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第一章
王宮グルメ
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顔合わせを兼ねた初回の「授業」の後、ジュディはガウェインの私室へと向かった。
もともとガウェインから「内容を知りたいので帰る前に寄って欲しい」と言い含められていたのだ。仕事の進捗により、もしかしたら少し待たせることになるかも、とのことだったが、幸いにも本人は在室していた。
案内してくれた従僕に礼を言い、後ろ手でドアを閉めてから、ジュディは深呼吸をする。
ガウェインは執務机に向かい、左右に書類をうずたかく積み上げ、ペンでさらさらと書き物をしていたが、ちらりとだけ視線をくれて「どうぞ、座っていてください」とジュディに言った。
そのすすめに従うように見せて、まずは部屋の奥までずんずんと進んだジュディは、ソファを通り過ぎて執務机の前に立った。
気配に、ガウェインが顔を上げる。
眼鏡の奥で金色の瞳が「何か?」と言いたげに細められるのを見つめて、ジュディはにこりと微笑んだ。
「どうも、豚です」
「ぶふっ!?」
びっくりしたように目を見開き、吹き出しかけたガウェイン。そんな自分の反応に動揺したように横を向くと、「ごめんなさい」とジュディに謝った。ジュディは笑顔のまま「よろしくてよ」と鷹揚に受け止めて、軽やかに続けた。
「殿下から賜った呼称ですわ。『男たちをものともせず、王宮を走る姿を目にしたときは感心したものだが。しょせんあなたも、どこにでもいる凡庸な貴族女性。飼いならされた豚だ』ですって」
あああ、と呻いてガウェインは瞑目し、手にしていた万年筆を書類の上に投げ出した。
一瞬の後、ぱっと目を見開いて「こうしてはいられない」と呟き、立ち上がる。
「お疲れ様でした。言いたいことがあったら、洗いざらい全部、私にどうぞ。まずはお茶を淹れましょう。ああ、違う。この時間なら昼食だ。ご一緒して頂けますか?」
「素敵。王宮の調理場で作られたものを食べられるんですか? 私も? メニューは何ですか、豚ですか? どうしましょう。共食いになっちゃうわ」
「ジュディ……、その……」
ガウェインが困りきった様子で、眉を寄せる。その顔を見て、ジュディは盛大に吹き出し、嫌味を言う相手が違う、と反省をした。一言「ごめんあそばせ」と可憐に謝罪をして、身を翻す。ドレスの裾をさばいて歩き出してから、ふと立ち止まって肩越しに振り返り「食事はこの部屋で、ですか?」とガウェインに尋ねた。
* * *
昼食は二人分、部屋のテーブルまで運び込まれた。
鳩のパイと、鴨のロースト。少しのビスケットに、デザートのマディラケーキ。
ガウェインがシャンパンをすすめてきたので、ジュディは素直に注がれた分に口をつけて、報告を開始した。
「殿下とは本日、小一時間挨拶を兼ねた話し合いを持ちました。殿下のお考えをうかがって、よくわかりました。殿下は『想像上のか弱き女性の救済』について、大いに関心を寄せているようです。目の前に存在する、人の言葉を話す豚ではなく」
口から棘がこぼれ落ちたのを自覚して、ジュディは金色の泡の弾けるグラスをすぐさま傾け、冷えたシャンパンを喉へ流し込む。
グラスを置き、ガウェインと目が合うと、殊の外優雅に微笑みかけてみせた。ガウェインも苦笑いを浮かべて、労うように穏やかな声で言う。
「たとえ殿下が豚を愛してやまない可憐な生き物だとお考えだとしても、それを目の前の女性に言って良いことにはなりませんね」
あら美味しい、とパイにかじりついたジュディは、きっちり噛んで呑み込んでからガウェインの言葉に頷いた。
「殿下の理想は美しいのです。『弱き者に寄り添う王となりたい』とお考えなのですから。しかし、殿下が救いたいのは、イマジナリー弱者です。それは決して彼に言い返さず、助けて欲しいとすがりながら己の頭で考えることもせず、殿下が綺麗事を並べ立てれば一切の否定をすることなく盛大な賛辞を送る。そういった、まさに想像上の弱者のために、将来の王権を振り回そうとしているようです」
「わかります。私も殿下と話すたびに、同じことを感じました。私が何を言っても、殿下は聞く耳を持ちません。『お前は生まれながらに恵まれていて、額に汗をかくこともなく何不自由のない身分で生きていて、他人を顎で使うだけの強者なのだ。お前の意見など必要ない』と」
実感のこもったガウェインの言い分が、今日初めてフィリップスと向き合ったジュディにも、よくわかる。
彼は、ひとの言葉に耳を貸さない。受け入れない。
「強者と弱者。救うべき者、救わなくても良い者。これを、王たる者の一存で決めることがいかに歪んでいるか、殿下は理解なさろうとしません。現に、殿下ははじめ、私を『不遇をかこつ哀れな女性』だと決めつけてきました。しかし、私が誇りを持って生きていると言い返せば、苛立ちのままに『豚め』と蔑み、救うに値しないと決めつけたわけです。これのどこに正当性がありますか? たったひとりの好き嫌いで物事を進め、好きな者だけに向かう政治のことを『独裁』と言うのです。殿下の行き着く先は、そこです」
思い出して感情が昂ぶったせいか、目の縁に涙が浮かんできてしまった。ジュディは「これはなんでもありません」と言って指先でぬぐい、ぱちぱちと目を瞬く。
口を挟むことなく耳を傾けていたガウェインは、押し殺したような声で呟いた。
「国民あっての国なのです。我々は議会で政策を掲げるときは常に、なるべく取りこぼしがないようにと考えます。それでも優先される者と後回しにされる者といった差は、ある程度生じてしまいます。しかしそのとき我々は『救われなくて良い者』がいるとは、一切考えていません。少なくともそれを為政者が選別し、線引きするのは断じて許されないことです。この前提のもと、なんらかの救済策で後回しにされる者は常に、貴族たちです。貴族は誇りにかけて、それを受け入れています」
ジュディは、やるせない溜め息をついた。
(私も、今日だけで何度も同じことを言ったわ。だけど、殿下には通じなかった。なぜなら殿下は、ご自身の優越を確信していて、意に染まぬ考えはすべて「根底に私利私欲がある汚らわしいもの」と信じているから)
そこに揺るぎなき「誇り」があるとは、考えていないのだ。
「殿下の頭の中ではすでに、線が引かれてしまっているのです。つまり『貴族が重税を収め、不利な政策も国民のためを思って引き受ける』など、ありえないと。民衆に伝えられる政策は必ず複雑な見せかけをまとって誤魔化されていて、どこかで中抜きをされており、それによって私腹を肥やしている者がいるのだと。その思い込みは、とても強い」
ガウェインの金色の瞳が、ジュディを見つめる。心を見透かすまなざし。ジュディが続く言葉を口にすると同時に、ガウェインも同じフレーズを口にした。
「王侯貴族を地に引きずり降ろさぬ限り、民の暮らし向きは楽にならない」
手に手を取り合って、豊かな暮らしを実現するために共に歩む存在ではなく――。
フィリップスの描く構図は、民衆対王侯貴族。同国民とて、仲間ではない、助け合いなどありえない。彼らは打ち倒すべき敵。
その誘導こそが国を分かち断ち切る、分断を煽る悪手などとは思わずに。
「殿下に逆らう者は、人語を解する豚扱いですよ。他人を尊重できない王が、どんな理想を述べても虚しいだけですわ。この先誰かの存在が自分に都合が悪いと感じたら、たとえそれが大切な友だったとしても豚呼ばわりしますよ、きっと」
張り詰めた空気の中、不意にふふっとガウェインが相好を崩した。何かしら? と首を傾げたジュディに対し「実はですね」と囁き声で打ち明ける。
「私は今でも殿下にたいへん煙たがれていますが、以前『お前などシェパーズ・パイの具になってしまえ』と怒鳴られたことがあります。あのときは冗談かと思いましたが、この分だと殿下が王位についた暁には、挽肉にされるかもしれません。古代王朝の残虐かつ名誉を貶める処刑方法のようですね。ああ、ごめんなさい、食事中に」
ジュディが目を見開き、パイを咀嚼するのをやめたのを見て、ガウェインは申し訳無さそうに謝罪をしてくる。謝られて慌てたジュディはとっさに「宰相閣下の斬新な活用方法ですこと」と中途半端な諧謔《かいぎゃく》を口にするも、その後味の悪さにうなだれた。
落ち込んでしまったジュディに対し、ガウェインは二杯目のシャンパンをすすめ、グラスに注ぎながら取りなすように言う。
「もし私がパイにされたとして、食べずに捨てられたら悲しいので、その際はぜひひとくちでも食べて頂けると」
完全にたちの悪い冗談を引きずっていた。ジュディは口の中のものを飲み込み、このままではいけないと、精一杯考えながら言った。
「閣下がパイになっているならば、私だってローストポークにされていることでしょう。二人で晩餐を盛り上げられそうですね」
よせばいいのに、まったくうまいことが言えていない。さらに「ちょうど今日のランチのように」と口走りそうになって、寸前で飲み込む。それではこの空気が取り返しのつかないものになる。
ガウェインは乾いた笑みを浮かべてグラスを傾けてから、ジュディに笑みを向けた。
「ということで、前途多難なお仕事なのですが、どうでしょう。続けられそうですか」
立場に似合わず、ガウェインはひどく気さくな雰囲気をまとっている。その笑顔に見とれかけて、ジュディは目を伏せた。軽く咳払いをして、居住まいを正す。
そして、断固とした口調で告げた。
「もちろん続けさせてください。こんなにやりがいのある仕事なんか、離婚出戻りの私にはまず見つからないと思いますし、なにより」
次の授業はすでに、考えてございますの、と。
もともとガウェインから「内容を知りたいので帰る前に寄って欲しい」と言い含められていたのだ。仕事の進捗により、もしかしたら少し待たせることになるかも、とのことだったが、幸いにも本人は在室していた。
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ガウェインは執務机に向かい、左右に書類をうずたかく積み上げ、ペンでさらさらと書き物をしていたが、ちらりとだけ視線をくれて「どうぞ、座っていてください」とジュディに言った。
そのすすめに従うように見せて、まずは部屋の奥までずんずんと進んだジュディは、ソファを通り過ぎて執務机の前に立った。
気配に、ガウェインが顔を上げる。
眼鏡の奥で金色の瞳が「何か?」と言いたげに細められるのを見つめて、ジュディはにこりと微笑んだ。
「どうも、豚です」
「ぶふっ!?」
びっくりしたように目を見開き、吹き出しかけたガウェイン。そんな自分の反応に動揺したように横を向くと、「ごめんなさい」とジュディに謝った。ジュディは笑顔のまま「よろしくてよ」と鷹揚に受け止めて、軽やかに続けた。
「殿下から賜った呼称ですわ。『男たちをものともせず、王宮を走る姿を目にしたときは感心したものだが。しょせんあなたも、どこにでもいる凡庸な貴族女性。飼いならされた豚だ』ですって」
あああ、と呻いてガウェインは瞑目し、手にしていた万年筆を書類の上に投げ出した。
一瞬の後、ぱっと目を見開いて「こうしてはいられない」と呟き、立ち上がる。
「お疲れ様でした。言いたいことがあったら、洗いざらい全部、私にどうぞ。まずはお茶を淹れましょう。ああ、違う。この時間なら昼食だ。ご一緒して頂けますか?」
「素敵。王宮の調理場で作られたものを食べられるんですか? 私も? メニューは何ですか、豚ですか? どうしましょう。共食いになっちゃうわ」
「ジュディ……、その……」
ガウェインが困りきった様子で、眉を寄せる。その顔を見て、ジュディは盛大に吹き出し、嫌味を言う相手が違う、と反省をした。一言「ごめんあそばせ」と可憐に謝罪をして、身を翻す。ドレスの裾をさばいて歩き出してから、ふと立ち止まって肩越しに振り返り「食事はこの部屋で、ですか?」とガウェインに尋ねた。
* * *
昼食は二人分、部屋のテーブルまで運び込まれた。
鳩のパイと、鴨のロースト。少しのビスケットに、デザートのマディラケーキ。
ガウェインがシャンパンをすすめてきたので、ジュディは素直に注がれた分に口をつけて、報告を開始した。
「殿下とは本日、小一時間挨拶を兼ねた話し合いを持ちました。殿下のお考えをうかがって、よくわかりました。殿下は『想像上のか弱き女性の救済』について、大いに関心を寄せているようです。目の前に存在する、人の言葉を話す豚ではなく」
口から棘がこぼれ落ちたのを自覚して、ジュディは金色の泡の弾けるグラスをすぐさま傾け、冷えたシャンパンを喉へ流し込む。
グラスを置き、ガウェインと目が合うと、殊の外優雅に微笑みかけてみせた。ガウェインも苦笑いを浮かべて、労うように穏やかな声で言う。
「たとえ殿下が豚を愛してやまない可憐な生き物だとお考えだとしても、それを目の前の女性に言って良いことにはなりませんね」
あら美味しい、とパイにかじりついたジュディは、きっちり噛んで呑み込んでからガウェインの言葉に頷いた。
「殿下の理想は美しいのです。『弱き者に寄り添う王となりたい』とお考えなのですから。しかし、殿下が救いたいのは、イマジナリー弱者です。それは決して彼に言い返さず、助けて欲しいとすがりながら己の頭で考えることもせず、殿下が綺麗事を並べ立てれば一切の否定をすることなく盛大な賛辞を送る。そういった、まさに想像上の弱者のために、将来の王権を振り回そうとしているようです」
「わかります。私も殿下と話すたびに、同じことを感じました。私が何を言っても、殿下は聞く耳を持ちません。『お前は生まれながらに恵まれていて、額に汗をかくこともなく何不自由のない身分で生きていて、他人を顎で使うだけの強者なのだ。お前の意見など必要ない』と」
実感のこもったガウェインの言い分が、今日初めてフィリップスと向き合ったジュディにも、よくわかる。
彼は、ひとの言葉に耳を貸さない。受け入れない。
「強者と弱者。救うべき者、救わなくても良い者。これを、王たる者の一存で決めることがいかに歪んでいるか、殿下は理解なさろうとしません。現に、殿下ははじめ、私を『不遇をかこつ哀れな女性』だと決めつけてきました。しかし、私が誇りを持って生きていると言い返せば、苛立ちのままに『豚め』と蔑み、救うに値しないと決めつけたわけです。これのどこに正当性がありますか? たったひとりの好き嫌いで物事を進め、好きな者だけに向かう政治のことを『独裁』と言うのです。殿下の行き着く先は、そこです」
思い出して感情が昂ぶったせいか、目の縁に涙が浮かんできてしまった。ジュディは「これはなんでもありません」と言って指先でぬぐい、ぱちぱちと目を瞬く。
口を挟むことなく耳を傾けていたガウェインは、押し殺したような声で呟いた。
「国民あっての国なのです。我々は議会で政策を掲げるときは常に、なるべく取りこぼしがないようにと考えます。それでも優先される者と後回しにされる者といった差は、ある程度生じてしまいます。しかしそのとき我々は『救われなくて良い者』がいるとは、一切考えていません。少なくともそれを為政者が選別し、線引きするのは断じて許されないことです。この前提のもと、なんらかの救済策で後回しにされる者は常に、貴族たちです。貴族は誇りにかけて、それを受け入れています」
ジュディは、やるせない溜め息をついた。
(私も、今日だけで何度も同じことを言ったわ。だけど、殿下には通じなかった。なぜなら殿下は、ご自身の優越を確信していて、意に染まぬ考えはすべて「根底に私利私欲がある汚らわしいもの」と信じているから)
そこに揺るぎなき「誇り」があるとは、考えていないのだ。
「殿下の頭の中ではすでに、線が引かれてしまっているのです。つまり『貴族が重税を収め、不利な政策も国民のためを思って引き受ける』など、ありえないと。民衆に伝えられる政策は必ず複雑な見せかけをまとって誤魔化されていて、どこかで中抜きをされており、それによって私腹を肥やしている者がいるのだと。その思い込みは、とても強い」
ガウェインの金色の瞳が、ジュディを見つめる。心を見透かすまなざし。ジュディが続く言葉を口にすると同時に、ガウェインも同じフレーズを口にした。
「王侯貴族を地に引きずり降ろさぬ限り、民の暮らし向きは楽にならない」
手に手を取り合って、豊かな暮らしを実現するために共に歩む存在ではなく――。
フィリップスの描く構図は、民衆対王侯貴族。同国民とて、仲間ではない、助け合いなどありえない。彼らは打ち倒すべき敵。
その誘導こそが国を分かち断ち切る、分断を煽る悪手などとは思わずに。
「殿下に逆らう者は、人語を解する豚扱いですよ。他人を尊重できない王が、どんな理想を述べても虚しいだけですわ。この先誰かの存在が自分に都合が悪いと感じたら、たとえそれが大切な友だったとしても豚呼ばわりしますよ、きっと」
張り詰めた空気の中、不意にふふっとガウェインが相好を崩した。何かしら? と首を傾げたジュディに対し「実はですね」と囁き声で打ち明ける。
「私は今でも殿下にたいへん煙たがれていますが、以前『お前などシェパーズ・パイの具になってしまえ』と怒鳴られたことがあります。あのときは冗談かと思いましたが、この分だと殿下が王位についた暁には、挽肉にされるかもしれません。古代王朝の残虐かつ名誉を貶める処刑方法のようですね。ああ、ごめんなさい、食事中に」
ジュディが目を見開き、パイを咀嚼するのをやめたのを見て、ガウェインは申し訳無さそうに謝罪をしてくる。謝られて慌てたジュディはとっさに「宰相閣下の斬新な活用方法ですこと」と中途半端な諧謔《かいぎゃく》を口にするも、その後味の悪さにうなだれた。
落ち込んでしまったジュディに対し、ガウェインは二杯目のシャンパンをすすめ、グラスに注ぎながら取りなすように言う。
「もし私がパイにされたとして、食べずに捨てられたら悲しいので、その際はぜひひとくちでも食べて頂けると」
完全にたちの悪い冗談を引きずっていた。ジュディは口の中のものを飲み込み、このままではいけないと、精一杯考えながら言った。
「閣下がパイになっているならば、私だってローストポークにされていることでしょう。二人で晩餐を盛り上げられそうですね」
よせばいいのに、まったくうまいことが言えていない。さらに「ちょうど今日のランチのように」と口走りそうになって、寸前で飲み込む。それではこの空気が取り返しのつかないものになる。
ガウェインは乾いた笑みを浮かべてグラスを傾けてから、ジュディに笑みを向けた。
「ということで、前途多難なお仕事なのですが、どうでしょう。続けられそうですか」
立場に似合わず、ガウェインはひどく気さくな雰囲気をまとっている。その笑顔に見とれかけて、ジュディは目を伏せた。軽く咳払いをして、居住まいを正す。
そして、断固とした口調で告げた。
「もちろん続けさせてください。こんなにやりがいのある仕事なんか、離婚出戻りの私にはまず見つからないと思いますし、なにより」
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