ぬしかないと思っていた私に、生きることを許してくれた。側にいてほしいと言ってくれた。
あの時、ルイスのために生きると決めたのだ。
でも、罰が当たったのよ。
罪深い私が幸せを感じてしまったから。
ルイスが浮気するのは私のせいだ。
同情で結婚までさせてしまった。
すべて私の罪だ。
◇◇◇
「おはよう、アニータ」
「おはよう」
ダイニングに入ると、ルイスがテーブルについていた。
彼はスッと立ち、私の椅子を引いた。
一緒に朝食を取る時は、必ず私の椅子を引いてくれる。そして私が着席すると、オレンジジュースを渡された。それは毎朝、彼自ら私のために搾ってくれるものだ。
「今日のオレンジは甘味が強くて当たりだったよ」
「ありがとう」
オレンジジュースを一口飲む。
甘い酸味が口に広がり美味しいのに、なぜか美味しくない。
不意に視線を感じてルイスを見ると、彼は優しい顔をして私にキスをした。
「甘いな」
柔らかく甘い瞳を向けられると、愛されていると勘違いしてしまいそう。
「アニータ、愛してる」
胸が軋む……
どうして、そんなに嘘がうまいの。
彼に深くキスをされはじめた時、私はわざとオレンジジュースを自分にこぼした。
「あっ! すまない!」
「いいえ、大丈夫よ。ルイスは? かかってしまった?」
「俺は大丈夫だ。あぁ、本当にごめん」
彼は跪いて、私のスカートにかかったジュースを拭いた。
「ねえ。指輪、どうしたの?」
私の指摘に、彼は動きを止めた。
少し前から、彼の指に結婚指輪がないことを、私は知っていた。
治療魔法師になってはじめてもらった給料で買った、安物の結婚指輪。
結婚当初、私もお金を稼ごうと、元貴族令嬢が多く勤める家庭教師の働き口を探したが、犯罪者の娘を雇う家はなかった。
ただ、幼い頃から魔力操作の訓練は受けていたし、少しだが貴族学園で治療魔法の講義も受講していたので、私は診療所の面接を受けた。
そして、人手不足だったことと、即戦力になりそうだからということで採用された。
はじめは『犯罪者の娘!』と謗られたが、ただ真面目に真摯に仕事と向きあうことで同僚に受け入れられていった。
患者にはなおも厳しい目を向けられていたが、それが変わった一件がある。
「犯罪者の娘なら無料で治療しろ!」と怒鳴っていたおじさんに、私はこう返した。
「両親の犯した罪は許されることではありません。気づけなかった私も同罪だと思っています。申し訳ありませんでした。ですが、治療費の件は別です。もしも私が貴方を無料で治療すると、貴方は『治療費泥棒』になってしまいます。そんな不名誉を貴方に負わせたくないのです。ご理解いただけますか?」
今にして思えば小生意気な口を叩いたと思う。
だがおじさんは急に笑い出した。
「アンタは悪い奴じゃないな!」
その後、おじさんは「反省している奴を貶めるのは、犯罪者よりも劣るバカだ」と、みんなに言ってくれたようだ。実は大商会の会長だった彼の呼びかけもあって、変な絡まれ方をすることがなくなり、平和な日常を送れたのだった。
話が脱線したが、ルイスに贈った指輪は安物だけど、私には大切なものだった。
結婚式を挙げるお金もなかったので、仕事終わりに二人で教会に行って婚姻届を出し、聖堂のすみで私が買った二つの指輪を互いにはめた。
「一生貴女を愛します」
彼は誓いの言葉を口にしながら、私の指にはめてくれた。
もちろん、私も「一生貴方を愛します」と誓って彼の指にはめた。
どうやら、私の愛は捨てられたようだ。
「あ……どこにいったかな。執務室に忘れたのかもしれない。大丈夫、すぐに見つけるから」
忘れられた指輪……。まるで私ね。
「いいのよ、安物だし。気にしないで。こんな何の変哲もない金属の輪っかだもの。パーティーに出る時だって恥ずかしかったでしょ? もういいの」
顔に笑顔を貼りつけ、何でもないように装った。心がズキズキ痛んだ。
「こっ、今度、宝石商に行こう。王都で人気の店を教えてもらったんだ。今年で結婚して十年だから、新しい指輪を――」
「あっ、いけない! 今日までに提出しなくちゃいけない医療備品の申請書があったわ。急いで出勤しないと。洋服も着替えなくちゃいけないから、先に出かけるわ」
「あっ、アニータ⁉ 朝食は⁉」
「お昼をたくさん食べるから大丈夫よ」
わざとらしかったけど、私は彼の言葉を遮ってダイニングルームから退出した。
呼び止める声がしたが、振り向かない。
新しい指輪なんて、いらない。
第三章 私の後輩
「次の人~」
診療所は、今日も患者さんがいっぱい来ていた。
「アニータ先生、今の方で午前の診療は終了です」
診察室のドアを開けて、ココが顔を出した。
「お疲れ様、ココ」
終了と聞いて、体を大きく伸ばした。
「先生、お昼どうします? 一緒にランチはどうですか?」
「お弁当があるからごめんね」
嘘だ。
正直、食べるのが苦痛で栄養剤を飲むので精一杯なのだ。でも、そんな姿は誰にも見せたくない。
「わかりました~。じゃ、ランチ行ってきます」
昼食は魚のフライ定食にしよ~、なんて声が扉越しに聞こえた。本当に可愛い。
コンコン。ドアをノックする音がした。
「先輩、終わりました?」
エイダンが顔を覗かせた。
「お疲れ様。ちょうど終わったところよ」
「じゃ、失礼しますね」
彼は入室すると、鍵を閉めた。
「先輩、血圧を測りますから座ってください」
鍵を閉められた時はドキッとしたが、どうやら診察してくれるようだ。
本当、言葉が足りないんだから。
私は患者用の椅子、彼は私の座っていた椅子に座った。それから、机に置いてある血圧計測器を手早く私の腕に巻きつけた。
「そんな無愛想で、患者さんに何か言われないの?」
「特には。受付の子が機転をきかせてくれるので助かっています」
機転って……。受付の子も大変ね。
「具合の方はどうですか? 吐き気は?」
淡々とした声だ。
「悪くはないわ。薬が効いている時は痛みもない。ただ、体がだるいのは辛いわね」
「……内臓から……心臓は……」
彼は考えこむようにブツブツ言った。
「食欲は?」
「空腹感はあるわ。でも胸焼けを起こすから量は食べられないし、食欲は基本的にない」
「水分は?」
「それはなんとか」
「水分は取れても……栄養が……じゃ、聴診します」
流れるように診察は終了した。
「先輩、点滴しといたほうがいいです。栄養剤を服用しているようですが、十分ではないですね」
診察台に寝るように指示され、点滴の準備をテキパキとしていく。
「かけ布団はないですか?」
「あぁ……、ココに洗濯をお願いしちゃった」
「そうですか」
エイダンが突然白衣を脱いだ。
「えっ⁉」
「ないよりはマシなんで、使ってください」
そう言って白衣をかけてきた。
「しばらく寝てていいですよ。体、しんどいでしょ」
「ありがとう。……ねぇ、エイダン。どうしてこんなによくしてくれるの?」
正直謎だ。
面倒臭そうにしているのに、やることは的確で、気遣いも温かい。
宮廷医師局長様との面会も調整してくれているようだし……
「成り行きですよ。余計なことを考えてないで、さっさと休んでください。俺も少し仮眠を取りますから、話しかけないでください」
私の椅子にドカッと座ると、顔を背けられた。耳が赤いように見えたが、気のせいだろう。
成り行きって、可愛くない答えね。まったく照れ屋なんだから。
エイダンの気遣いに、ささくれだった心がホッコリ温かくなった。
持つべきものは可愛い後輩ね。
点滴のお陰か、その後はすこぶる体調がよかった。体のだるさは栄養不足のせいかもしれない。
午後の診療もたくさんの患者さんがやってきて、診療所はてんやわんやだった。
「アニータ先生、お疲れ様でした」
「ココもお疲れ。明日もよろしくね」
午後の診療も無事終わり、帰ろうと支度をしている時だった。
470
お気に入りに追加
6,907
あなたにおすすめの小説
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】忘れてください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。
貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。
夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。
貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。
もういいの。
私は貴方を解放する覚悟を決めた。
貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。
私の事は忘れてください。
※6月26日初回完結
7月12日2回目完結しました。
お読みいただきありがとうございます。
婚約者を想うのをやめました
かぐや
恋愛
女性を侍らしてばかりの婚約者に私は宣言した。
「もうあなたを愛するのをやめますので、どうぞご自由に」
最初は婚約者も頷くが、彼女が自分の側にいることがなくなってから初めて色々なことに気づき始める。
*書籍化しました。応援してくださった読者様、ありがとうございます。
【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす
まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。
彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。
しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。
彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。
他掌編七作品収録。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します
「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」
某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。
【収録作品】
①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」
②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」
③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」
④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」
⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」
⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」
⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」
⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
国王陛下、私のことは忘れて幸せになって下さい。
ひかり芽衣
恋愛
同じ年で幼馴染のシュイルツとアンウェイは、小さい頃から将来は国王・王妃となり国を治め、国民の幸せを守り続ける誓いを立て教育を受けて来た。
即位後、穏やかな生活を送っていた2人だったが、婚姻5年が経っても子宝に恵まれなかった。
そこで、跡継ぎを作る為に側室を迎え入れることとなるが、この側室ができた人間だったのだ。
国の未来と皆の幸せを願い、王妃は身を引くことを決意する。
⭐︎2人の恋の行く末をどうぞ一緒に見守って下さいませ⭐︎
※初執筆&投稿で拙い点があるとは思いますが頑張ります!

お飾り王妃の死後~王の後悔~
ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。
王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。
ウィルベルト王国では周知の事実だった。
しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。
最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。
小説家になろう様にも投稿しています。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。