死ぬまでにやりたいこと~浮気夫とすれ違う愛~

ともどーも

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1巻

1-2

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「使用人に『しつけ』をしただけなのに、あの女が変に勘違いして君を敵視したんだ。愛しているのはアニータだけだよ」

 使用人のしつけって……貴族男性が使用人を手篭てごめにした時の言い訳じゃない。
 彼は必死に言い訳をし、言い募り、私への愛をささやいた。

「愛しているのは君だけ」

 その言葉をそのまま受け止めることが……できない。でも、別れることもできない。
 裏切られているのに、彼を愛する気持ちが『離婚』の選択肢を私から隠してしまう。

「わかっているわ。私もルイスを愛している」

 許すしかなかった。
 許さなければ、彼はどこかに行ってしまう。
 それが怖くて、笑顔を貼りつけて彼を許した。

『同情で彼を縛りつける』
『幼い頃からの「情」で側に置いてもらっている置物』

 使用人に言われた言葉が、心をえぐり、真実をわからなくする。
 私が見ていたもの。
 彼がささやく愛の言葉。
 他人から聞く彼の姿。
 もう何を信じればいいのかわからない。
 彼の愛はもう冷めてしまい、同情で一緒にいてくれているのではないか。
 もしそうなら、なんてみじめで卑怯なの……
 彼と離婚して、一人になるのが怖い。彼が私から離れていかないのなら、最後には私の元に帰ってきてくれるのなら、多少のことには目をつぶればいいのだ。
 彼を愛している。
 でも、この思いは長年一緒にいた情による執着なのかも……
 もう……わからない。


 誰かに触った手で触らないで。
 でも、触れてくれないと寂しい……
 誰かに触れた唇でキスしないで。
 でも、貴方とのキスは嫌いじゃない……
 誰かにささやいた愛を私にささやかないで。
 でも、愛してると言ってほしい……
 こんな自分は大嫌いだ。



   第二章 私の過去


 浮遊感を感じた。ゆっくりと目を開ける。

「すまない、起こしてしまったな」

 ルイスの優しい微笑みが暗闇の中でもわかった。

「ソファーで寝ては風邪をひくぞ」

 あぁ……。寝る前に、最近発表された新薬の論文を読んでいたんだった。どうやらそのまま寝てしまったらしい。
 ゆっくりとベッドに下ろされた。

「ありがとう。お帰りなさい」
「ただいま」

 布団をかけられると、温かく感じた。少し体が冷えていたようだ。

「少し痩せたんじゃないか?」

 なぜこういう時は目敏めざといのだろう。

「……仕事が忙しくて、あまり食べてなかったの」
「気をつけてくれよ、君が倒れたら心配で仕事も手につかなくなってしまう」

 優しく頭を撫でる手は大きくて温かい。

「えぇ、気を付けるわ」

 頭を撫でていた手が頬に触れた。ゆっくりと彼の顔が近づいてくる。
 キス……された。
 本当に最悪だ。
 昼間は執務室であの騎士と、夜会の警護と言ってまた誰かと……
 私の知らない誰かに触れた唇なのに、なぜ彼に嫌悪感を抱かないのだろう。

「アニータ、愛してる」

 甘く微笑む彼が憎らしい。

「私も……」

 それに応える自分も大嫌いだ。
 でも……拒めない。


   ◇◇◇


 熟睡するルイスの腕からそっと抜け出し、脱ぎ散らかした夜着を拾い集めて袖を通す。彼が拭いてくれたのか、体に不快感はない。
 静かに部屋を抜け出し、隣にある自分の部屋に来た。
 朝日が昇る前だから、屋敷は静まりかえっている。
 静寂の中だとよりいっそう強く、自分は一人だと思う。
 窓辺に座り、夜の寒さで冷たくなったガラスに触れた。
 ガラスの冷たさが体温と共に何かを奪っていくようだ。

「罰ね……」

 女々しくすがる自分が滑稽で、泣けてくる。
 私に生きている資格はない。
 真実を知った十五の時、無責任に命を手放せればよかったのに……


 十五歳。
 ナイヴィーレル王国では、成人と認められる歳だ。十五歳になった貴族家の子供は、王立貴族学園に通うことになる。
 そこは、将来の伴侶を探す者、出世のために人脈作りをする者の、さまざまな思惑が交錯する小さな社交場だ。
 かくいう私も、ヤーマン伯爵家に婿入りしてくれる方を探さなければならなかった。しかし、有力家主催のお茶会に何度か参加したら、人の悪口ばかりの集まりに辟易へきえきしてしまって、図書室でばかり過ごしていた。
 貴族の結婚は政略結婚がほとんどだ。私が婚約者を見つけられなくても、お父様が家にとって有益な縁談を持ってくるはずだ。ただ、優秀な方は高位貴族家と婚約を結ぶことがほとんどなので、ヤーマン伯爵家を繁栄、存続させるには私が頑張らなくてはと思い、勉学に勤しんだ。
 まぁ、ルイスに恋をしていたので、他の殿方が子供っぽく見えてしまったのも要因ね。


 入学してしばらく経った頃、私は図書室で運命の出会いを果たした。
 ヴィッセル公爵家のヴィオレット様と知りあったのだ。
 みんなの憧れのまとだった彼女は、気さくで、勤勉で、努力家だった。もちろん容姿も美しく、所作も公爵令嬢だけあって優美で洗練されていた。
 本棚に近い、窓側のテーブル席が私達のお気に入りだった。
 私達は同学年だったが、違うクラスだった。彼女は高位貴族が集まるAクラス。私は下級貴族が集まるBクラス。そのため面識はほとんどなかったが、経済学の本をお互いに探していたことから仲良くなったのだ。

「ごきげんよう」
「ごきげんよう、ヴィオレット様、そちらの本はどうされたのですか? 帳簿……ですか?」
「えぇ、お母様にお借りしたの。屋敷の調理場で使用する食材の帳簿よ。本当は領地の帳簿を見せてほしいのだけど、帳簿の見方を勉強するなら簡単なものから取り組みなさいって渡されたわ」

 ヴィオレット様は『黒い表紙が印象的な帳簿』を見せてくれた。
 何月何日に何の食材を購入したとか、何月何日の料理メニューが何だったか記載されていた。
 書き方や単語がよくわからず、帳簿は未知の宝箱のようだった。

「とても面白いですね!」
「帳簿の書き方は家によって違うって聞いたわ。アニータの家はどんな書き方なのかしらね」
「私も気になります! 今度お母様に聞いてみますわ」


 その後、お母様に帳簿の見方を勉強したいから、調理場の帳簿を借りたいと相談すると、帳簿はお母様の書斎にあると言われた。
 ドレスにしか興味がないお母様だったが、女主人としての体面のため、形だけの書斎を持っていた。管理は家令がしていたと記憶している。
 あの日は、ちょうど両親が夜会に行く日だったため、忙しさから好きな帳簿を見ていいと、おざなりな対応をされた。
 ヤーマン伯爵家の帳簿の表紙は白が多かった。
 そんな中、書斎の机の引き出し奥に、黒い表紙の帳簿を発見した。
 今思えば、あの帳簿は隠すように置かれていた。
 だが、憧れのヴィオレット様が見せてくれた『黒い表紙の帳簿』が印象に残っていたためだろう、私はその帳簿を持ち出した。
 その帳簿が、お父様がお母様の書斎に隠していた『裏帳簿』だと知らずに……


 後のことは、あまり覚えていない。
 ヴィオレット様と勉強をしていたら、帳簿を見た彼女が血相を変えて図書室を飛び出していった。仕方なく帰ろうとしたら第一騎士団の方に城の一室に連行され、監禁され、外部との連絡を遮断された。
 ただ、自分が持ってきた黒い表紙の帳簿は、お父様が違法奴隷の販売に関与したこと、違法カジノの運営に携わっていたこと、そしてお母様が違法奴隷の中でも見目のよい男性を引き抜き、娼館を経営していたことがわかるものだったらしい。
 その後、私の知らないところで両親は裁判にかけられた。お父様とお母様は有罪判決を受けて北の監獄に収容されることになった。ヤーマン伯爵領は国に返還され、私はすべてを失った。


「お前のせいだ!」

 監獄に送られる両親に最後の挨拶をするように言われ、事件後はじめて両親に会った。
 二人ともひどく薄汚れており、頬はけていた。
 私は監禁されていただけで、衣食住は十分に面倒を見てもらっていたようだ。

「お前が余計なことをしなければ、すべてうまくいったんだ!」

 いつも前髪をきっちり後ろに流していたお父様の髪はボサボサで、目はつり上がっていた。お父様は、私を射殺さんばかりの眼光を向けていた。

「遊ぶことしか能のない、あんな女と結婚させられなければ……。くそっ! 不要品のお前なんぞに邪魔されるなんて……。畜生……。畜生。畜生! お前など生まれてこなければよかったんだ‼」

 お父様は「くそっ! くそっ!」とわめきながら護送の馬車に押しこめられた。
 ごめんなさいも、体に気をつけても、必ず保釈金を貯めて助けますも……何も言えなかった。
 ただ、恐ろしく、立っているのがやっとだった。

「わたくしは何も悪くない。悪くないわ。家のために嫁いできただけ。義務だって果たしたわ。わたくしは悪くない。わたくしは悪くない。悪いのは……? 悪いのはすべて、すべて……」

 ブツブツ言いながら下を向いていたお母様が、不意に顔を上げてこちらを見た。

「貴女よ」

 墓から這い出てきた、亡者のような顔だった。

「貴女が罪を償いなさい! 貴女が悪いのだから。貴女が。貴女が代わりに行けばいいのよ!」

 お母様が私に掴みかかろうとし、側にいた兵士二人が彼女の両脇を拘束した。

「止めろ!」
「あの子を連れて行って! あの子が悪いのよ!」

 暴れるお母様は、お父様とは別の護送用馬車に手荒く放りこまれた。
 扉越しに「死んで! 死んで詫びなさい! 貴女が悪いのよ! 死になさい! 死になさい!」と叫ぶ声が辺りに響いた。

「出発しろ!」

 お母様を無視して、二人を乗せた馬車は呆気なく出発し、すぐに見えなくなった。私は足が震えてその場から動けず、しばらく馬車が走っていった道を呆然と見ていた。


 お母様は監獄に入ってすぐ、自身の服を縄にして首を吊ったそうだ。
 お父様は一年ほど苦役労働に従事したが、監視の目を掻い潜って脱走した。しかし魔物が跋扈ばっこする森に入ってしまったため、数日後無惨な姿で発見されたと連絡をもらった。
 私は両親が監獄に向かった後、ルイスに支えられながら、王都の屋敷や元ヤーマン伯爵領の屋敷を引き渡すのに立ち会った。
 仕えてくれた使用人全員に紹介状を渡したが、犯罪者の家の紹介状なんてあってもなくても同じだったかもしれない。
 両親だけではなく、何の罪もない使用人達の人生まで狂わせてしまった。
 私はなんて罪深いのだろう……
 お母様の言うように、死んで詫びなくてはならないだろうか……
 死は償いになるのだろうか……
 ギリギリの精神状態だった。
 そんな時、ルイスにプロポーズされた。
 死ぬしかないと思っていた私に、生きることを許してくれた。側にいてほしいと言ってくれた。
 あの時、ルイスのために生きると決めたのだ。
 でも、罰が当たったのよ。
 罪深い私が幸せを感じてしまったから。
 ルイスが浮気するのは私のせいだ。
 同情で結婚までさせてしまった。
 すべて私の罪だ。


   ◇◇◇


「おはよう、アニータ」
「おはよう」

 ダイニングに入ると、ルイスがテーブルについていた。
 彼はスッと立ち、私の椅子を引いた。
 一緒に朝食を取る時は、必ず私の椅子を引いてくれる。そして私が着席すると、オレンジジュースを渡された。それは毎朝、彼自ら私のために搾ってくれるものだ。

「今日のオレンジは甘味が強くて当たりだったよ」
「ありがとう」

 オレンジジュースを一口飲む。
 甘い酸味が口に広がり美味しいのに、なぜか美味しくない。
 不意に視線を感じてルイスを見ると、彼は優しい顔をして私にキスをした。

「甘いな」

 柔らかく甘い瞳を向けられると、愛されていると勘違いしてしまいそう。

「アニータ、愛してる」

 胸がきしむ……
 どうして、そんなに嘘がうまいの。
 彼に深くキスをされはじめた時、私はわざとオレンジジュースを自分にこぼした。

「あっ! すまない!」
「いいえ、大丈夫よ。ルイスは? かかってしまった?」
「俺は大丈夫だ。あぁ、本当にごめん」

 彼はひざまずいて、私のスカートにかかったジュースを拭いた。

「ねえ。指輪、どうしたの?」

 私の指摘に、彼は動きを止めた。
 少し前から、彼の指に結婚指輪がないことを、私は知っていた。
 治療魔法師になってはじめてもらった給料で買った、安物の結婚指輪。
 結婚当初、私もお金を稼ごうと、元貴族令嬢が多く勤める家庭教師の働き口を探したが、犯罪者の娘を雇う家はなかった。
 ただ、幼い頃から魔力操作の訓練は受けていたし、少しだが貴族学園で治療魔法の講義も受講していたので、私は診療所の面接を受けた。
 そして、人手不足だったことと、即戦力になりそうだからということで採用された。
 はじめは『犯罪者の娘!』とそしられたが、ただ真面目に真摯に仕事と向きあうことで同僚に受け入れられていった。
 患者にはなおも厳しい目を向けられていたが、それが変わった一件がある。
「犯罪者の娘なら無料で治療しろ!」と怒鳴どなっていたおじさんに、私はこう返した。

「両親の犯した罪は許されることではありません。気づけなかった私も同罪だと思っています。申し訳ありませんでした。ですが、治療費の件は別です。もしも私が貴方を無料で治療すると、貴方は『治療費泥棒』になってしまいます。そんな不名誉を貴方に負わせたくないのです。ご理解いただけますか?」

 今にして思えば小生意気な口を叩いたと思う。
 だがおじさんは急に笑い出した。

「アンタは悪い奴じゃないな!」

 その後、おじさんは「反省している奴を貶めるのは、犯罪者よりも劣るバカだ」と、みんなに言ってくれたようだ。実は大商会の会長だった彼の呼びかけもあって、変な絡まれ方をすることがなくなり、平和な日常を送れたのだった。


 話が脱線したが、ルイスに贈った指輪は安物だけど、私には大切なものだった。
 結婚式を挙げるお金もなかったので、仕事終わりに二人で教会に行って婚姻届を出し、聖堂のすみで私が買った二つの指輪を互いにはめた。

「一生貴女を愛します」

 彼は誓いの言葉を口にしながら、私の指にはめてくれた。
 もちろん、私も「一生貴方を愛します」と誓って彼の指にはめた。
 どうやら、私の愛は捨てられたようだ。

「あ……どこにいったかな。執務室に忘れたのかもしれない。大丈夫、すぐに見つけるから」

 忘れられた指輪……。まるで私ね。

「いいのよ、安物だし。気にしないで。こんな何の変哲もない金属の輪っかだもの。パーティーに出る時だって恥ずかしかったでしょ? もういいの」

 顔に笑顔を貼りつけ、何でもないように装った。心がズキズキ痛んだ。

「こっ、今度、宝石商に行こう。王都で人気の店を教えてもらったんだ。今年で結婚して十年だから、新しい指輪を――」
「あっ、いけない! 今日までに提出しなくちゃいけない医療備品の申請書があったわ。急いで出勤しないと。洋服も着替えなくちゃいけないから、先に出かけるわ」
「あっ、アニータ⁉ 朝食は⁉」
「お昼をたくさん食べるから大丈夫よ」

 わざとらしかったけど、私は彼の言葉をさえぎってダイニングルームから退出した。
 呼び止める声がしたが、振り向かない。
 新しい指輪なんて、いらない。



   第三章 私の後輩


「次の人~」

 診療所は、今日も患者さんがいっぱい来ていた。

「アニータ先生、今の方で午前の診療は終了です」

 診察室のドアを開けて、ココが顔を出した。

「お疲れ様、ココ」

 終了と聞いて、体を大きく伸ばした。

「先生、お昼どうします? 一緒にランチはどうですか?」
「お弁当があるからごめんね」

 嘘だ。
 正直、食べるのが苦痛で栄養剤を飲むので精一杯なのだ。でも、そんな姿は誰にも見せたくない。

「わかりました~。じゃ、ランチ行ってきます」

 昼食は魚のフライ定食にしよ~、なんて声が扉越しに聞こえた。本当に可愛い。
 コンコン。ドアをノックする音がした。

「先輩、終わりました?」

 エイダンが顔を覗かせた。

「お疲れ様。ちょうど終わったところよ」
「じゃ、失礼しますね」

 彼は入室すると、鍵を閉めた。

「先輩、血圧を測りますから座ってください」

 鍵を閉められた時はドキッとしたが、どうやら診察してくれるようだ。
 本当、言葉が足りないんだから。
 私は患者用の椅子、彼は私の座っていた椅子に座った。それから、机に置いてある血圧計測器を手早く私の腕に巻きつけた。

「そんな無愛想で、患者さんに何か言われないの?」
「特には。受付の子が機転をきかせてくれるので助かっています」

 機転って……。受付の子も大変ね。

「具合の方はどうですか? 吐き気は?」

 淡々とした声だ。

「悪くはないわ。薬が効いている時は痛みもない。ただ、体がだるいのは辛いわね」
「……内臓から……心臓は……」

 彼は考えこむようにブツブツ言った。

「食欲は?」
「空腹感はあるわ。でも胸焼けを起こすから量は食べられないし、食欲は基本的にない」
「水分は?」
「それはなんとか」
「水分は取れても……栄養が……じゃ、聴診します」

 流れるように診察は終了した。

「先輩、点滴しといたほうがいいです。栄養剤を服用しているようですが、十分ではないですね」

 診察台に寝るように指示され、点滴の準備をテキパキとしていく。

「かけ布団はないですか?」
「あぁ……、ココに洗濯をお願いしちゃった」
「そうですか」

 エイダンが突然白衣を脱いだ。

「えっ⁉」
「ないよりはマシなんで、使ってください」

 そう言って白衣をかけてきた。

「しばらく寝てていいですよ。体、しんどいでしょ」
「ありがとう。……ねぇ、エイダン。どうしてこんなによくしてくれるの?」

 正直謎だ。
 面倒臭そうにしているのに、やることは的確で、気遣いも温かい。
 宮廷医師局長様との面会も調整してくれているようだし……

「成り行きですよ。余計なことを考えてないで、さっさと休んでください。俺も少し仮眠を取りますから、話しかけないでください」

 私の椅子にドカッと座ると、顔を背けられた。耳が赤いように見えたが、気のせいだろう。
 成り行きって、可愛くない答えね。まったく照れ屋なんだから。
 エイダンの気遣いに、ささくれだった心がホッコリ温かくなった。
 持つべきものは可愛い後輩ね。


 点滴のお陰か、その後はすこぶる体調がよかった。体のだるさは栄養不足のせいかもしれない。
 午後の診療もたくさんの患者さんがやってきて、診療所はてんやわんやだった。

「アニータ先生、お疲れ様でした」
「ココもお疲れ。明日もよろしくね」

 午後の診療も無事終わり、帰ろうと支度をしている時だった。


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